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松田武己

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(松田 武己さんのプロフィール)
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[[Category:人物紹介|まつだたけみ]]
 
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[[Category:不登校情報センター|000]]
 
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江戸川区ひきこもり調査報告書への意見書
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 松田武己(江戸川区平井3-10-4)
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 不登校情報センター代表
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これまで私はこのような行政機関の調査報告書を細かく読んだことはありません。ですからこの江戸川区ひきこもり調査報告書がどのようなレベルのものか判断する基準はありません。平均以上のレベルのものと受け取ることにします。
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私は25年の間、ひきこもりの人に接し、彼ら彼女らに囲まれた生活をしています。報告書で述べられている彼ら彼女らの現状を繰り返すことはしません。確かに現状は社会問題になるレベルの状況であり、何らかの打開策が必要です。それはどういう性格のものになるかを考えるために報告書を読み、打開の方向を考えてみました。参考になればさいわいです。
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ひきこもりへの対応策はうまくいっていません。多くの方がさまざまな努力と成果を収めていると認めています。しかし、行政の場面でも、社会運動の面でも、身体科学や精神心理的な理解でもうまくすすんでいるとは考えません。問題が難しいほど事態を論理的・実証的に説明するのは大変であり時間もかかるのでしょう。25年以上かかわる私もその上手く理解できず、対応できない1人です。
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(1)現状の対応策、特に社会や行政面での対応策をごく手短に紹介すればこうなりませんか。
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ひきこもりとそれにより派生したことや周辺事態に困った人が助けを求める。それが社会問題と感じる規模になり、行政的な対応が求められる。行政的は対応が始まったのは2000年以降としましょう。
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家族会(親の会)と当事者の会は90年代までに生まれ始めています。いまはそれが居場所として認められるところもあります。不登校から関わった親の会がひきこもり家族会に様変わりした所もあります。
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まず家族が相談に行きます。相談先は保健所、精神保健福祉センター。民間ではカウンセリングや医療機関がこれらに先行します。
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次は(たぶん並行して)技術訓練や資格取得の教育機関です。ハローワークにも行った人がいると思いますが、そこでの対応はもっと後のことです。
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生活保護の福祉部門には早い時期にこれらの相談が混ざっていたと思います。民生委員・社会福祉協議会などは早くからかかわっていたはずです。町中の不動産業やアパート経営の人にも事態を察知していた人はいました。
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行政などの対応には、発達障害支援法、ニート対策、地域若者サポートステーション、(若者自立塾というのも一時ありました)などができました。2016年施行の生活困窮者自立支援法にひきこもりが対象に加えられました。江戸川区ではくらしごと相談室で対応しています。
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これらの総体の取り組みにおいて、ひきこもり対応は成功していないというのが報告書内容です。
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今回の報告で目に付くのは、関係機関(民生委員)や区職員(ケースワーカーと保健所)からの声です。区の広報などでは「相談に来てください」としていますが、特に長期のひきこもり経験者(高年齢化した人)への決め手となる対応策は見えません。
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(2)関係者の現状を要約すると次のように理解できます。
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① 当事者の状態像は3点に象徴できます。=どうしたらよいかわからない。就労を強要させそうな不安。気軽に話せる場が欲しい。
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② 家族は次のようになります。=相談したらたらい回しされる不安がある、同じ悩みを共有できる場がほしい。
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③ 行政・関係機関の状態はこうなります。=対処方法がわからない・対処部門がわからない(相談したが具体的な方策はなかった)。
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多くのことばと数字が並ぶ報告書からこのように事態を要約するのは偏っている、一面的と思うかもしれません。これに付随する周辺のことばを多くするより、省略して考えたほうがわかりよいと思えます。
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(3)今回の調査報告書から、この状態に対してどのような方向が提示されているのでしょうか。
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報告書には数字のまとめがありますが、当事者についてはそれば限られた範囲の人のものです。ことばで表現される自由意見があり、それが参考になります。報告者はそれらをいくつかの項目に分けて整理しています。また当事者の年代別、同居家族の有無、ひきこもり状態の期間の長さ別にまとめています。ここでは項目別に「求められていること」が並べられているのでそれを紹介します。
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私の意見書は20代後半から40代のひきこもり当事者を想定しますので、年代別・同居家族・ひきこもり期間は省きます。ただし、省略した部分や当事者・家族等の自由意見(25-28ページ)、関係機関の自由意見(37-40ページ)、区職員の自由意見(48ページ)も照合しました。報告書はおおかた公正になっていると判断します。
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分けられた項目は、相談先、支援、行政の在り方、経済的な不安、家族の負担、情報の6項目です。それぞれのまとめを紹介します。近回の調査報告の提案につながるものと考えます。
