利子率2%未満の長期化―資本主義史(2)

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  現在の資本主義はどのようになっているのか、そしてこの社会のリーダーともいえる政界や実業界で実権を握る人たちは、なぜ「近代引きこもり症候群の人たち」と言えるのでしょうか?
水野和夫さんの『資本主義の終焉と歴史の危機』は経済史を見直すことによって詳しく論証しています。資本とは利潤を求める動きであり、2%未満では縮小になります。今回はその視点から概略説明します。
14世紀の中頃、イタリアのジェノヴァなど地中海世界に発生したのが利子付きの資本、商業資本です。当時のジェノヴァの利子率は8%です。
その後、資本主義はヨーロッパに広がり、植民地主義としてアジア、アメリカ大陸、アフリカ大陸に広がりました。地理的・物理的空間の拡大です。中心地は交易による動きですが、拡大先地域では強奪的、暴力的でした。
18世紀にイギリスに産業革命がおこり、産業資本主義が生まれました。18世紀末のイギリスの永久国債(利子率)は3%です。19世紀末の帝国主義の時代を経て、地球という物理的な空間は資本主義の下に置かれました。世界大戦、疫病、植民地の独立などを経ながら1970年代まではほぼこの状態(利子率3~6%)が続きます。
1970年代前半の利子率は、日本10年国債11.7%(1974年)、イギリス14.2%(1974年)、アメリカ13.9%(1981%)が示しています。14世紀の資本主義の発生以来の最高水準です。(中心外の高利貸し資本は除外しているはずです)
ところが最高を迎えた70年代に急激な利子率の低下が起きます。この資本主義の危機に劇的な延命策が生まれました。電子・金融空間の拡大です(地理的・物理的空間の拡大の余地は限られていたので)。金Goldと紙幣Money(ドル)の結びつきが切り離されます。実物経済と流通する通貨量が離れていきます。
IMF(国際通貨基金)の2013年の推計では、実物経済の規模は74.2兆ドルにたいして、流通通貨量は140兆ドルといいます。通貨の流通速度が秒速で世界の金融市場を駆け巡るので、実物経済と通貨量はこの10倍の開きがあるといいます。
いまや通貨は金融市場では過剰に流通しています。通貨量が多いと物価が上がるはずです。ところがそうはならない。日本以外でも産業振興(積極財政という)として政府は予算支出を、流通通貨を増やし続けています。しかし、物価は上がらず、資産価格が増えるし(バブルの発生条件)、利子率は低下したまま下げられないレベルになっています。
日本の安倍内閣は2%物価上昇を目標にしているが達成しない。日本銀行はマイナス金利を提供しているが借り手がいない。大手の資本は設備投資をしないし内部留保を増えていく。これは日本だけではない。
それなのに「政界や実業界で実権を握って」いる人たちは、産業振興=GDPの拡大を目標にしている。著者はそういう人を地理的にも電子空間的にも閉ざされた世界にいる「近代引きこもり症候群の人たち」と称するわけです。
ま~、こう聞いたからと言ってなかなかわかりづらいでしょう。この説明を違う角度から繰り返し見ていきます。今回はここまで。

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