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進路の解説



不登校・中退生の受け入れ状況

 

(出典『不登校・中退生のための高校・同等学校ガイド』不登校情報センター()、東京学参1997)

 

 

 多くの若者にとって、高校卒業あるいは同等資格を持たないことは、社会的ハンディキャップになっています。それを知っているはずの方からさえ、「高校は義務教育ではない」「高校卒業という学歴にとらわれているのでは……」という意見が出されることがあります。

 私のように「本人が望むならばすべての若者に高校教育を」すすめる者にとって、残念なことです。これでは高校卒業でない若者は救われない、と思います。私は学歴によって人間として何ら不利益を受けない社会をめざしています。そのことといまやっていることは矛盾しないばかりか、正攻法の接近方法だと考えています。

 実は日本国憲法では、学歴によって人は不利益を受けないことが決められています。憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と謳われており、私は学歴を社会的身分の一つと考えています。

 この精神を生かす、あるいは実現する方法として「高校は義務教育ではないから……」とする立場では、何をするのでしょうか。中学校卒業で差別なく社会的に生活をしていける条件をどう広げていけるのでしょうか。どんな考え方、展望、方策が準備されているのでしょうか。現に苦しんでいる若者の困難を一つひとつ解決していく方策のなかに、打開の道を求めないで、どこに展望を求めようとするのでしょうか?

 高校教育は義務教育ではないし、私は義務教育にしない方がいいと思います。しかし高校教育を望む人には、公機関(official)と社会(public)があらゆる方法を尽くして、それを保障し、援助すべきものだと思います。高校卒業でないことが社会的ハンディキャップになる今日の日本では、それは当然であるし、それが高校教育を「準義務教育」とする準の内容ではないかと思います。

 その高校教育を望む若者がどのような状態におかれていても、これは変わりません。たとえば障害者であっても、非行や罪を犯していても、日本に居住する少数民族や外国人であっても同じです。さまざまな状態におかれている不登校や高校中退の若者にたいしても同じです。

 この本では高校卒業あるいはそれと同等資格に当たる教育機関―それが公制度として認定されているかどうかは関係なく、これらの若者の要請にこたえるために、社会的に対応している教育機関―を紹介しています。

 これらの教育機関のなかには、いわゆる「問題のある」ところもあり得るかもしれません。それは認定校であっても一条校であっても同じことで、社会的に糾していくことが筋道であろうと思います。

 今回の情報本を編集するために、対象となる各校から紹介記事となるデータを送っていただきました。同時に個別の学校の数値は公表しない約束で生徒の状態に関する情報提供もお願いしました。それらの情報のなかで、不登校・高校中退生の受け入れ状況と関係する部分を集計したのが表1「校種別の不登校・中退生の受け入れ状況〔97年〕」です。

 この表によって、定時制高校、通信制高校、高等専修学校、通信制高校サポート校、大検予備校が、不登校・高校中退生をどの程度受け入れているのかを、ある程度知ることができます。この数字は、いろんな制約条件のもとで、限定的に評価してみなくてはなりません。その理由は多岐にわたりわずらわしくなりますので、最後の方にまとめておきました。このことの重要性に気づいておられる方は、ぜひ参照していただきたいと思います。

 それでも、この表1およびこれから出てくる各種の図・表を見る際に注意してほしいことがあります。それは学校毎あるいは校種別に、把握しようとしている情況や背景が違うことです。生徒の調査票に中学時代の長期欠席者であることを記す項目がなかったり、就職しているかどうかは不要であったり、あるいはその意味する範囲が独自のものであったりすることです。不明とか概数という学校があるのはそのためですし、またそのようなデータを完全に外部には提示しないとする学校もあります。

 その結果、項目ごとに対象となる学校(生徒数)が異なり、比率算定の分母となる対象生徒数(母集団)が異なる事態となりました。図表において「合計」欄とは別に「対象生徒数」欄があるにはそのためです。

 しかしそれでも、一校だけ単独に見ていたのではわかりにくい構造的な動向を、ある程度の学校数を見ることのなかから浮かび上がらせているように思います。それは、「当たらずとも遠からず」という状態描写になっていると思います。



表1 校種別の不登校・中退生の受け入れ状況〔97年〕

学校分類 

 

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

学校数

別表

NO.