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①〔相談先〕
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当事者:年齢・経歴関係なく気軽に相談できる窓口 、あらゆる不安について相談する機会 、当事者同士で話しをする機会・居場所。
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家族等:家族としての悩みを相談する場所、同じ悩みを共有し情報交換できる場所、他人の目を気にせず相談できる場所、当事者を支えるための知識を得られる機会。
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関係機関:最初の相談窓口の一本化、インターネットや広報紙を用いた相談先の周知、当事者以外からの相談でも対応できる体制。
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区職員:あらゆる不安について相談する機会・居場所、ひきこもり専門窓口の設置、気軽に相談できる窓口。
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②〔支援について〕
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当事者:【就労】 求職活動・就労をするための訓練、その人に合わせた段階的な支援、病気・障害でも働ける就労先の案内、在宅での就労方法の提案。
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当事者:【就労以外】 会話や体力作りを目的とした訓練、日中活動やボランティア活動の提案。
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家族等:家族以外の協力者、外へ連れ出すきっかけ作り、コミュニケーションの取り方を学ぶ場、社会とのつながりを持つためのきっかけ作り。
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関係機関:原因に応じた支援方針の策定、専門性を有した職員の配置、成功事例の集約、自立に向けた支援方法の体系化、支援方法に関するフローチャートやマニュアルの作成、支援方法に関する講習会の開催。
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区職員:関係機関との連携体制の確立、問題意識の無い当事者、家族等への対応、その人に合わせた段階的な支援、当事者家族への支援方法を学ぶ場。
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③〔行政の在り方〕
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当事者:ひきこもり専門窓口の設置、窓口の広報活動、行政側の意識改善。
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関係機関:行政で対応できることとできないことの明確化とその周知、関係機関と連携協働できる体制づくり。
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④〔経済的な不安〕
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当事者:経済的な不安を相談できる場所、区貸付・生活保護制度への案内と申請補助、医療費・カウンセリング費用の助成。
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⑤〔家族等の負担〕
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家族等:支える側の親族への支援、ひきこもりに対する知識。
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⑥〔情報〕
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関係機関:情報共有できる仕組みづくり。
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以上で、互いに重なるものもあります。これらを自由意見と照合しました。自由意見は、類似する意見を含めて件数が示されています。どれだけの人がそういう意見を持っているのかを示す貴重な内容であり、意識してみましたが、私の意見書では略します。
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これらの全体をみれば、現状と大差ない対応策になると思います。それでも貴重な内容が含まれていると認められますので、そこを手掛かりに私の意見を提出します。
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(4)行政面で現状を変えるための発想には2つの点が必要だと思います。
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① 1つは当事者が動く(相談に行くことも含めて)こと自体が、直接的な利益になる方法を提示することです。 ⇒(6)に続く。
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② 区の相談先は多様であるのがいいことですが、ひきこもりに関する最終的な担当課が必要です。
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⇒(5)に続く。
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この2つの面についてそれぞれ要点の説明をします。
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(5)区の機構に「ひきこもり対応課」を設けます。
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専門の担当部門を設ける点は報告書にも示唆されています。そこを具体的に展開します。
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① ひきこもりに対応するセクションはいろいろあるけれども、決定的な対応部署がない状況を解決しなくてはなりません。区長直轄の「ひきこもり対応課」を設けます。
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対応策がない中で「ひきこもり対応課」を設けても何もできないと思われるかもしれません。あれこれの部署で中途半端になり、たらい回しになっている件案を最後的にここに集め、その解決策を考え出す部署にします。ここに集まる相談者は、固有名詞(登録制)で少なくとも数年間は追跡調査をします。登録者にするように目指すので、以下では登録者とすることがあります。
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② 「ひきこもり対応課」の1部門に居場所運営部を設けます。ここでいう居場所は当事者の集まる場と家族会、および両方を併せ持つ性格のものです。年数回以上の会合を想定する居場所です。
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区は居場所を紹介するだけではなく、自ら居場所を運営する立場になります。この部分を業務委託等により進める策はありますが、それを受ける事業者自体を養成しなくてはなりません。
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すでにある、当事者の会や家族会との協力も含みます。
