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川崎殺傷・自殺事件

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===[[:Category:周辺ニュース|周辺ニュース]]===
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ページ名[[川崎殺傷・自殺事件]]、神奈川県川崎市 (8050問題、事件事故) <br>
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'''テレビが報じない「中高年のひきこもり」57歳男性が明かすリアルな日常と心を開いた言葉'''〈dot.〉<br>
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杉本賢治さん(本人提供)<br>
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連日、「中高年のひきこもり」が話題になっています。きっかけは川崎殺傷事件の岩崎隆一容疑者(51歳)が「ひきこもり傾向」だと報じられたこと(5月29日)。<br>
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そして6月1日に、元官僚の熊澤英昭容疑者(76歳)が、ひきこもりの息子・熊澤英一郎さん(44歳)を殺害したことです(以下、練馬事件)。<br>
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川崎殺傷事件をひきこもりと短絡的に結び付けるのには疑問も残りますが、かつてこれほどまでに「中高年のひきこもり」に注目が集まったことはありません。<br>
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ひきこもりは「若者の問題」だと言われてきたからです。今回の事件は、ひきこもりの若者やその家族にも波紋が広がっています。<br>
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「いずれは自分も親に殺されるのかもしれないと思った」(20代・ひきこもり男性)<br>
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「不登校の娘と心中しようと思ったことは一度や二度じゃない。息子を刺した父親のことは他人ごとに思えない」(50代・ひきこもりの子を持つ親)<br>
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そんな声が聞こえてきます。<br>
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そこで事件を追うだけでは見えてこない「ひきこもりの日常」を知るべく、ひきこもり経験者で現在も「半分ひきこもりの生活」を続けているという杉本賢治さん(57歳)に話を聞きました。<br>
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*  *  *<br>
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――ご自身のひきこもり経験と現在の生活のようすを教えてください。<br>
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私がひきこもったのは高校中退後の10代後半と、その後、大学卒業後からの20代後半です。<br>
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ひきこもりの期間は累計で9年ほどですが、今も正社員としては働いていません。<br>
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おもに清掃のバイトをしています。<br>
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バイトの報酬は自分の社会保険料や通信費、取材費などに充て、母と二人暮らしの生活費は父の遺族年金などで賄っています。<br>
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現在の生活は「半ごもり状態」というところでしょうか。<br>
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完全なひきこもりではなく、半分ぐらいひきこもっている。<br>
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その理由は、バイト以外に個人的なインタビュー活動をしていて、自分の働き方のために時間を割かれるからです。<br>
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2年前から母が認知症になり要介護状態になりました。<br>
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兄弟は離れて暮らしていますので、私が母の世話をしています。家事はある程度、母と分担しながらやっています。<br>
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そういう意味では8050問題(介護問題など高齢化するひきこもり親子の問題)のど真ん中でしょうが、介護問題はひきこもりに限った話ではなく、誰にでも起きる話であって、ぼくはむしろ独身者問題だと捉えています。<br>
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8050問題はいずれ社会の問題となる。<br>
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いまの8050問題の取り上げ方は社会問題ではなく、社会の病理という捉えかたでしょう。<br>
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それはあまり生産的な議論ではありません。<br>
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――川崎殺傷事件や練馬事件の報道を見て、どう思われたでしょうか。<br>
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一連の事件によって、ひきこもりは「犯罪予備軍だ」という印象が強くなったのは間違いありません。<br>
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ただ、それはごく一部の人のことであり、当然ながらひきこもり全体のイメージとして語るのは間違っていると思わざるを得ません。<br>
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――いまの社会状況では「中高年のひきこもり経験者」である杉本さんも、日ごろからナイフを待って街中をうろついているという偏見を持たれそうですけれども?<br>
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そんなこと想像もつかなかったなぁ(笑)。<br>
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私も若い時そうでしたが、そもそも家の外に出るのが怖かったり、疲れやすかったりするのがひきこもりではないでしょうか。<br>
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――「みんなを道ずれに死にたい」という衝動に駆られたことは?