@

夜間定時制

  普通科

実数

2,078

290

413

529

6

22

2-

対象 生徒数

 

 

2,078

 

2,078

 

1,867

 

2,078

比率

 

14.0%

19.9%

28.3%

0.3%

A

夜間定時制

  工業科

実数

1,128

101

95

151

2

10

2-2

対象

生徒数

 

 

1,128

 

1,128

 

950

 

950

比率

 

9,0%

8,4%

15.9%

0,2%

B

夜間定時制

  商業科

実数

556

46

62

47

0

6

2-3

対象

生徒数

 

 

453

 

418

 

459

 

242

比率

 

10.2%

14.8%

10.4%

0%

C

夜間定時制

  農業科

実数

329

26

25

2

0

4

2-4

対象

生徒数

 

 

266

 

266

 

108

 

266

比率

 

9.8%

9.4%

1.9%

0%

@〜C

小計

(夜間定時制)

 

実数

4,091

463

595

729

8

42

 

対象

生徒数

 

 

3,925

 

3,890

 

3,384

 

3,536

比率

 

11.8%

15.3%

21.5%

0.2%

D

昼間定時制

(夜間併置含む)

実数

776

91

92

268

41

7

2-5

対象

生徒数

 

 

758

 

758

 

758

 

742

比率

 

12.0%

12.1%

35.4%

5.5%

E

通信制高校

 

実数

11,937

1,254

458

298

111

10

2-6

対象

生徒数

 

 

 

6,466

 

5,298

 

4,602

 

5,146

比率

 

19.4%

8.6%

6.5%

2.2%

@〜E

合計

(定時制・通信制)

実数

16,804

1,808

1,145

1,295

160

59

 

対象

生徒数

 

 

11,149

 

9,946

 

8,744

 

9,424

比率

 

16.2%

11.5%

14.8%

1.7%

F

高等専修学校

(通信制併修)

実数

4,962

 

162

(410)

0

17

3-1

対象

生徒数

 

 

 

4,946

 

4,215

 

4,453

比率

 

 

3.3%

9.7%

0%

G

高等専修学校

  (単独型)

実数

1,770

 

187

177

16

19

3-2

対象

生徒数

 

 

 

1,067

 

913

 

1,369

比率

 

 

17.5%

19.4%

1.2%

F+G

小計

(高等専修学校)

実数

6,732

 

349

587

16

36

 

対象

生徒数

 

 

 

6,013

 

5,128

 

5,822

比率

 

 

5.8%

11.4%

0.3%

H

通信制高校

サポート校

実数

4,759

 

277

971

(15)

19

4-1

対象

生徒数

 

 

 

2,938

 

2,938

 

2,955

比率

 

 

9.4%

33.0%

0.5%

I

通信サポート

+大検予備校

     

実数

295

 

76

22

206

8

4-2

対象

生徒数

 

 

 

133

 

285

 

285

比率

 

 

57.1%

7.7%

72.3%

J      

大検予備校

実数

1,645

 

700

136

863

14

4-3

対象

生徒数

 

 

 

1,030

 

620

 

1,030

比率

 

 

68.0%

21.9%

83.8%

 



表2−1 夜間定時制高校(普通科)の生徒の状況

( )は概数、合計に算定している

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

就職者数

 

352

(50)

(200)

204

0

148

135

15

40

30

1

88

153

27

17

40

0

83

77

5

4

(15)

0

68

82

15

15

12

2

55

55

10

4

18

0

30

58

8

11

4

0

39

181

51

15

18

0

118

126

15

4

14

2

63

10

31

4

12

5

0

11

20

7

0

1

0

13

12

20

1

1

4

0

8

13

36

2

0

1

0

22

14

211

14

28

0

15

47

2

2

0

0

5

16

85

14

14

40

0

48

17

26

3

0

2

0

17

18

54

5

1

14

0

24

19

91

12

14

32

0

51

20

100

23

21

33

1

61

21

67

4

7

36

0

53

22

71

3

3

6

0

35

 

合計

実   数

 

2,078

290

413

529

6

1,029

対象生徒数

2,078

2,078

1,867

2,078

1,836

比   率

14.0%

19.9%

28.3%

0.3%

56.0%

 

 

 

表2−2 夜間定時制高校(工業科)の生徒の状況

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

就職者数

 