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③ 訪問サポートの支援部を設けます。
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訪問サポート活動をする民間事業者の申し出があれば、訪問を受ける側に一定の補助を行います。
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ひきこもり経験者のうち有志をひきこもり訪問者に養成します。
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民生委員、ソーシャルワーカー、保健師を含むひきこもり訪問者を養成します。
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ひきこもり訪問者は、ひきこもり相談の登録者に計画的に訪問をします。
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④ ネットの推進部の設立を検討します。
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ひきこもり状態にある人が社会的活動、経済的な活動、創作的活動等の機会が得られるようにインターネット利用の応援をします。ネット利用技術の学習・研修機会の提供、機材の利用機会のサービス、機材購入の援助等を検討します。
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⑤ 区内の求人難・後継者難の事業者(特に小規模事業者)と協力し、人材発掘につながる職場見学・説明会、実習・研修会などの機会を持ちます。いわば事業者による作業を伴う居場所づくりです。事業者がこの趣旨の機会を開催できるように協力、助言と援助をします。相談した登録者に対し、幅広く、定期的・機会に応じて粘り強く案内し、参加を勧めます。これは長期の取り組みであり、区の産業・経済政策です。
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(6)動くことが当事者にとり直接的な利益になる方法
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当事者が自ら動きだす人は少ないという調査報告は事実ですが、事実の全部ではありません。ひきこもりの特徴に1つに、動き出した人には自ら支援者側に回る人が少なからずいます。「人から言われてやるのに懐疑的であり、やるのなら自分の意志でやる」、極端に表現しますとこれが反面の事実です。全国若者・ひきこもり協同実践者交流会という全国組織があり各県持ち回りで毎年集会を開いています。始まって15年以上ですが当初は「支援者交流会」でした。ひきこもり当事者がこれに参加して支援者の側に立つようになりました。「協同実践者交流会」に名称も変更しました。これが象徴的なひきこもりの特色を示しています。彼ら彼女らは自分の意志を社会的に抑圧されてきた成育歴に関係するはずです。その動き出すエネルギーを引き出すための施策が、もう1つの視点です。
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思いつく範囲で直接的な利益になる方法を列挙します。
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1(交通費):区が指定する援助団体等が開催する会合、相談機会等に数回以上の参加を確認した登録者に交通費を支給する。参加しやすい条件づくりと指定する援助団体等の利用を推進する。
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2(葬儀):登録者の三等身以内の親族が死亡したときは、区が認める葬儀社・宗教施設の基準葬儀方式(定額15万円?)により区の費用負担で行う。葬儀は深刻な問題です。何らかの方法で葬儀ができるようにしなくはならないでしょう。親が動けるうちに準備ができるその1つの方策です。
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3(公衆浴場):登録者は、区内にある公衆浴場を50%の料金で利用できる。登録カードによりスキャン記録し、残額は公衆浴場からの申請に基づき行政が費用負担する。区は高齢者の公衆浴場を半額で利用できる制度をつくっています。これをひきこもり当事者と家族に広げます。
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4(高卒資格の取得):登録者のうち高校卒業でない人に、高校学費と高卒認定試験に必要な学習・教材費および受験費を支給する(年齢制限なし)。高等学校等修学支援金も活用する。夜間中学を利用する場合(学費無料)は、教材費・交通費を支給する。
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5(住居の援助):登録者は、民間不動産業者を通して、住宅の紹介をうけ、区は一定額以下の家賃援助をする。
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6(食の援助):登録者に対し、区は食品販売事業者と協力し、食品ロス対策・貧困対策の一部として食の援助をする。
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7(医療・保健および心理カウンセリング等の利用): 登録者は医療・保健および心理カウンセリング等を利用するとき、健康保険、そのほかの支援助成制度によっても費用負担が一定額以上あるときは、区は基準により相当額を援助する。区の指定する援助団体等であるのが条件。
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8(その他):登録者の生活・健康・生命に直接的な負担がかかる場合は、区はそれぞれの事情に即して施設利用、サービス提供および援助金支給を行う。
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完璧な方法はありません。人は多様であり強制は逆作用になります。それを前提の提案です。
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(7)江戸川区をひきこもり対応の先進的な自治体にしましょう。
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今回のひきこもり調査(調査時期2019年9月~10月)は大都市における現状を示しています。
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江戸川区は東京都東部に位置します。この種の啓発的な取り組みは都内中心部から西部で行われることが多いです。
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不登校情報センターに相談に来た人の住所別の人数を示すと次のようになります。
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足立区44名、荒川区15名、板橋区41名、江戸川区85名、大田区64名、葛飾区80名,北区26名、江東区53名、墨田区38名、市川市49名、浦安市16名、習志野市16名、船橋市57名、松戸市60名…などです。総計は都内約1500名、千葉県は800名ほどです。(以前は新小岩、いまは平井に在住であり、関係者は最盛期の半数程度で家族等もカウントされています)。
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この数値が示すことは(交通事情が関わりますが)江戸川区でひきこもり対応策が功を奏すれば、首都圏に広がる要素があると思えることです。

