文献学習から実経験に移行した経過

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2021年春に『ひきこもり国語辞典』を発行した後、私は「ひきこもりと経済社会の関係」を理解しようと考えました。私にはひきこもりに対して、医学的・心理的に対応できません。身体科学的な理解はできても、できることは社会的・福祉的な対応、教育的な内容になるしかありません。
しかし、社会的、教育的、福祉的な対応といっても、その具体的な内容やプログラムで説明できません。個人的な経験と確信にもとづく方法を採用したのです。
こうしてひきこもりを経済社会的に理解しようと考えました。10点以上の文献を集中的に読みました。経済学説史と日本経済史の基本的な本です。何冊かを挙げてみます。『ゼロからはじめる経済入門 経済学への招待』(有斐閣コンパクト)、慶應義塾大学出版会『日本経済史1600~2000』、2009)、坪井健一『経済思想史』(ダイアモンド社、2015)、ロバート・ハイルブローナー『入門 経済思想史』(ちくま学芸文庫)など。より直接的にひきこもり理解に近づくのは村上尚樹『日本の正しい未来』(講談社、2017)、徳野貞雄『農村の幸せ、都会の幸せ』(生活人新書・2007)、菊池英博『新自由主義の自滅』(文春新書・2015)などでしょう。
この最中にいくつかのエッセイを書き、ブログにも掲載しました。日本社会が高度経済成長期に大きく変わったこと、農村社会から都市の工業地帯にとくに若い世代が大量に移動したこと、これにともなって家族が分散し世代間の相違が広がったこと、そういう経済社会の変化があると知りました。
国民の意識もゆっくりと変わりました。先進国として工業化、機械化、情報分野の技術が進み、家族から個人に人の社会的な位置が移りました。学歴や資格の所持が重視され、そうでありながら学校教育の地位は下がり、世代間の意識の差も広がりました。旧世代には家族的な枠組みで対処しようとしていますが、この枠組はうまく機能なくなりました。若い世代は、感覚世代ともいうべきで、事態の理解や処理はスマート、巧みに行なわれます。(これは私の表現のしかたであります)。
私はこれらの変化を理解し、ひきこもりと関連付ける自分の力のなさを感じました。かといって学習経験、業務経験、社会経験は限られており、すでに70代後半に至っていては、スタートする基盤はありません。広い分野ではなく的を絞ることにしました。そのとき浮かんだのは、私の経験を重視する指向です。ものごとを考え、処理するのには、自分の経験に根ざしたことを根拠にする—さし当たりの私の経験主義の暫定定義がこれです。
あることの全般を見通したことはわからないし、言及しなくてもよい。ただ自分が経験したことを根拠にして、何かを論じることは可能になる。これが経験主義に基づく次の一手です。
まず家族に注目しました。家族に関係する自分の経験とは、自分が生まれ育った家族があります。これはこれとして意味があると思いますが、より広い理解として、家族内における対人ケア的な面を考えました。
子どもの保育や教育に関わることができるのか? さいわい江戸川区シルバー人材センターに申し込んでおいた校庭開放による「校庭の遊び場世話人」の空席があり、それに当たりました。ただこれは関わる程度が少なくて、多くは期待できません。
次は介護を考えました。以前の不登校情報センターの通所者が介護事業所で一定のポジションに就いています。彼に頼んで関係施設で働けるように頼みました。これは実現しませんでした。江戸川区ボランティアセンターに問い合わせると介護施設にはボランティアを募集している所があると言います。その結果、月2回、各2時間ほど相談ボランティアに就くことができました。
この介護施設を探している途中に、地域でポスティングをしているという案内チラシを見つけました。不登校情報センターの通所者の作業体験としてポスティングをした経験があります。部分的には私も直接ポスティングに加わりました。その経験で、街の様子を知る面があります。案内チラシのあったポスティング—それは宛先が明示されたメール便配達で、それに参加しています。「住居事情(団地、アパート・マンション、一軒家、空き家、空き地の状況など)を知ることができそう」という点です。
こうして私は現在、学校の遊び場開放の世話人、介護施設での相談ボランティア、周辺地域でのメール便のポスティングに就いています。
言い忘れましたが、不登校情報センターでは、これも20年以上にわたり不登校やひきこもりを中心テーマとする情報収集をつづけ、それらを整理・分担してサイトをつくっています。問題の所在や状況はこのサイト制作のなかでも把握できます。その問題の扱い方に、経験にもとづく論拠、基盤をおくのです。 「ひきこもりの関係する経済社会の事情」全体に見渡すことはできません。これらの視点も組み合わせて、一定の論拠にして、ひきこもりと周辺事情に関係する問題を考えていこうと考えています。

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