56

34

8

0

0

50

35

5

3

3

0

25

26

2

3

0

0

25

335

15

2

40

0

213

178

9

10

127

2

26

35

0

72

25

0

2

6

0

5

67

1

1

19

0

60

64

8

6

18

0

49

10

215

25

34

(30)

2

90

 

合計

実   数

 

101

95

151

2

589

対象生徒数

1,128

1,128

1,128

950

950

950

比   率

 

9.0%

8.4%

15.9%

0.2%

62.0%

 



表2−3 夜間定時制高校(商業科)の生徒の状況

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

就職者数

 

35

0

0

82

4

11

6

48

88

28

43

18

60

103

0

69

109

8

4

23

58

139

6

4

0

0

36

 

合計

実   数

 

46

62

47

0

271

対象生徒数

556

453

418

459

242

521

比   率

 

10.2%

14.8%

10.4%

0%

52.0%

 

 

表2−4 夜間定時制高校(農業科)の生徒の状況

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

就職者数

 

158

25

25

0

8

1

0

0

0

0

63

100

0

0

2

0

0

 

合計

実   数

 

26

25

2

0

0

対象生徒数

329

266

266

108

266

108

比   率

 

9.8%

9.4%

1.9%

0%

0%

 



表2−5 昼間定時制(夜間併置を含む)高校の生徒の状況

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

就職者数

 

18

16

1

0

3

16

249

32

41

50

29

60

143

0

5

56

0

27

198

46

40

104

11

62

148

11

6

55

1

60

4

1

0

0

0

0

 

合計

実   数

 

91

92

268

41

225

対象生徒数

776

758

758

758

742

758

比   率

 

12.0%

12.1%

35.4%

5.5%

29.7%

 

 

表2−6 通信制高校の生徒の状況

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

就職者数

 

3,331

142

78

78

3

20

35

696

106

50

大多数

1,476

2,307

538

101

120

7

661

300

130

150

45

120

204

74

41

22

2

34

664

16

378

1,168

100

21

10

1,288

58

58

3

 

合計

実   数

 

1,254

458

298

111

567

対象生徒数

11,937

6,466

5,298

4,602

5,146

1,671

比   率

 

19.4%

8.6%

6.5%

2.2%

33.9%

 

 

表3−1 高等専修学校〔通信制高校併修〕の生徒の状況

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

就職者数

 

42

 

7

6

0

0

64

 

4

47

0

0

217

 

2

20

0

0

665

 

10

(4050)

0

0

408

 

18

(60)

0

0

731

 

0

数名

0

186

451

 

10

30

0

若干名

86

 

78

4

0

8

608

 

4

12

0

0

10

64

 

1

5

0

0

11

383

 

7

(40)

0

0

12

52

 

1

12

0

13

90

 

4

32

0

14

493

 

6

21

15

459

 

3

59

0

0

16

133

 

7

17

0

0

 17

16

 

 

合計

実   数

 

 

162

405~415

0

194

対象生徒数

4,962

 

4,946

4,215

4,453

3,860

比   率

 

 

3.3%

9,69,8%

0%

5.0%

 

 

<参考> 全日制(寮のある)高校の生徒の状況

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

この数値は、

全日制で寮

をもつ高校

の一部が、

不登校・中

退生を積極

的に受け入

れている状

況ですから、

全体を表わ

すものとし

ては役立ち

ません。

100

0

24

89

357

数名

%

8割以上

315

22

6

55

154

0

154

数名

661

60

130

70

101

2

3

229

34

11

3

6

 

合計

実   数

 

95

320

220

対象生徒数

1,951

1,365

1,365

1,110

比   率

 

7.0%

23.4%

19.8%

 

 

表3−2 高等専修学校〔通信制高校と併修でない単独校〕の生徒の状況

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

就職者数

 

 

6

91

125

 

38

25

4

3

61

 

29

5

0

0

111

 

4

40

2

0

74

 

2

8

25

 

6

3

1

1

7

 

4

3

0

0

202

 

0

50

0

0

90

 

8

6

7

5

10

195

 

11

508

 

?

0

0

12

52

 

4

6

2

3

13

80

 

8

14

60

 

36

10

0

52

15

68

 

15

18

0

3

16

 

17

20

 

2

2

18

32

 

28

4

19

60

 

3

5

0

 

合計

実   数

1,770

 

187

177

16

75

対象生徒数

(2校除く)

 

1,067

913

1,369

1,383

比   率

 

 

17.5%

19.4%

1.2%

5.4%




表4−1 通信制高校サポート校(一部の技能連携校を含む)

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

963

 

14

155

0

244

 

20

47

0

30

 

29

2

2

9

 

9

7

7

25

 

8

16

3

30

 

?