2020年3月28日 (土) 15:34時点における版


不登校情報センターよりのお知らせ
ひきこもりの本人・家族への訪問相談をします

松田 武己さんのプロフィール

お名前 まつだ たけみ
ペンネーム 五十田猛(いそだ たけし)
年齢・性別・出身 1945年8月5日、朝鮮慶尚北道・大邱の生まれ。
男性、日本人。島根県大田市五十猛町の出身。
職業・肩書・趣味 不登校情報センター代表、、進路指導相談員。

不登校の相談、ひきこもりの居場所づくり・仕事づくり・自宅訪問など。
文章を書くこと、事典づくり、地図を見ることが好きなアスペルガー気質。

不登校情報センターのサイトは辞典でもあります。
所属・連絡先 不登校情報センター
〒132-0035 東京都江戸川区平井3丁目10-4
TEL 03-5875-3730
FAX 03-5875-3731
好きなことば 職業に貴賎なし。ただ心ゆたかな者と心まずしき者がいるのみ
(たぶんA・リンカーンのことば)。
URL http://www.futoko.info/zwp1/ (ブログ・引きこもり居場所だより)
ブログ「引きこもり居場所だより」総目次
メール open@futoko.info
TWITTER ツイッター(代表のツイッター)
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[1](松田武己)

フェイスブック
You Tube(動画) ひきこもり国語辞典 http://qq4q.biz/ORPL

ひきこもる理由と対応 http://qq4q.biz/ORFd

経歴 医療事務16年、教育関係編集者16年をへて1995年不登校情報センターを設立。
2005年不登校情報センターはNPO法人になり理事長。
著作・編著 『登校拒否関係団体全国リスト』(編著、1992年8月・初版、不登校情報センター編)、

『これからの仕事ガイド』(編著、1995年10月・初版、進路就職研究会編、桐書房)、
『登校拒否とカウンセリングルーム』(2000年4月、不登校情報センター編、桐書房)、
『引きこもりと暮らす』(五十田猛著、2003年3月、東京学参)、
『不登校・中退者のためのスクールガイド』(2004年12月、不登校情報センター編、東京学参)、
『不登校・引きこもり・ニート関連団体リスト』(2005年9月、不登校情報センター編、子どもの未来社)、
『ひきこもり 当事者と家族の出口』(2006年1月、五十田猛著、子どもの未来社)など 。
『不登校・中退者のためのスクールガイド(2020年版)』(2019年12月予定、不登校情報センター編、東京学参)
    