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むしろ私は死ぬのが怖い人間なんですよ。死ぬくらいならとことん逃げます。<br>
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確かに10代のころはパンクロックが好きでしたし、その気持ちもわからないくもないですが、いまそんな衝動はないし、自分自身では想像もつかない。<br>
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逆に若い世代の夫婦と小さな子が公園で遊んでいると「これぞあるべき平和だな」と思います。<br>
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今でも戦争やテロがある中で。ですから基本的に平和主義者です。<br>
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しかし、孤立感や絶望感が深く、理不尽な目にあった人は暴発することもあるでしょう。<br>
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それはひきこもりだからというより、人の中にあるさまざまな感情の混乱だと思います。<br>
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――犯行に及ぶまで気持ちが暴発してしまう人と、杉本さんのように公園で親子を見て目を細める人、その差はどこにあると思いますか?<br>
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私がひきこもったきっかけは、そもそも兄と父の関係が悪く、その反動で兄から私は「お前は軟弱者だ」などとよく言われました。<br>
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いまから考えればたいしたことがない話ですが、長く続く威圧的な言動によって「家に居場所がない」と感じるようになりました。<br>
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そんななか中学時代、私はテストでのカンニングを見咎められ、それを機会にクラスの人たちが自分をさげずんでいるのでは?と邪推したのが対人恐怖のきっかけなんです。<br>
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学校と家に居場所がない。そのストレスによって、自分が醜いという強い妄想(醜形恐怖)に捉われ始めます。<br>
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当然、対人恐怖もありましたし、当時の私は病的でした。<br>
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「オレを見たらみんな逃げるんだ」と私が言うと、両親は「そんなことはないよ」と言ってくれるのですが、妄想が否定されるほどに自分の醜形に確信を深めていきました。<br>
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そんなときに救われたのがセラピストとの出会いです。<br>
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その先生は、私の話をさえぎらず、否定せずに聞き、最後に「つらいでしょうね」と言ってくれたんです。<br>
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最初、私はその先生も信じてなかったんです。どうせオレを説得する気だろう、と。<br>
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でも、説得はせず「つらさを軽減できる方法を探りましょうか」と言ってくれました。<br>
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そこからですね、徐々に変わったのは。世の中いろいろな人がいるなぁと。<br>
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もちろん、すぐに対人恐怖は抜けませんでしたが、頭のどこかで「わかってくれる人がいる」と思えたんです。<br>
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いま現在、さまざまな研究者の人などにインタビューする活動をしていますが「人と出会うことでワクワクする」という経験を積み重ねています。<br>
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苦しくても「この世に生まれた自分を殺したい」とまで思わなかったのは、苦しさに共感してくれた人と出会えたからだと思うんです。<br>
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――なるほど。ちなみに、ひきこもりのきっかけとなったお兄さんとの関係は今ではどうでしょうか?<br>
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それはもう大人の付き合いですよ。おたがいに会っても「どうも」「どうも」と礼儀正しく、サラリーマンどうしみたいな深入りをしない関係です(笑)。<br>
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――ありがとうございました。(聞き手/全国不登校新聞編集長・石井志昂)<br>
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*  *  *<br>
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一口に「中高年のひきこもり」と言っても、そのかたちは実に多様です。そして、杉本さんの話のポイントは「共感」だったと私は思います。<br>
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子どもが「オレの顔を見たらみんな逃げ出す」と言っていたら、私だって杉本さんの親と同じように「そんなことないよ」と言ってしまいます。<br>