?

0

299

 

3

(180)

0

484

 

3

(180)

0

38

 

14

33

0

10

13

 

1

12

0

11

75

 

10

38

0

12

121

 

38

42

0

13

186

 

110

80

13

14

644

 

15

500

 

16

13

 

8

12

1

17

647

 

あり

あり

あり

18

47

 

8

27

0

19

391

 

2

(140)

0

 

合計

実   数

 

 

277

971

1416

対象生徒数

 4,759

 

2,938

2,938

2,955

比   率

 

 

9.4%

33.0%

0.5%

 

 

表4−2 「通信制高校サポート+大検予備校」併置型

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

162

 

?

2

109

5

 

3

5

4

15

 

13

0

7

40

 

30

2

30

11

 

8

1

3

40

 

10

5

40

12

 

4

7

13

10

 

8

?

 

合計

実   数

 

 

76

22

206

対象生徒数

 295

 

133

285

285

比   率

 

 

57.1%

7.7%

72.3%

 

 

表4−3 大検予備校

 

 

学校

NO..

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

10

 

10

5

10

16

 

15

?

13

 

70

1

18

43

 

40

5

43

72

 

70

40

64

6

 

2

6

3

240

 

157

 

40

?

155

98

 

91

9

98

10

237

 

109

?

215

11

190

 

188

47

143

12

62

 

24

7

32

13

375

 

14

139

 

111

17

87

 

合計

実   数

 

 

700

136

863

対象生徒数

 1,645

 

1,030

620

1,030

比   率

 

 

68.0%

21.9%

83.8%




高校中退生の受け皿

 

 

 全日制高校からの転入者と編入者または高校中退からの再入学者の違いは、実は必ずしも正確に区別されているとはいい難いところですが、両者をあわせてみることで、高校中退生(とくに全日制高校からの中退)がどの程度受け入れられているかを知り得ます。表記を簡単にするため、ここでは前者を転入者(全日制高校からの転入者を意味する)、後者を再入学者(高校中退からの再入学者を意味する)とします。

 夜間定時制高校では、全生徒のうち転入者が11.8%、再入学者が15.3%、合計すると(一部は重複して算定されている可能性がある)5人に1人以上をしめるものと見られます。特に普通科は転入者14.0%、再入学者19.9%を占めています。職業科を選択した生徒の方が、いろいろな意味での選択の幅が限定されていることと無関係ではないでしょう。

 昼間定時制(夜間併置を含む)高校は、転入者12.0%、再入学者12.1%、合計24.1%です。これは夜間定時制の水準とほぼ同じものと考えられます。後で(図4)みるように、昼間定時制の生徒の就職者率は約30%で、夜間定時制生徒の55%の約半分近くでしかありません。この意味するところは別の機会に調査し、検討したいと思います。

 通信制高校は転入者19.4%、再入学者8.6%、合計28%であり比率としても、また実数としてもいちばん大きな部分をしめています。ただ再入学者は私の予測や実感よりも低い気がします。これはたぶん通信制高校においてそのことを把握しておく必要性が定時制高校よりも低くなっており、それが関係しているように思います。

 高等専修学校(専修学校高等課程)は、再入学者のデータしかありません。@生徒が通信制高校と併修になり高等専修学校と通信制高校を同時に卒業できる併修型の学校とA大学入学資格のとれる3年制の単独型の高等専修学校に分けてデータを集計してみました。

 そうすると再入学者の占める比率は併修型が3.3%、単独型が17.5%と大きな開きのあることがわかりました。この開きがなぜ生まれるのかは私には十分にはわかりません。

 通信制高校サポート校と大検予備校は、いわば枠外の高校教育相当機関です。この2つの性格をあわせもつ「通信制サポート+大検」を加えて、3種類に分類して集計してみました。データは再入学というよりは高校中退者の受け入れというとらえ方がいいでしょう。サポート校が9.4%であるのに対して、大検予備校は68%、「サポート校+大検」は57%ときわめて大きな特色を示しています。

 以上の転入者と再入学者をグラフで表示しておきます(11、図12)




