制作費・販売価格など――コミティア参加の報告と今後(8)

04.02.14 / コミティア / Author:

コミティア会場をめぐってわかることは作品の販売価格が低いことです。おそらくあまり売れないためでしょう。作品の制作レベルが低いのではなく、作品の特色が出せずに多数の作品のなかに沈んでいるためではないでしょうか。
展示会場を回りながら数か所で作品の制作費と販売価格の関係を聞いてみました。赤字覚悟、採算度外視…は多かったと思います。売れれば嬉しいがそれは作品の評価が高いことの現われとして嬉しいのであって、販売額はその次あたりの重要点のように思いました。
前回コミティアのアンケートによる販売数がグラフで示されていました。アンケートに回答したサークルのものですから、平均的には好感度が高いサークルからの回答と予測しますが、今回のあゆみ書店の販売数15冊を当てはめると回答サークルでは中位以上になります(今回の順位はわかりませんが)。

芸術作品の価格には特色があります。一般商品の価格は、その商品にかかる凝縮された生産の社会的平均的な労働時間に基づく価値に、需給関係や独占状況が影響して価格が決まります。芸術作品の価値・価格は労働時間には無関係です。短時間の作業で高額になることもあればたいへんな時間をかけても超低価格にしかならないこともあります。生産のための労働時間に関係なく低い価格におかれるのです。
あゆみ書店の発行する本の価格も低いのですが、コミティア会場に並ぶ作品の価格のなかではやや高めかもしれません。今回の2倍の数量が売れれば、コミティア出展参加では収支がマイナスにならないかもしれません。
制作費よりも販売収入が多くならないと継続する根拠がなくなります。ネット販売その他の直販を含めて数百冊は売れないと、本1冊あたりは作業費(作品制作に当てる時間)を除く材料費・コピーその他の印刷費を含む採算ラインに達しません。この点はそのうち問われる時期が来るはずです。
あゆみ書店で扱う不登校情報センター関係の出版物の販売も加えても、その規模が小さいので事態を変えるものにはなりません。自費出版本レベルを一般の商業出版レベルに結びつけることが必要になってきます。

それでも大事なことは見逃せません。こういうことが考えられるようになった社会状況です。インターネットの普及によるだけではありません。作品作りの場面、編集や製本の周辺における機械や技術の高度化、利用できる条件の広がりがあります。この社会的な変化はさらに続くでしょう。
時代の変化を生かすことで、時代を切り開いている面があるのです。ここを外さず意識していかなくてはならないでしょう。
(まつだたけみ)

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