インタビューに答える
詳しい自己紹介
ザインタビューズ」、約500項目の質問に答えています。

モザンビク/F.エンゲルス/オーストラリアのGrahamくん

五十田猛の論文とエッセイ 五十田猛・論文とエッセイ

手紙類
松田武己の論文とエッセイ等の引用
五十田猛・無神論者の祈り
メンタル相談施設の適合基準ノート
居場所ワークでぼちぼち行こう
発達障害と進化論

その他

質問への回答⇒松田武己さんの回答
アスペルガー的な人への100の質問
講演「長期化する引きこもり支援活動」
斜視と色覚
松田武己への批判

情報更新年月 2019年12月

江戸川区ひきこもり調査報告書への意見書

 松田武己(江戸川区平井3-10-4)  不登校情報センター代表

これまで私はこのような行政機関の調査報告書を細かく読んだことはありません。ですからこの江戸川区ひきこもり調査報告書がどのようなレベルのものか判断する基準はありません。平均以上のレベルのものと受け取ることにします。 私は25年の間、ひきこもりの人に接し、彼ら彼女らに囲まれた生活をしています。報告書で述べられている彼ら彼女らの現状を繰り返すことはしません。確かに現状は社会問題になるレベルの状況であり、何らかの打開策が必要です。それはどういう性格のものになるかを考えるために報告書を読み、打開の方向を考えてみました。参考になればさいわいです。 ひきこもりへの対応策はうまくいっていません。多くの方がさまざまな努力と成果を収めていると認めています。しかし、行政の場面でも、社会運動の面でも、身体科学や精神心理的な理解でもうまくすすんでいるとは考えません。問題が難しいほど事態を論理的・実証的に説明するのは大変であり時間もかかるのでしょう。25年以上かかわる私もその上手く理解できず、対応できない1人です。

(1)現状の対応策、特に社会や行政面での対応策をごく手短に紹介すればこうなりませんか。 ひきこもりとそれにより派生したことや周辺事態に困った人が助けを求める。それが社会問題と感じる規模になり、行政的な対応が求められる。行政的は対応が始まったのは2000年以降としましょう。 家族会(親の会)と当事者の会は90年代までに生まれ始めています。いまはそれが居場所として認められるところもあります。不登校から関わった親の会がひきこもり家族会に様変わりした所もあります。 まず家族が相談に行きます。相談先は保健所、精神保健福祉センター。民間ではカウンセリングや医療機関がこれらに先行します。 次は(たぶん並行して)技術訓練や資格取得の教育機関です。ハローワークにも行った人がいると思いますが、そこでの対応はもっと後のことです。 生活保護の福祉部門には早い時期にこれらの相談が混ざっていたと思います。民生委員・社会福祉協議会などは早くからかかわっていたはずです。町中の不動産業やアパート経営の人にも事態を察知していた人はいました。 行政などの対応には、発達障害支援法、ニート対策、地域若者サポートステーション、(若者自立塾というのも一時ありました)などができました。2016年施行の生活困窮者自立支援法にひきこもりが対象に加えられました。江戸川区ではくらしごと相談室で対応しています。 これらの総体の取り組みにおいて、ひきこもり対応は成功していないというのが報告書内容です。 今回の報告で目に付くのは、関係機関(民生委員)や区職員(ケースワーカーと保健所)からの声です。区の広報などでは「相談に来てください」としていますが、特に長期のひきこもり経験者(高年齢化した人)への決め手となる対応策は見えません。

(2)関係者の現状を要約すると次のように理解できます。 ① 当事者の状態像は3点に象徴できます。=どうしたらよいかわからない。就労を強要させそうな不安。気軽に話せる場が欲しい。 ② 家族は次のようになります。=相談したらたらい回しされる不安がある、同じ悩みを共有できる場がほしい。 ③ 行政・関係機関の状態はこうなります。=対処方法がわからない・対処部門がわからない(相談したが具体的な方策はなかった)。 多くのことばと数字が並ぶ報告書からこのように事態を要約するのは偏っている、一面的と思うかもしれません。これに付随する周辺のことばを多くするより、省略して考えたほうがわかりよいと思えます。