図1−1 全日制高校からの転入者のしめる比率〔97年〕





図1−2 高校中退からの再入学者のしめる比率




不登校生の受け入れ

 

 

 「中学時代の長欠者」についてもグラフに示しました(図2)。比率が高いのは昼間定時制高校35.4%、通信制高校サポート校33%、および夜間定時制高校普通科です。昼間定時制高校はきわめて数が少ないこと、通信制高校サポート校も同様でしかも大都市域に偏在していることを考えると、夜間定時制高校普通科が不十分ながらそれを肩代わりしているように見て取れます。昼間定時制や通信制高校サポート校が設定されれば、夜間定時制普通科からの移動も予想されます。さらに全日制高校普通科が不登校生を受け入れるようになれば(制度としても対応能力としても)、最も自然な姿で事態は進展するように思います。





図2 中学時代の長欠者のしめる比率〔97年〕

 

 





大検制度の活用

 

 

 表1に表示したすべての学校が、大検(大学入学資格検定)を活用することができます。そして、それぞれがどの程度活用しているのかを図示したのが図3です。

 図3で一目瞭然です。大検予備校以外は、本気で大検を活用しようとしている学校はない、といっていいぐらいでしょう。昼間定時制高校の5.5%が少し目につきますが、ほかが利用していないから高く見えるだけのことであって、積極的な活用とは思えません。おそらく学校側が大検を受検するよう指導をすすめるというのはほとんどないでしょう。生徒の大検を受けるという申し出に学校側が受けて立つという状態にあるようです。

 



図3 大検の利用程度(大検受験者の比率)

 

 





大検の単位認定

 

 

 学校側の大検に対する対応の基本のところに戻って事態をみます。大検合格科目を、その学校の教育課程における単位取得として認めるかどうかを表したのが表5−1です。

 定時制・通信制高校で半数強が認めている状態ですが、定時制高校で約4分の1、通信制高校も1校が認めていません。高等専修学校では約4割が認め、約3分の1が認めていません。

 定時制高校普通科や通信制高校で認めていないのは理解に苦しむくらいです。特別の事情でもあるのでしょうか。職業高校や高等専修学校においても、教養科目的なものは認めてもいいと思いますが、どうでしょうか。




表5−1 大検合格科目の単位認定

 

 

×

学校合計

定時制高校普通科

12

6

2

2

 

22

定時制高校工業科

6

2

1

1

 

10

定時制高校商業科

4

1

1

 

 

6

定時制高校農業科

1

1

2

 

 

4

(夜間定時制高校 小計)

23

10

6

3

 

42

昼間定時制高校

4

2

 

1

 

7

通信制高校

7

1

1

 

2

11

〔定時制・通信制合計〕

34

13

7

4

2

60

高等専修学校通信併修

8

5

3

1

 

17

高等専修学校単独校

7

7

6

 

 

20

〔高等専修学校合計〕

15

12

9

1

 

37

〇=単位認定できる学校数 ×=単位認定できない学校数

−=該当者がなく制度のない学校数 △=検討中の学校数

?=不明および無回答の学校数





前籍高校の履修科目の単位認定

 

 

 高校中退生にとって、特に1年生、2年生を修了して中退した生徒にとって、前籍の高校での履修科目を再入学した学校で認められることは重要な意味があります。その前籍の高校での履修科目の単位認定を表したのが表5−2です。大検に比べれば制度としては広がっています。しかしまだ認められない高校もかなりあります。職業高校や高等専修学校における職業科目の事情を除けば〈条件つきで〉単位認定できると思うのですが、認定できない何かの問題があるのでしょうか。




表5−2 前籍の高校での履修科目の単位認定

 

 

×

学校合計

定時制高校普通科

19

1

2

 

 

22

定時制高校工業科

8

2

 

 

 

10

定時制高校商業科

5

 

1

 

 

6

定時制高校農業科

2

1

 

 

 

3

(夜間定時制高校 小計)

34

4

3

 

 

41

昼間定時制高校

5

2

 

 

 

7

通信制高校

8

 

1

 

2

11

〔定時制・通信制合計〕

47

6

4

 

2

59

高等専修学校通信併修

12

2

3

 

 

17

高等専修学校単独校

11

5

4

 

 

20

〔高等専修学校合計〕

23

7

7

 

 

