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いのちの学習

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いのちの学習

友達に「消えたい」と言われたら? 自殺防ぐ答え方とは
阪中順子さんの「いのちの学習」は授業中、笑顔が絶えない=2018年7月6日、京都府向日市の西ノ岡中学校、金子元希撮影
もし友だちから「消えてしまいたい」と打ち明けられたら、あなたはどうしますか――。
中学校などで、そんな「心の危機」への対処法を学ぶ「いのちの学習」に取り組んでいる人がいます。
悩みに気づき、寄り添うことで自殺を防ぐ狙いです。
  「いのちの色って何色?」。
7月、京都府向日(むこう)市の西ノ岡中学校。学校支援カウンセラーで「いのちの学習」の講師、阪中順子さんが3年生に問いかける。
「草原の色で緑」「透明。いろんな色をもらうから」「虹色」。
そんな生徒の意見を「すてきやねえ」。続いて、「あなたのプチハッピーを教えて」。
2コマの授業中、教室からは笑いが絶えなかった。
そんな阪中さんが取り組むのは「自殺予防教育」という重い中身だ。
自分や友だちが「心の危機」になったらどう対処するかを学ぶ。
西ノ岡中では夏休み前のこの時期、3年生向けに阪中さんの出張授業を数年前から実施してきた。
今年は4クラスがそれぞれのクラスごとに受けた。
授業ではまず、グループに分かれて、「心の危機」とはどんな状態かを紙に書き出した。
外に出るのがつらい、食欲が落ちる、投げやり――。
続いては対処の方法。外に出る、人と話す、泣く、音楽を聴く――。アイデアは尽きない。
そして、「友だちに『何もかも嫌。消えてしまいたい』と言われた」という想定で、2人1組のロールプレイングに移った。
心が危機にあるとき、どうすれば支え合えるかを友人や先生と一緒に考えることが目的だ。
答え方は三つのパターンがある。まずは「そんなこと軽々しく言ったらいけない」「命は大事にしないと」と「正論を言う」。
次に「励ます」。
「おいしいものを食べて元気出そうよ」「がんばり屋だから、大丈夫」と声を掛ける。
三つ目が「感情を理解する」。
「何もかも嫌」「もう、疲れた」と言われたら、「何もかも嫌なんだね」「疲れてしまったんだね」と同じ言葉を繰り返し、相手の気持ちを理解しようとする。
これらを隣同士で1分間ずつ交代して体験した。
阪中さんは「私たちは『もう消えたい』と救いを求める叫びを発した人に、心配のあまり『死んではだめだよ』という正論や、『がんばれ』という励ましを言いがちではないでしょうか」と指摘。
「消えてしまいたいくらいつらいという気持ちを理解しようとする姿勢が大事です。
共感することは簡単ではないですが、まずは同じ言葉を繰り返すことなどで、相手の気持ちを受け止めてほしい」と話す。
男子生徒(14)は、感情を理解してもらう受け答えがよいと感じた。
「命について勉強する大事な時間になった」と話した。
阪中さんが強調したのは「きょうしつ」という独自の標語。
心の危機に「気付いて、寄り添い、受け止めて、信頼できる大人に、伝えよう」の頭文字を取ったものだ。
全員で暗唱できるように復唱した。
西ノ岡中で取り組みを続けている養護教諭小西季代子さんは「保健室には自分の不安を言葉にできない生徒が訪れる。
阪中さんの授業はそんなもやもやとした思いを言葉にすることにつながる」。
女子生徒(15)は「(ロールプレイングで)同じ言葉を繰り返すのは難しかったけれど。そんな場面に立ち会ったら、今回の勉強を生かしたい」と話した。
密谷(みつたに)由紀校長は「阪中さんの話は生徒の心にストンと落ちる内容だ。
授業を受けると生徒が元気になり、さわやかな顔になってくれる」と語った。
■信頼できる大人、必ずいる
阪中順子さんは、兵庫県加古川市教育委員会の学校支援カウンセラーを務め、著書に「学校現場から発信する 子どもの自殺予防ガイドブック いのちの危機と向き合って」(金剛出版)がある。
日本自殺予防学会理事の阪中順子さんに話を聞いた。

「いのちの学習」を通して、誰もが心の危機に陥るかもしれないと伝えたいと思っています。
授業では「思ったことは何でも言える」と安心できる雰囲気を大事にしています。
「きょうしつ」の標語は数年前から提案しています。
「大人に伝える」ことの定着が難しいからです。
自立に向かう思春期は、大人に相談しにくくなりがちです。
自分で考えることが成長への大きなステップとなりますし、子ども同士で解決することも大事です。
でも、「自分たちで解決できないことや、命に関わることは信頼できる大人に伝える」「抱え込まずに一緒に相談に行く」ことができるようになってほしいと願っています。
調査によると、子どもが自殺する理由は学業不振、いじめ、心の病、家族との葛藤、進路の悩みなど様々です。
複数の原因が絡む可能性が高いと思われます。
子どもは精神的に未熟です。視野が狭くなると、大人に比べて衝動的な行動に走りやすい傾向があります。
思春期の揺れのなかで、「死んだら生き返らない」という死の不可逆性への認識があいまいになってしまう子もいると言われています。
自殺に関する報道などから影響を受けやすいこともあり、死生観が揺らぐ危うい時期であるという理解を大人が持つことが求められます。
自殺を防ぐには自尊感情や自己肯定感を育むことが必要です。
欠点や失敗があっても、「自分には価値がある」と思えることや、小さな努力でも「できた」と認め合うことが大事です。
若い世代の皆さんには、信頼できる大人は必ずいて、解決策はあると伝えたい。
最初に相談した人でうまくいかないときは2人目、3人目に話してください。
理解しようと一緒に考えてくれる人や応援団は必ずいます。
秘密を守る相談機関もあります。
そして、私たち大人自身が、子どもが弱みをさらけ出せるように信頼される存在であるかどうかが問われています。
児童や生徒、我が子のことを「理解できない」と思うときもあるでしょう。
でも、大事なことは、わからなさを抱えながらでも「君はひとりぼっちではないよ」「一緒に考えようよ」と寄り添うことだと思っています。
不登校や生きづらさに関するご意見・体験談、記事へのご感想をメール(edu@asahi.com)か、ツイッター(#withyou #きみとともに)でお寄せ下さい。
友だちが心の危機 あなたはどうする? 
友だちに「何もかも嫌」「消えてしまいたい」と言われたら……
○正論を言う
「何を言っているの!」「命は大事にしないと!」「弱音ばかり吐かないで、もっと大変な人もいるよ」
○励ます(がんばれ!)
「おいしいものを食べて元気出そうよ」「ぐっすり寝たら良くなるから、がんばって」「体を動かしたら、元気出るよ」
○感情を理解する(同じ言葉を繰り返す)
「何もかも嫌」→「何もかも嫌なんだね」
「学校に来たくない」→「学校に来る気になれなかったたんだね」
「もう、疲れた」→「疲れてしまったんだね」
(阪中順子さんの授業から)
〔2018年8/22(水)朝日新聞デジタル(金子元希)〕
  

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