当事者とのふれあいで学んできた

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 教育書の編集をしていた時期に得た子どもや教育の知識を基に、不登校の相談を始めたのが私の相談活動の開始でした。 編集者としてこの分野のいくつかの出版物を編集しました。しかし、不登校やそれにつながる相談に関する出版物は少なかったです。それなのに25年以上にわたり、そして深くかかわるようになったのは、当事者たちとの直接の接触が多かったためでしょう。その意味で私の活動は自分の経験によることが大きかったと思います。系統的な医学的・心理学的な学問知識は持っていません。 私の周りにきた不登校の経験者、ひきこもりの経験者が示す言動や情報により、私のこの分野での理解は深まりました。

彼ら彼女らがもってきた文献も役に立ちました。 精神科学に関する文献では、次の3冊を挙げておきます。 E.クレッチマー『天才の心理学』、K.ヤスパース『精神病理学原論』、S.フロイト『精神分析入門』。 すべてドイツ系なのは気にくわないわけですが、やむをえません。『精神病理学総論』はある人からの贈り物であり、他に持参者不明の本がかなりあり読んでいました。『天才の心理学』では、“小胆な者”が印象的、『精神病理学総論』は“了解的な理解”を学びました。『精神分析入門』は講演記録で文庫本2冊。臨床的な現場の雰囲気を感じました。それらを含めて人間の精神活動のいろいろな面を学んだのです。

並行して身体科学の本を読みましたが、多くは古本屋で見つけました。医師が書いたものが中心ですが、『人類生物学』は生物学者の香原志勢さんの書いたもので医師以外の人の本もあります。身体科学のなかでも感覚に関するものに興味が強く、例えば福土審『内臓感覚』を挙げておきます。

これらの文献以上に当事者である彼ら彼女ら自身の言動が、それを理解させ、理解を深めさせ、多様性と独特性を教えてくれました。私の関心が状態の重い当事者に向けられ、その人から多くを学ぶようになったのは自然のなりゆきです。編集者の時期にある教師が「状態が強い生徒からより多くのことを学んだ」と聞きましたが、私の場合もそれに当たります。

しばらく前から当事者からどう学んだのかを考える機会がありました。それらを整理して個条書きにすると次のようになりそうです。

(1)表現された言葉で状態を理解する。こちらが聞く姿勢をとるまでは話し始めない。正面に坐るよりも横手に坐ると話しやすい。これには対話的なことよりも私の方が聞き役になるのが多い。言葉が出てくるまでに時間がかかるのは、頭の中でどう話すのか、順番や構成を考えているためでしょう。日常のちょっとした話の中ででてくることも参考になります。

(2)そのつど同じことを話しているように見えながら、ときどき新しいことを追加して反応を確かめる。小出しにしているよりは、話を重ねる中でより深いことを自分で探りだして語ってくる感じです。これは重要な点です。これが日ごろの振る舞いやしぐさを重なって表われ進むのです。

(3)私にとっては、理解したと思えることを話してみて、その人の経験や感覚によって確認する機会にでき、助けられたこともあったと思います。

(4)これらの点を得られるのは私とその人との相性もかなり関係しているはずです。私が理解を深めたのは数人の当事者によるものが大きく、多くの人はその理解を確認していくのに助けとなったともいえます。

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