37

〇=単位認定できる学校数 ×=単位認定できない学校数

−=該当者がなく制度のない学校数 △=検討中の学校数

?=不明および無回答の学校数





高校留学の単位認定

 

 

 当該校以外の履修科目で単位認定に関することに、高校留学のケースがあります。法制的には1年間に限り30単位の取得が認められることになっています。単位認定をするかどうかは各校の単位認定制度設定が必要であり、その設定状況を示したのが表5−3です。

 実施状況は定時制高校で半分強、通信制高校は大部分、高等専修学校は約3分1程度が認めています。全体として対応が遅れているのは当該する生徒がいないためだと推測されます。生徒の側からすると高校留学を生かす視点からの学校選択になることもあると思います。

 このほかにも在外教育施設高等部での履修科目を、単位として認める制度をつくっている学校がありました。該当する生徒は高校留学よりもさらに少なく、私は今回調査の項目に入れることすら思い及びませんでした。この学校には脱帽します。





表5−3 高校留学の単位認定

 

 

×

学校合計

定時制高校普通科

12

3

5

2

 

22

定時制高校工業科

6

3

1

 

 

10

定時制高校商業科

3

2

1

 

 

6

定時制高校農業科

1

1

1

 

 

3

(夜間定時制高校 小計)

22

9

8

2

 

41

昼間定時制高校

4

2

1

 

 

7

通信制高校

8

 

1

 

2

11

〔定時制・通信制合計〕

34

11

10

2

2

49

高等専修学校通信併修

6

6

4

1

 

17

高等専修学校単独校

6

7

7

 

 

20

〔高等専修学校合計〕

12

13

11

1

 

37

〇=単位認定できる学校数 ×=単位認定できない学校数

−=該当者がなく制度のない学校数 △=検討中の学校数

?=不明および無回答の学校数





就職者数

 

 

 定時制高校は本来的には勤労青少年の高校教育を保障するために設立されたものです。近年、不登校生や中退生が多数入学することによって、生徒が多様になっていると指摘されています。それを生徒にしめる就職者数から見たのが図4「就職している生徒の比率」です。残念ながら、これと比較すべき、10年前や20年前のデータを私は持ち合わせていません。

 現在の状況を見れば、夜間定時制高校のばあい半数以上の生徒が、勤労青少年であることを示しています。昼間に授業のある高等専修学校はもちろん、就職者は少ないです。昼間定時制や通信制高校でも30%は、予想と大きくは違わない気がします。

 東京都をはじめ、各地で定時制高校の廃止、統合の動きが伝えられています。これは不登校生・高校中退生の受け入れの場をなくすとともに、勤労青少年の高校教育の場を奪うものになるでしょう。東京都の場合はこれらの高校(全日制を含む)を統合・廃止し、新たにチャレンジスクールなる現代の高校生に対応できることをめざした高校をつくることになっています。しかし、高校の統合・廃止とチャレンジスクールの設立は別次元のことですし、〈全日制高校普通科〉が制度としても対応力としても不登校生を受け入れられるようになれば、敢えてチャレンジスクールなるものを設立しなくとも道は開けるのです。これは教育とは別の視点で策定されたものなのでしょうか。

 



図4 就職している生徒の比率

 

 

    ※この項目には<常勤的なアルバイトを含む>として、回答を求めています。





データの信憑性について

 

 

 定時制高校や通信制高校が「高校中退者の受け皿になっている」「大検受験者が増えたのは高校中退者が大量に生み出され、彼らが利用するようになったからだ」ということが、関係者から言われ、また実感としても確かなことでした。その程度を数学的にも表してみたのが今回の調査報告です。

 しかし、この調査報告には、いくつかの前提や制約があり、定義の不正確さやその適応の個人差(学校差)があります。それを列挙しておきましょう。

() 学校の分類はこの方法でいいのか。またこの分類方式でひとまず認めるとしても個々の学校が適切に分類されているのか。

() ここに集められた学校の調査データが、そこに分類された学校群(母集団)の全体的状況が比例して反映できているのか。

() 個々の学校における生徒の判断(それを条件づける個人情報)は学校によってバラバラではないのか。それらの集大成としての全体数値はどの程度信頼できるのか。

 これらについて、私はこれ以上一歩も踏み込んで確かめることができません。人間に関する情報と判断は、多かれ少なかれ常に流動的な面、不明瞭な面はともなうのですが、それでも十分さという点では問題のあることを認めなくてはなりません。

