いじめ後遺症が問われる時代

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子ども時代にひどいいじめにあい、学校には行けなくなり、仕事にも就けず、いままで生きてきたという人から電話を受けました。何歳ですかと聞くと「50代です」と答えた男性です。
いじめにより自分の人生がこうなってしまったと証明されるなら、ある人が特別の応援をしようといっている、どうしたらいいものか。これが相談電話の趣旨です。
おそらくは昨年10月5日の産経新聞に掲載された私の言葉、またはそのネット上の記事を見て電話をしてきたのでしょう。
なんとも気の毒で残酷なことです。はたして証明できるでしょうか。どうすれば証明したことになるのでしょうか。その思いが先にたちます。
子ども時代の重大ないじめは、その後の不登校の原因になりますし、社会に入っていけない、働けない事態に続きていきます。こういう人がいることは間違いありません。電話をかけてきた人はそういう人であると確信できます。
ですが証明となると難しいのです。
いじめをしていた当事者にその事実を話してもらえるのか。どこまでそれを覚えているのか。たとえば傷を負って病院にいった記録がある、物を奪われて警察に届けた記録がある、教育相談所に相談記録がある…まずはそのへんを考えます。
それでいじめがあったと証明されたとしましょう。しかしその次に、その後の人生で社会とのつながりをもてない、働くことができないという証明をしていかなくてはなりません。ここもまた難しいのです。
たとえば医療機関に通院または入院した記録がある、そこのカルテに身体状況、精神状況の様子が書かれている…そういうことが必要です。

特別の応援をしようという人がどのような意図を持っているのかはわかりませんが、いっけん無理難題のようにも思います。もしかしたらこの人に一念発起を期待しているのかもしれません。
とはいえ、戦前の朝鮮人の強制労働、戦後のレッドパージなどが裁判の対象になっています。多くの関係者・協力者により記録が探し出されています。そういうことを考えるといじめの後遺症もそのような対象になりうる、そんな時代が近づいていると思います。
いじめはいろいろな時代に、全国各地に発生しています。社会問題ですが多数は子どもの中の現象です。そこに政治的・社会的背景がどれほど影響しているのかは計測しがたい面もあります。むしろ社会人になってからのいじめの方が先行して俎上に上るのかもしれません。
それらを超えて、後遺症自体が社会的・法律的に問題にされる時期が来始めた、それを予感させる電話でした。

10月5日産経新聞の記事は文科省が20歳前後の人を対象に「いじめ後遺症」を調査することに関して取材を受けたものです。このブログの関連記事はこちら。掲載された記事がネット上で探しにくくなっています。私の発言した部分を載せておきます。

「思春期に激しいいじめを受けた人の中には、人間に対する敵対心や憎悪の気持ちが生まれ、一生外に出られない人もいる」。東京都内でひきこもりの人たちの社会復帰を支援しているNPO(特定非営利活動)法人「不登校情報センター」(東京都葛飾区)の松田武己理事長はこう訴える。
松田理事長は相談に訪れた先、いじめ被害によって、中学卒業から何年も経過した後でも憎悪の気持ちが消えない人を目にしてきた。「いじめは被害者の人生を棒に振らせることもある」と指摘する。

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