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でも、その一言は本人からすれば「私の苦しさが否定された」と思うのです。<br>
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逆に否定も肯定もせずに「つらかったよね」と共感することで、本人は「苦しい自分が受け入れられた」と思い、心を開いて快方へと向かう。<br>
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それが杉本さんの例でしたが、これは理想論ではなく、数々のひきこもり経験談で語られてきた実践的な手法です。<br>
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こうした手法が広がっていくことは、川崎事件や練馬事件のように許されざる犯行を防ぐ手立てのひとつになるのかもしれない。<br>
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私はそういうふうにも思っています。<br>
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■プロフィール<br>
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すぎもと・けんじ/1961年、札幌市生まれ。高校で不登校中退。中退後と20代後半に長期間、ひきこもった。<br>
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現在はフリーターのかたわら、『ひきこもる心のケア』(世界思想社)を出版。<br>
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WEBサイト「インタビューサイト・ユーフォニアム」運営。<br>
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〔2019年6/6(木) AERA dot.〕 <br>
  
 
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2019年6月12日 (水) 16:03時点における版

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所在地 神奈川県川崎市
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周辺ニュース

ページ名川崎殺傷・自殺事件、神奈川県川崎市 (8050問題、事件事故)
テレビが報じない「中高年のひきこもり」57歳男性が明かすリアルな日常と心を開いた言葉〈dot.〉
杉本賢治さん(本人提供)
連日、「中高年のひきこもり」が話題になっています。きっかけは川崎殺傷事件の岩崎隆一容疑者(51歳)が「ひきこもり傾向」だと報じられたこと(5月29日)。
そして6月1日に、元官僚の熊澤英昭容疑者(76歳)が、ひきこもりの息子・熊澤英一郎さん(44歳)を殺害したことです(以下、練馬事件)。
川崎殺傷事件をひきこもりと短絡的に結び付けるのには疑問も残りますが、かつてこれほどまでに「中高年のひきこもり」に注目が集まったことはありません。
ひきこもりは「若者の問題」だと言われてきたからです。今回の事件は、ひきこもりの若者やその家族にも波紋が広がっています。
「いずれは自分も親に殺されるのかもしれないと思った」(20代・ひきこもり男性)
「不登校の娘と心中しようと思ったことは一度や二度じゃない。息子を刺した父親のことは他人ごとに思えない」(50代・ひきこもりの子を持つ親)
そんな声が聞こえてきます。
そこで事件を追うだけでは見えてこない「ひきこもりの日常」を知るべく、ひきこもり経験者で現在も「半分ひきこもりの生活」を続けているという杉本賢治さん(57歳)に話を聞きました。
*  *  *
――ご自身のひきこもり経験と現在の生活のようすを教えてください。
私がひきこもったのは高校中退後の10代後半と、その後、大学卒業後からの20代後半です。
ひきこもりの期間は累計で9年ほどですが、今も正社員としては働いていません。
おもに清掃のバイトをしています。
バイトの報酬は自分の社会保険料や通信費、取材費などに充て、母と二人暮らしの生活費は父の遺族年金などで賄っています。
現在の生活は「半ごもり状態」というところでしょうか。
完全なひきこもりではなく、半分ぐらいひきこもっている。
その理由は、バイト以外に個人的なインタビュー活動をしていて、自分の働き方のために時間を割かれるからです。
2年前から母が認知症になり要介護状態になりました。
兄弟は離れて暮らしていますので、私が母の世話をしています。家事はある程度、母と分担しながらやっています。
そういう意味では8050問題(介護問題など高齢化するひきこもり親子の問題)のど真ん中でしょうが、介護問題はひきこもりに限った話ではなく、誰にでも起きる話であって、ぼくはむしろ独身者問題だと捉えています。
8050問題はいずれ社会の問題となる。
いまの8050問題の取り上げ方は社会問題ではなく、社会の病理という捉えかたでしょう。
それはあまり生産的な議論ではありません。
――川崎殺傷事件や練馬事件の報道を見て、どう思われたでしょうか。
一連の事件によって、ひきこもりは「犯罪予備軍だ」という印象が強くなったのは間違いありません。
ただ、それはごく一部の人のことであり、当然ながらひきこもり全体のイメージとして語るのは間違っていると思わざるを得ません。
――いまの社会状況では「中高年のひきこもり経験者」である杉本さんも、日ごろからナイフを待って街中をうろついているという偏見を持たれそうですけれども?
そんなこと想像もつかなかったなぁ(笑)。
私も若い時そうでしたが、そもそも家の外に出るのが怖かったり、疲れやすかったりするのがひきこもりではないでしょうか。
――「みんなを道ずれに死にたい」という衝動に駆られたことは? むしろ私は死ぬのが怖い人間なんですよ。死ぬくらいならとことん逃げます。
確かに10代のころはパンクロックが好きでしたし、その気持ちもわからないくもないですが、いまそんな衝動はないし、自分自身では想像もつかない。
逆に若い世代の夫婦と小さな子が公園で遊んでいると「これぞあるべき平和だな」と思います。
今でも戦争やテロがある中で。ですから基本的に平和主義者です。
しかし、孤立感や絶望感が深く、理不尽な目にあった人は暴発することもあるでしょう。
それはひきこもりだからというより、人の中にあるさまざまな感情の混乱だと思います。
――犯行に及ぶまで気持ちが暴発してしまう人と、杉本さんのように公園で親子を見て目を細める人、その差はどこにあると思いますか?
私がひきこもったきっかけは、そもそも兄と父の関係が悪く、その反動で兄から私は「お前は軟弱者だ」などとよく言われました。
いまから考えればたいしたことがない話ですが、長く続く威圧的な言動によって「家に居場所がない」と感じるようになりました。
そんななか中学時代、私はテストでのカンニングを見咎められ、それを機会にクラスの人たちが自分をさげずんでいるのでは?と邪推したのが対人恐怖のきっかけなんです。
学校と家に居場所がない。そのストレスによって、自分が醜いという強い妄想(醜形恐怖)に捉われ始めます。
当然、対人恐怖もありましたし、当時の私は病的でした。
「オレを見たらみんな逃げるんだ」と私が言うと、両親は「そんなことはないよ」と言ってくれるのですが、妄想が否定されるほどに自分の醜形に確信を深めていきました。
そんなときに救われたのがセラピストとの出会いです。
その先生は、私の話をさえぎらず、否定せずに聞き、最後に「つらいでしょうね」と言ってくれたんです。
最初、私はその先生も信じてなかったんです。どうせオレを説得する気だろう、と。
でも、説得はせず「つらさを軽減できる方法を探りましょうか」と言ってくれました。
そこからですね、徐々に変わったのは。世の中いろいろな人がいるなぁと。
もちろん、すぐに対人恐怖は抜けませんでしたが、頭のどこかで「わかってくれる人がいる」と思えたんです。
いま現在、さまざまな研究者の人などにインタビューする活動をしていますが「人と出会うことでワクワクする」という経験を積み重ねています。
苦しくても「この世に生まれた自分を殺したい」とまで思わなかったのは、苦しさに共感してくれた人と出会えたからだと思うんです。
――なるほど。ちなみに、ひきこもりのきっかけとなったお兄さんとの関係は今ではどうでしょうか?
それはもう大人の付き合いですよ。おたがいに会っても「どうも」「どうも」と礼儀正しく、サラリーマンどうしみたいな深入りをしない関係です(笑)。
――ありがとうございました。(聞き手/全国不登校新聞編集長・石井志昂)
*  *  *
一口に「中高年のひきこもり」と言っても、そのかたちは実に多様です。そして、杉本さんの話のポイントは「共感」だったと私は思います。
子どもが「オレの顔を見たらみんな逃げ出す」と言っていたら、私だって杉本さんの親と同じように「そんなことないよ」と言ってしまいます。
でも、その一言は本人からすれば「私の苦しさが否定された」と思うのです。
逆に否定も肯定もせずに「つらかったよね」と共感することで、本人は「苦しい自分が受け入れられた」と思い、心を開いて快方へと向かう。
それが杉本さんの例でしたが、これは理想論ではなく、数々のひきこもり経験談で語られてきた実践的な手法です。
こうした手法が広がっていくことは、川崎事件や練馬事件のように許されざる犯行を防ぐ手立てのひとつになるのかもしれない。
私はそういうふうにも思っています。
■プロフィール
すぎもと・けんじ/1961年、札幌市生まれ。高校で不登校中退。中退後と20代後半に長期間、ひきこもった。
現在はフリーターのかたわら、『ひきこもる心のケア』(世界思想社)を出版。
WEBサイト「インタビューサイト・ユーフォニアム」運営。
〔2019年6/6(木) AERA dot.〕

周辺ニュース

ページ名川崎殺傷・自殺事件、神奈川県川崎市 (8050問題、事件事故)
川崎殺傷事件と元官僚の父親の、ひきこもりに関するふたつの事件 川崎20人殺傷、元農水事務次官事件で浮かび上がる中高年引きこもりの深刻度〈週刊朝日〉
警視庁に逮捕された元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者(c)朝日新聞社
引きこもりだった51歳の男が神奈川県川崎市で20人を殺傷した事件に連鎖するように、元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者(76)が6月1日、引きこもりだった長男(44)を自宅で殺害するというショッキングな事件が起こった。
熊沢容疑者は警視庁の調べに対し、川崎事件に触れ、「長男が子どもたちに危害を加えてはいけないと思った」と供述しているという。
「事件当日、長男が『小学校の運動会がうるさい』と言い出し、熊沢容疑者がたしなめようとしたら、『ぶっ殺すぞ』と反発。小学校に乗り込むという言動があり、思い詰めて犯行に及んだようだ。長男はずっと引きこもり、暴れるなど家庭内暴力が続いていた。熊沢容疑者は自分や妻の身の危険も感じていたと話している。長男への刺し傷は10か所以上で、腹や胸に集中していることから、かなりの覚悟を持っての犯行のようだ」(捜査関係者)
熊沢容疑者のように、引きこもりの当事者が家族に暴力を振るうため、家族が危機感を抱き、殺してしまったりする事件はこれまでもあった。 逆に当事者が家族の言葉に逆上して、殺してしまったケースもあるという。
20年間引きこもっていた経験があるという一般社団法人「ひきこもりUX会議」代表理事の林恭子さんは、「引きこもりは、ひとごとではない。仕事や家庭でつらいことが二つ、三つ重なって心身にダメージがあれば、人に会いたくない、自宅にこもっていたいとなると思う。これは一つの防衛反応」と話す。
KHJ全国ひきこもり家族会連合会事務局の森下徹さん(51)は、これまでに二度引きこもった経験がある。
幼稚園の頃から友達とはうまくいかず、高校の時も色々なことが重なり不登校に。卒業して大学に進んだが、また不登校になり、20歳までの2年間引きこもった。その後、いったん回復するが、20代の途中から12年間引きこもった。
「アルバイトとか就職とかは自信がなくて。対人恐怖症的なところがあった。今もそう。人が怖い。人の目を見て話すのが怖い。引きこもっている間は『このままではよくない』と『諦め』の間で揺れていた。最後の方は諦めていたぐらい。家族とうまくいかなかった時とかは、死んでもいいな、と思うことはあった」
現在は当時よりは良くなっているが、85歳の父親とはあまりうまくいっていないという。
内閣府が昨年初めて実施した前出の40~64歳対象の調査では、引きこもりは男性のほうが多く、その割合は7割を超える。一度引きこもると社会復帰は難しく、長期化する傾向がある。約5割の人が7年以上引きこもっており、20年以上にわたる人も2割弱いた。引きこもった理由はさまざまだが、「就職活動の失敗」や「退職」など仕事にかかわるものが多い。
これまで引きこもりは若者の問題として捉えられてきたが、引きこもり本人、家族ともに高齢化が進んでいる実態がある。KHJの調査によると、引きこもり本人の平均年齢は2002年に26・6歳だったのが、18年には35・2歳に上昇。3割で本人の年齢が40歳以上。親の年齢も高齢化しており、18年は65・9歳だった。
03年に厚生労働省から公表された引きこもり問題のガイドラインによると、家庭内での問題行動が少なくない。親に対する暴力が17・6%、家族への支配的な言動が15・7%などになっている。また、4%が家族以外の外部に対して問題行動を起こしていた。
国としても大きな課題だ。引きこもりになれば、収入がなく、将来的には低年金や年金がもらえないということも想定される。親の死後、多くの人が生活保護に頼ることも懸念されている。将来的には生活保護費の総額が数十兆円増えるという見立てもある。
この問題で改めて注目を集めているのが「就職氷河期世代」だ。バブルが崩壊し、景気低迷に苦しんでいた1993~04年ごろに大学や高校を卒業し、就職活動に苦しみ、非正規など不安定な職に就いた人たちが多い。
労働力調査によると、氷河期世代にあたる35~44歳の非正規雇用の数は約371万人。25~34歳では264万人で、100万人以上も氷河期世代が多い。就職活動や不安定な雇用でつまずき、引きこもりになった人が多く、それが80代の親と無職の子どもの家族が社会から孤立する「8050問題」につながっているとの指摘もある。
国はこの世代を対象にした抜本的な対策をしなかったのだろうか。
04~06年に内閣府参事官(少子化担当)を務めた増田雅暢さんは、「就職氷河期世代に注目し、就労支援などを進めるように動いた」と話す。しかし、高齢者向けの政策や財政再建などが優先され、就職氷河期世代に対する十分な財源を確保できなかったという。
「年長の政治家に『自己責任』という意識が強く、就職氷河期世代を支援するという動きにはならなかった。これが今の引きこもりや結婚できず子どもも産めないという少子化の問題につながっている」(増田さん)
国が、引きこもりを若者の課題と決めつけていたことも、中高年の引きこもりに対する対応の遅れを招いた。今回、中高年を対象に調査を行った内閣府では、10年と15年にも調査を行っているが、対象は15~39歳だった。「子供・若者育成支援推進大綱」で40歳未満を若者と定義しており、それに従っているという。
自治体でも同様に対策は後手に回った。東京都ではこれまで引きこもり家庭への訪問などは34歳までとしてきた。引きこもりの中高年化に合わせて、今後は年齢制限を撤廃するという。自治体の窓口によっては、40歳程度と制限を持つところが多かった。
今後、有効な手立てが進んだとしても、引きこもりの問題は現代社会が抱える大きな問題だ。小中学校の不登校の数は17年度は14万4千人。少子化で生徒数が減る中で、不登校児童は増えてきている。15年の15~39歳の引きこもり数は推計54・1万人だ。中高年の引きこもりを合わせると、全体の数は100万人以上いるとの指摘もある。 前出の林さんは、引きこもりを対象にした「女子会」を各地で開いている。すると毎回必ず、「駅までは来たけれど、たどり着けない」「建物の前まで来たのに中に入れない」という人がいるという。
「人や電車が怖いから、彼女たちは、電車に乗っては外を歩く練習を重ね、その日に備える。10年ぶりに電車に乗るという人もいる。それだけの思いをして女子会に行こうとするのは、孤立から抜け出したいとの思いがあるから。それだけ彼女たちは居場所がない」
KHJ理事で20年以上、引きこもりを取材してきたジャーナリストの池上正樹さんもこう話す。
「よく聞くのは、『生きていたいと思えるようになりたい』という一言。社会は、それだけ厳しい。社会のレールからひとたび外れるとなかなか元に戻れない」
孤立すると自分を責め、「『自分みたいな人間がこの世に存在しているのが申し訳ない』『たまに外出しても道の真ん中を歩けない』という人もいるのです」(林さん)。
昔のように地域が一緒になって助け合う時代ではなくなり、親は「働けなくなった子どもが恥ずかしい」と周囲から隠そうとする。そしてさらに孤立が深まる悪循環。
親はどうすればいいのか―。 池上さんはこう指摘する。「『働け』はNGワード。親は、仕事をさせたいという思いを切り替える。就労よりもまずは生活や本人の望み、生き方の支援。社会も『孤立するのは自己責任』という考え方では、8050問題はさらに増えていくことになる」
KHJ共同代表の伊藤正俊さんは、「親が全部抱え込むのが問題です。それが何かの間違いで、一家心中や殺したり、殺されたりになってしまう。子どもは子どもの人生があっていい。困ったときは、無理して家庭内で解決しようとせず、さまざまな機関に相談すればいい。場合によっては警察にも」と助言する。
30年以上引きこもりに接し、一般社団法人「OSDよりそいネットワーク」を設立した臨床心理士の池田佳世さんは、こう話す。
「親が動じるからいけない。引きこもっていても、口を利かなくても、生きていればいい、あなたはそのままでいい、と接することが大事。子どもに『親のせいだ』と言われたら、『そうだね』とただ応じ、言い返したり、価値観を押し付けたりせず、何でも聞いて言葉を引き出す。コミュニケーション能力を家庭で高めつつ、安心させることです」
多くの引きこもりと接してきた人たちによると、引きこもりの当事者に「最も怖いことは?」と聞くと、多くが「親の死」と答えるという。自分が生きていけなくなるという不安からだ。 前出の林さんはこう語った。
「8050問題の当事者たちはすごく焦りを感じています。彼らに大事なのは、孤立しないこと。つながりが絶たれると、当事者はたぶん死んでしまうと思います。親が生きているうちに、行政の窓口、保健所の担当者、民生委員、社会福祉協議会、地域包括支援センターなどとつながっておくことです」
【子どもが引きこもった場合、「親」にすすめる五つの行動】
(1) 家族会など、共通の悩みを持つ人々の集まりに行って愚痴や悩みを吐き出そう。
(2) 子どもが生きていてくれることにまず感謝しよう。
(3) 子どもには、魔法の言葉「そうだね」を言おう。
(4) 子どもから責められても言い返さずに応じるのみ。聞くことに徹底して、言葉を引き出そう。
(5) 家庭内で解決しようとせずに、行政の窓口や保健所、民生委員らに相談しよう。
(本誌 大崎百紀、吉崎洋夫、上田耕司/今西憲之)
週刊朝日2019年6月14日号に加筆
〔2019年6/4(火) AERA dot.〕

周辺ニュース

ページ名川崎殺傷・自殺事件、神奈川県川崎市 (8050問題、事件事故)
《川崎殺傷事件》容疑者の孤独な生活と、“地雷”となった伯父夫婦からの手紙
「彼は叫び声を上げるでもなく、怒鳴り散らしているわけでもなく、無言でした。だから子どもたちは気づかなかった。子どもたちは、犯人を背にしスクールバスのバス停を見ているから、後ろから走りながら切りつけてきている犯人が視界に入っていない。“キャー”とか“痛い”と聞こえて、(子どもたちは)それぞれ初めて後ろを振り向いた」
私立カリタス学園の倭文覚教頭は、事件発生時に見た光景をそう振り返る。
首から大量の血を流していた
60代の男性は、直後、「『通り魔だ!』という叫び声を聞きました。見てみると、子どもが数人倒れていました」
事件現場近くに住む70代の男性は、「“ギャー”という聞いたことがない悲鳴が聞こえてきた。路上に子どもたちが倒れていました。時刻は7時45分くらいだったと思います」
5月28日午前7時40分ごろ、川崎市多摩区登戸新町の路上で、スクールバスを待っていた私立カリタス小の児童ら20人が殺傷される事件が起きた。
「小学校1~3年生までは必ずスクールバスで通います」(20代の同校OG)という現場は修羅場と化し、多くの目撃者は、怖がる子どもたちの表情、悲鳴を上げている子、途方に暮れて立ち尽くす大人たち、「お母さん頑張れ」という声、お腹を刺されている女の子、“お母さん”と助けを求める子、担架で運ばれる女の子の手をずっと握っている女の人……をなすすべもなく見ていた。そんな中に、犯行後に自殺した岩崎隆一容疑者(51)の姿も目撃されていた。
「バス停の前で倒れていました。丸刈りの頭で、黒のTシャツを着ていて、両手には何も持っていませんでした。首から大量の血を流していて、時折、頭が動いていました」(前出・70代男性)
岩崎容疑者は事件現場から直線距離で約4キロ、小田急線読売ランド前駅から徒歩で約15分に位置する築約60年の木造住宅に、80代になる伯父夫婦と3人で暮らしていた。
事件の数日前に岩崎容疑者を見かけたという近隣住民は、
「両手に買い物のビニール袋をぶら下げて帰宅するところを見ました。髪は白髪まじりで、長くて耳までありました」
と証言する。
岩崎容疑者と同年代の近隣住民は、「両親が離婚したため、小学校入学前に父親の兄の家に預けられた。伯父夫婦と伯父夫婦の長女(容疑者より4歳ほど年上とみられる)と長男(同じく3歳ほど年上とみられる)と一緒に住んでいました」と家族関係を説明し、
「上級生と走り回ったり、野球をしたりしましたが、体力的についてこられないと、泣きはしなかったけどひとりで家に帰ったり、家の前でポツンと座っていたりしましたね」
と振り返る。親に捨てられ、親戚に預けられた少年は、近くの公立学校に通っていたが、同居するいとこは名門私立カリタス小に通っていた。格差がすでに、岩崎容疑者に巣くっていたのだ。
スイッチとなった言葉
こころぎふ臨床心理センターの長谷川博一センター長は、犯行動機について、
「学校や学校関係者への復讐心が強い。学校があるから家族からこういう扱いを受けて、今でも悶々と苦しんでいるんだ、と。親から見捨てられた容疑者にとって、幸せ=カリタスだったと考えられます。いとこが今幸せに過ごしているのもカリタスだから。そういうふうに視野が狭くなった可能性はあります」
と指摘し、さらに踏み込む。
「昼間は部屋にこもりながら、悶々とそのことばかり考えてしまうという、思考がスパイラルに陥っていた。差別的に傷つけられた自分といとこの違いを生んだのは学校。学校を出るか出ないかによって、こんなに違ってしまったととらえたのではないか」
犯行時、ほかの学校の集団に見向きもしなかった岩崎容疑者は、無差別殺人を企てたのではなく、子どもたちを狙ったのでもなく、カリタスを体現している子どもや保護者を狙った─。その引き金があった、と長谷川センター長は、次のようにみる。
「実行に移る前に、何らかのトリガーがあった。それが(伯父夫婦からの)手紙です。その中にあった『ひきこもり』という言葉がスイッチになっている。育ての親に強い口調で言い返していますから」
容疑者の親族は、面談で8回、電話で6回、都合14回、川崎市に相談していたという。先月29日に記者会見した川崎市は「長期間、就労せずに、ひきこもり傾向にある」「伯父と伯母に介護サービスを受けさせたいが、外部の人が家の中に入ったときの(容疑者の)反応が心配だ」といった相談を受けていたことを明かした。
伯父夫婦は川崎市の提案に従い今年1月、手紙を書き、岩崎容疑者の部屋の前に置いたという。
その反応は「自分のことは自分でやっている。食事や洗濯も自分でやっているのに、ひきこもりとはなんだ」という怒りに満ちた返事だった。
80代の伯父夫婦に51歳の岩崎容疑者。典型的な『8050問題』が内在する家だった。コミュニケーションは限りなく少なく、職にも就かず、伯父夫婦がお小遣いを渡し、伯母が冷蔵庫に作り置いたおかずで、ひとりでご飯を食べる生活……。スマホもパソコンもなく、外部との接触はゼロ……。そこに岩崎容疑者の何かをえぐる手紙。
「引きこもり=危険」ではない 「コミュニケーションがない中で、親から正論を突きつけられると、多くの場合が爆発するしかない」
そう明かすのは、新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(犯罪心理学)だ。
「中高生が不登校になると親が心配しますが、中高生には未来がある。それが30、40、50となると、そうはいかなくなる。学校に入り直すことも難しく、正社員での就職も厳しい。そうなると八方ふさがりで、ひきこもりになってしまいがちです。
親も、自宅に中年のひきこもりがいるとは人には言えない。とても恥ずかしい、と地域からも疎遠となり、二重のひきこもり状態になってしまいます。
ひきこもっていると、自分自身に意識が向いて、理想と現実のはざまで苦しみ、自分はダメ、みんな殺して俺も死ぬ、そんな思考が出やすい」
伯父伯母の手紙に、岩崎容疑者は激しく爆発し、
「興奮状態になって犯行計画を考えるようになったのではないでしょうか。今回のことを考えついたのは、この手紙のやりとりをした後と考えられます」(前出・長谷川センター長) 40歳から64歳までのひきこもりの推定人数は約61万人。
前出・碓井教授は、「ひきこもり=危険ではありません。ひきこもりだからやったわけではないと思いますが、ひきこもっていなければ事件は起きなかった」ときっぱり。
そして、「(ひきこもりの当事者と)手を取り合っていく雰囲気づくりに社会が取り組むことが、悲劇を起こさないためにも必要です」
前出・長谷川センター長も、「中高年のひきこもりに対する法整備も必要だと思います」
岩崎容疑者が何を抱え込み、なぜ爆発させたのか。
真相は闇の中だ。
〔2019年6/4(火) 週刊女性PRIME〕
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