 今回の調査がどの程度偏りがあるのかを知る手がかりとして、『定時制・通信制高校と大検の活用』(進路・就職研究会編、桐書房、1996年9月)にある定時制・通信制高校の生徒の状態を示すデータと対比することにしました。まず、同書にあるデータ(同書219226ページ)を、表1と同じ基準に組みかえてみました。それが表6「定時制・通信制高校の不登校・中退生の受け入れ状況(96)」です。なお表記では表1を「97年調査」、表6を「96年調査」とします。

 両調査は1年のずれはありますが、定時制・通信制高校を共通の調査対象としていますので比較が可能です。そして両調査の結果が類似していれば、それは全体像を比較的正確に反映している可能性が高いと推測できます。双方がそれぞれの偏りによって、どの程度相違してくるのかは比較によって示されると思います。

 図5−1は「全日制高校からの転入者」を、図5−2は「高校中退からの再入学」を、図5−3は「中学時代の長欠経験者」をテーマにし、それぞれ、96年調査(表6)97年調査(表1)を並べてみたものです。いずれも大きな母集団たる学校群のなかの生徒を反映する(はずの)それぞれの一部を抽出しています。母集団を構成する学校群とその生徒には均一的な要素はさほど大きくないかもしれません。そして96年調査、97年調査それぞれに抽出された形の数校から20校ぐらいの対比では、このような違いが出ました。通信制高校に関するデータは見た目としても大きな開きがあるように思います。ほかは大きいと見るか、小さいと見るか、一年の推移や誤差をどれだけ折り込むか……によって意見が分かれるかもしれません。これらの背景を知ったうえで、この調査を参考にしていただければさいわいです。





表6 定時制・通信制高校の不登校・中退生の受け入れ状況 (96)

 

学校分類 

 

生徒総数

 

全日制高校

からの転入者

高校中退から

の再入学者

中学時代の

長欠経験者

大検受験者

 

学校数

@

夜間定時制

  普通科

実数

 

344

407

577

41

45

対象 生徒数

 

3,123

 

3,123

 

2,958

 

2,670

 

2,881

比率

 

11.0%

13.8%

21.6%

1.4%

A

夜間定時制

  工業科

実数

 

195

242

332

2

30

対象

生徒数

 

3,079

 

2,868

 

2,591

 

2,591

 

2,597

比率

 

6.8%

9.3%

12.8%

0.1%

B

夜間定時制

  商業科

実数

 

40

70

176

0

9

対象

生徒数

 

694

 

679

 

679

 

679

 

679

比率

 

5.9%

10.3%

25.9%

0%

C

夜間定時制

実数

 

246

125

145

20

14

対象

生徒数

 

1,376

 

1,376

 

1,015

 

1,114

 

1,041

比率

 

17.9%

12.3%

13.0%

1.9%

@〜C

小計

(夜間定時制)

 

実数

 

825

844

1,230

63

98

対象

生徒数

 

8,272

 

8,046

 

7,243

 

7,054

 

7,198

比率

 

10.3%

11.7%

17.4%

0.9%

D

昼間定時制

(夜間併置名)

実数

 

522

276

337

80

10

対象

生徒数

 

3,466

 

3,357

 

2,048

 

1,940

 

3,357

比率

 

15.5%

13.5%

17.4%

2.4%

E

通信制高校

 

実数

 

7,228

3,025

525

100

17

対象

生徒数

 

17,686

 

13,172

 

14,495

 

11,652

 

12,862

比率

 

54.9%

20.9%

4.5%

0.8%

@〜E

合計

(定時制・通信制)

実数

 

8,575

4,145

2,092

243

125

対象

生徒数

 

29,424

 

24,575

 

23,786

 

20,646

 

23,417

比率

 

34.9%

17.4%

10.1%

1.0%

 ※Cその他の職業科(普通科併置の職業科を含む)

進路・就職研究会『定時制・通信制高校と大検の活用』(桐書房)219226ページより作成。





図5−1 全日制高校からの転入者の比率

               (表1=97年、表6=96年の対比)

 

 





図5−2 高校中退からの再入学の比率

                (表1=97年、表6=96年の対比)

 

 





図5−3 中学時代の長欠経験者の比率

                (表1=97年、表6=96年の対比)

 

 



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