(3)今回の調査報告書から、この状態に対してどのような方向が提示されているのでしょうか。 報告書には数字のまとめがありますが、当事者についてはそれば限られた範囲の人のものです。ことばで表現される自由意見があり、それが参考になります。報告者はそれらをいくつかの項目に分けて整理しています。また当事者の年代別、同居家族の有無、ひきこもり状態の期間の長さ別にまとめています。ここでは項目別に「求められていること」が並べられているのでそれを紹介します。 私の意見書は20代後半から40代のひきこもり当事者を想定しますので、年代別・同居家族・ひきこもり期間は省きます。ただし、省略した部分や当事者・家族等の自由意見(25-28ページ)、関係機関の自由意見(37-40ページ)、区職員の自由意見(48ページ)も照合しました。報告書はおおかた公正になっていると判断します。 分けられた項目は、相談先、支援、行政の在り方、経済的な不安、家族の負担、情報の6項目です。それぞれのまとめを紹介します。近回の調査報告の提案につながるものと考えます。 ①〔相談先〕 当事者:年齢・経歴関係なく気軽に相談できる窓口 、あらゆる不安について相談する機会 、当事者同士で話しをする機会・居場所。 家族等:家族としての悩みを相談する場所、同じ悩みを共有し情報交換できる場所、他人の目を気にせず相談できる場所、当事者を支えるための知識を得られる機会。 関係機関:最初の相談窓口の一本化、インターネットや広報紙を用いた相談先の周知、当事者以外からの相談でも対応できる体制。 区職員:あらゆる不安について相談する機会・居場所、ひきこもり専門窓口の設置、気軽に相談できる窓口。 ②〔支援について〕 当事者:【就労】 求職活動・就労をするための訓練、その人に合わせた段階的な支援、病気・障害でも働ける就労先の案内、在宅での就労方法の提案。 当事者:【就労以外】 会話や体力作りを目的とした訓練、日中活動やボランティア活動の提案。 家族等:家族以外の協力者、外へ連れ出すきっかけ作り、コミュニケーションの取り方を学ぶ場、社会とのつながりを持つためのきっかけ作り。 関係機関:原因に応じた支援方針の策定、専門性を有した職員の配置、成功事例の集約、自立に向けた支援方法の体系化、支援方法に関するフローチャートやマニュアルの作成、支援方法に関する講習会の開催。 区職員:関係機関との連携体制の確立、問題意識の無い当事者、家族等への対応、その人に合わせた段階的な支援、当事者家族への支援方法を学ぶ場。 ③〔行政の在り方〕 当事者:ひきこもり専門窓口の設置、窓口の広報活動、行政側の意識改善。 関係機関:行政で対応できることとできないことの明確化とその周知、関係機関と連携協働できる体制づくり。 ④〔経済的な不安〕 当事者:経済的な不安を相談できる場所、区貸付・生活保護制度への案内と申請補助、医療費・カウンセリング費用の助成。 ⑤〔家族等の負担〕 家族等:支える側の親族への支援、ひきこもりに対する知識。 ⑥〔情報〕 関係機関:情報共有できる仕組みづくり。

以上で、互いに重なるものもあります。これらを自由意見と照合しました。自由意見は、類似する意見を含めて件数が示されています。どれだけの人がそういう意見を持っているのかを示す貴重な内容であり、意識してみましたが、私の意見書では略します。 これらの全体をみれば、現状と大差ない対応策になると思います。それでも貴重な内容が含まれていると認められますので、そこを手掛かりに私の意見を提出します。

(4)行政面で現状を変えるための発想には2つの点が必要だと思います。 ① 1つは当事者が動く(相談に行くことも含めて)こと自体が、直接的な利益になる方法を提示することです。 ⇒(6)に続く。 ② 区の相談先は多様であるのがいいことですが、ひきこもりに関する最終的な担当課が必要です。 ⇒(5)に続く。 この2つの面についてそれぞれ要点の説明をします。

(5)区の機構に「ひきこもり対応課」を設けます。 専門の担当部門を設ける点は報告書にも示唆されています。そこを具体的に展開します。 ① ひきこもりに対応するセクションはいろいろあるけれども、決定的な対応部署がない状況を解決しなくてはなりません。区長直轄の「ひきこもり対応課」を設けます。 対応策がない中で「ひきこもり対応課」を設けても何もできないと思われるかもしれません。あれこれの部署で中途半端になり、たらい回しになっている件案を最後的にここに集め、その解決策を考え出す部署にします。ここに集まる相談者は、固有名詞(登録制)で少なくとも数年間は追跡調査をします。登録者にするように目指すので、以下では登録者とすることがあります。 ② 「ひきこもり対応課」の1部門に居場所運営部を設けます。ここでいう居場所は当事者の集まる場と家族会、および両方を併せ持つ性格のものです。年数回以上の会合を想定する居場所です。 区は居場所を紹介するだけではなく、自ら居場所を運営する立場になります。この部分を業務委託等により進める策はありますが、それを受ける事業者自体を養成しなくてはなりません。 すでにある、当事者の会や家族会との協力も含みます。 ③ 訪問サポートの支援部を設けます。 訪問サポート活動をする民間事業者の申し出があれば、訪問を受ける側に一定の補助を行います。 ひきこもり経験者のうち有志をひきこもり訪問者に養成します。 民生委員、ソーシャルワーカー、保健師を含むひきこもり訪問者を養成します。 ひきこもり訪問者は、ひきこもり相談の登録者に計画的に訪問をします。 ④ ネットの推進部の設立を検討します。 ひきこもり状態にある人が社会的活動、経済的な活動、創作的活動等の機会が得られるようにインターネット利用の応援をします。ネット利用技術の学習・研修機会の提供、機材の利用機会のサービス、機材購入の援助等を検討します。 ⑤ 区内の求人難・後継者難の事業者(特に小規模事業者)と協力し、人材発掘につながる職場見学・説明会、実習・研修会などの機会を持ちます。いわば事業者による作業を伴う居場所づくりです。事業者がこの趣旨の機会を開催できるように協力、助言と援助をします。相談した登録者に対し、幅広く、定期的・機会に応じて粘り強く案内し、参加を勧めます。これは長期の取り組みであり、区の産業・経済政策です。

