通信制高校群の拡大と広域通信制高校

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 通信制高校群の拡大と広域通信制高校
Facebook にシェア
[`google_buzz` not found]
[`yahoo` not found]
[`livedoor` not found]
[`friendfeed` not found]

不登校生への対応として通信制高校の仕組みと方法の有用性が明らかになるにつれ通信制高校やそのサポート校が次つぎに誕生しました。
サポート校の誕生は東京国際学園高等部に始まります。それはフリースクール・東京シューレの誕生とともに不登校生・中退生への対応として1980年代に都市域から急速に広がりました。サポート校の誕生とフリースクールの誕生はともに父母と国民の下からの教育運動でした。
その後、有力なサポート校および大検予備校(高卒認定予備校)が2000年前後に相次いで通信制高校を設立していきました。この動きにはわずかですが技能連携校も合流しています。このように通信制高校の広がりは、不登校生への対応として当初はサポート校、ないしはフリースクールの発展として始まりました。

この動きは1990年代から、異産業分野からの教育産業への参入の形としても広がりました。目に付く方法は全国の大都市圏に複数の学校を設立する方式をとりました。従来からあったNHK学園高校のような広域通信制高校の採用ですが、基本的にはNHK学園型の協力校制度ではなくキャンパスや学習センターなどと呼ぶ自校を設立する方式をとりました(その方式の学校がすべて異産業分野からの教育産業への参入というわけではありません)。
広域通信制高校とは3つ以上の都道府県から生徒募集を可能にする方式です。広域通信制高校には全国どこからでも生徒募集できる方式にしているところがあります。生徒側は広域通信制高校といっても近くに学校という場所がないと勝手に利用できるわけではありませんので、自ずと重点的に生徒募集の地域は限られます。
結局、東京周辺、大阪周辺、札幌、仙台、名古屋、広島、福岡あたりに拠点となる施設として学校が設立されました。

それに対して、サポート校から発展していった通信制高校は、本校を大都市よりも農山村地域に設立する例が多くなります。本校が多いのは北海道、茨城県、長野県、三重県あたりになりましょうか。
このほかに広域通信制高校への参入には、他の事情も関係します。伝統的に地域に根ざして活動している学校法人がその活動分野として通信制高校に参入する場合です。特色は生徒募集の対象が全国ではなく、周辺の複数の都府県になることが多いようです。
こういう通信制高校が増加する時代においても廃校・閉課程になった通信制高校もあります。通信制高校が不登校生の増大に対応できる仕組みと方法を持っていることをうまく活用しないまま、“生真面目に”従来の通信制高校のスタイルを維持したことが重要な要因ではないかと思います。それは廃校にならなくても一部の公立の通信制高校にも続いている状態です。もちろんこれらはいずれも典型的な場合をさしているわけです。

サポート校やフリースクールは生徒と父母の要求に応えるために生まれたものです。しかし、いったん通信制高校が生まれると、今度は通信制高校側からサポート校をつくる、あるいは地域に根ざして活動をしている学習塾やフリースクールをサポート校にする動きを取り始めました。とくに全国展開をする広域通信制高校にこの傾向が顕著に表われます。
学習塾やフリースクールの側でも事業展開としてサポート校をめざすところが生まれました。多くは通信制高校からの働きかけによってサポート校になったものです。広がりは大都市域から地方の中心都市へ、さらに普通の都市にまで広がり、全国化しています。
このような動向が広がると、さまざまな由来や動機や利害が錯綜する形でひとつの動きとして合流しているように見えます。いろいろな傾向や性格の違いは相対的に低くなります。
通信制高校は学習センターや何とかキャンパスの名称を用いだしたのでサポート校と高校本来の境目もとらえにくくなっています。さらにはサポート校になった学習塾、フリースクールの違いや境界もとらえがたい状況になっています。詳しく見ればこれらは見分けがつくものですが、世の中の動きとしては単一の動きとして扱われるのです。
状況には異なる要素も混じり錯綜していると見えますが、教育産業すなわち資本投下の対象としての教育分野への参入か、父母・国民の動きから始まるものかは見るときに有効な視点になるでしょう。

私は、不十分さがあると認めつつも、2014年春の時点で、それらの学校数を次のように示すことにします。今春に調査により、6月ごろにはより確度の高い数値に近づけるはずです。
①、通信制高校=552校(学習センターなどを含む)。
②、協力校=109校以上(公立通信制高校とNHK学園高校)。
③、通信サポート校=225校。
これは「少なくとも」これだけあるのではありません。なかには既に閉校した学校も少数ですがありえます。しかし、それ以上にかなり多くの学校を把握していないと想定できます。確認できるものだけをカウントし、確認できない学校が他に少なからずあることを認めているからです。
上の学校数を単純に合計すれば900校近くですが、実際は1000校前後あると推測しています。それは数の上で定時制高校よりも少なくはないでしょう。すでに生徒数では通信制高校生は定時制高校生を超えていますが、学校数においても事実上は逆転しているのです。
通信制高校の数は90年代の初めまでは全国で100校未満でした(協力校をふくめると100校を超えていたはずです)。このことを知れば高校教育の大きな変化は通信制高校の増大に、その社会的な背景としては不登校生の増大によると認めなくてはならないでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください