経済史に関する新書本を読みました。著者は水野和夫、『資本主義の終焉と歴史の危機』(2014年、集英社新書)です。そこにおもしろい記述がありました。「近代引きこもり症候群の人たちが政界や実業界で実権を握って、近代システムの弊害を見えるがゆえに実際に引きこもっている若い人に、なにを内向きな考え方をしているのだと、非難しているのが日本です。まさに「倒錯日本」です」(129P)。
これは正しい見解だと思います。引きこもっている若い人は、近代システムの弊害を見える人たちと言っています。その通りです。言語表現はしていませんが、心身と生活において表現をしています。
それでは弊害を起こしている「近代システム」とは何でしょうか。水野和夫さんの著書に導かれて、いくぶんは私の感想も加えながら紹介していきます。数回に分けなくてはなりません。
「近代システムは、先進国に限られた話とはいえ、中間層をつくり上げる仕組みとしては最適なものでした。中間層が、民主主義と資本主義を支持することで近代システムは成り立っていました」(90P)、「資本主義の発展によって多くの国民が中産階級化する点で、資本主義と民主主義はセカンドベストと言われながらも支持されて」(81P)きたからです。この状況が、1970年代以降に行き詰まり、変質してきたのです。
水野和夫さんはこの様子を14世紀に始まる資本主義の成長・発展・変化のなかで、論証しているのがこの本です。「実際に引きこもっている若い人」たちは、現代になって表れたこの行き詰まりを心身状態と生活において表わしているのです。新たな視点からのひきこもり論かもしれません。
現在の資本主義はどのようになっているのか、そしてこの社会のリーダーともいえる政界や実業界で実権を握る人たちは、なぜ「近代引きこもり症候群の人たち」と言えるのでしょうか? 次回はそれを紹介しましょう。