フリースクールと適応指導教室の変化を見る

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適応指導教室は官制のフリースクールの性格があります。民間に広がりつつあった不登校生への対応であるフリースクールを、当時の文部省が指導して適応指導という再登校をめざす教室として、自治体が設置したものです。1997年ころに適応指導教室は685教室がありました。現在、不登校情報センターのサイトの掲載している適応指導教室は不完全のはずですが、1036教室になります。うち自治体設置以外が2教室、中卒以上の生徒への対応が2府県です。教室数は5割以上も増えました。
そうして20年近くの時間が過ぎました。民間のフリースクールはさまざまな変化を遂げています。他方、適応指導教室の設置数は増えていますが、制度面ではそれほどの大きな変化はないように見えます。それでも徐々に指導性は向上しているように感じられますし、「教育支援センター」という名称が徐々に増えています。問題はそれ以上に動けない、適応指導教室にもいけないレベルの子どもが増えているのかもしれません。

フリースクールの変化はいくつかの面からとらえることができます。
はじめからフリースクールとして生まれたのは不登校の親の会が設立したもの、教育相談や心理相談から生まれたものなどでしょう。その後、小学生・中学生対象の学習塾からフリースクールになったもの、家庭教師活動の発展としてフリースクールができたものが加わり、それぞれの色合いを持つようになりました。
しかし、誕生後の運営は困難の連続でした。子どもが集まらない(それは運営経費の不足を招きました)、集まっても活動の方向が定まらない、指導員(スタッフ)は何をすればいいのかつかみかねている……という問題にぶつかりながらつづいてきました。そのなかで自然消滅したものも少なくありません。
そうこうするうちに自治体が適応指導教室を設立し始めました。小学生・中学生を対象とするのですから、自治体設置の適応指導教室は義務教育の範囲です。授業料などの負担はないし(教室に通う・通わないはここでは関係しません)、職員の給与や教室の場所は自治体負担になります。
民間のフリースクールは適応指導教室と比べると費用負担面で二重のハンディを持つことになりました。収入が保証されず支出は確実に必要という点です。もっぱら教育内容・活動内容の違いによってこの負担を乗り越えなくてはならない状態に置かれました。特徴的なのは農山村に置かれた山村留学型のフリースクールです。一種の山村留学のおもむきがあります。主に都市域の家族と同居する型の適応指導教室とは顕著な違いがあり、小規模ですが存続しているところが多いと思います。

フリースクール側はそのうち高校生や高校中退者に目線を広げて対応するように求められました。それは通所する子どもたちがそういう年齢に成長することと重なるわけですから、ごく自然なことではありました。そうは言ってもこの壁を多くのフリースクールが越えてきたのではありません。
1990年代末からはサポート校への道が広がりました。それまでは比較的大手の教育機関がサポート校になったのですが、小さなフリースクールもサポート校化し始めました。大手のサポート校等が通信制高校に発展するとともに都市域の学習塾やフリースクール等をそのサポート校にする動きが出てきたのです。小学生・中学生はフリースクールに、高校生はサポート校に属する形で同じ施設内に共存することになりました。これはフリースクールの一つの生き残り策といえるものです。

この経過を見てわかることは、自治体や政府の予算支出の対象としての不登校生への対応(特に小学生・中学生への)の貧弱さです。自治体や政府の不登校高校生への対応がとくに遅れていると思われるのは、典型的なものです。高校教育は義務教育ではない、公立高校は昼間定時制をすすめている、3年制の定時制・通信制高校を設置していますが、高校生対象の適応指導教室は2、3の府県が何かをしようとしているだけです。高校生への対応は民間が進めている、というよりは民間にはここが主に残されたのです。

ところでフリースクール数をカウントすることはなかなか難しいです。フリースクールは存続のためにじっとしてはおれずに変化したのです。それが適応指導教室とは大きく違うところです。フリースクールの変化・発展としてのサポート校をそれに加えるべきか、大検(高卒認定)予備校を加えるべきか、その複合した教育施設をどうするのか、フリースペースといっているところはどうなのかの判断、線引きが難しい上にもともとの基本データが把握されていないからです。
そういう前提がありますが、今の作業が一段落するはずの7、8月ごろそれらの数値化を試みてみようと考えているところです。

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