(6)動くことが当事者にとり直接的な利益になる方法 当事者が自ら動きだす人は少ないという調査報告は事実ですが、事実の全部ではありません。ひきこもりの特徴に1つに、動き出した人には自ら支援者側に回る人が少なからずいます。「人から言われてやるのに懐疑的であり、やるのなら自分の意志でやる」、極端に表現しますとこれが反面の事実です。全国若者・ひきこもり協同実践者交流会という全国組織があり各県持ち回りで毎年集会を開いています。始まって15年以上ですが当初は「支援者交流会」でした。ひきこもり当事者がこれに参加して支援者の側に立つようになりました。「協同実践者交流会」に名称も変更しました。これが象徴的なひきこもりの特色を示しています。彼ら彼女らは自分の意志を社会的に抑圧されてきた成育歴に関係するはずです。その動き出すエネルギーを引き出すための施策が、もう1つの視点です。 思いつく範囲で直接的な利益になる方法を列挙します。 1(交通費):区が指定する援助団体等が開催する会合、相談機会等に数回以上の参加を確認した登録者に交通費を支給する。参加しやすい条件づくりと指定する援助団体等の利用を推進する。 2(葬儀):登録者の三等身以内の親族が死亡したときは、区が認める葬儀社・宗教施設の基準葬儀方式(定額15万円?)により区の費用負担で行う。葬儀は深刻な問題です。何らかの方法で葬儀ができるようにしなくはならないでしょう。親が動けるうちに準備ができるその1つの方策です。 3(公衆浴場):登録者は、区内にある公衆浴場を50%の料金で利用できる。登録カードによりスキャン記録し、残額は公衆浴場からの申請に基づき行政が費用負担する。区は高齢者の公衆浴場を半額で利用できる制度をつくっています。これをひきこもり当事者と家族に広げます。 4(高卒資格の取得):登録者のうち高校卒業でない人に、高校学費と高卒認定試験に必要な学習・教材費および受験費を支給する(年齢制限なし)。高等学校等修学支援金も活用する。夜間中学を利用する場合(学費無料)は、教材費・交通費を支給する。 5(住居の援助):登録者は、民間不動産業者を通して、住宅の紹介をうけ、区は一定額以下の家賃援助をする。 6(食の援助):登録者に対し、区は食品販売事業者と協力し、食品ロス対策・貧困対策の一部として食の援助をする。 7(医療・保健および心理カウンセリング等の利用): 登録者は医療・保健および心理カウンセリング等を利用するとき、健康保険、そのほかの支援助成制度によっても費用負担が一定額以上あるときは、区は基準により相当額を援助する。区の指定する援助団体等であるのが条件。 8(その他):登録者の生活・健康・生命に直接的な負担がかかる場合は、区はそれぞれの事情に即して施設利用、サービス提供および援助金支給を行う。 完璧な方法はありません。人は多様であり強制は逆作用になります。それを前提の提案です。

(7)江戸川区をひきこもり対応の先進的な自治体にしましょう。 今回のひきこもり調査(調査時期2019年9月~10月)は大都市における現状を示しています。 江戸川区は東京都東部に位置します。この種の啓発的な取り組みは都内中心部から西部で行われることが多いです。 不登校情報センターに相談に来た人の住所別の人数を示すと次のようになります。 足立区44名、荒川区15名、板橋区41名、江戸川区85名、大田区64名、葛飾区80名,北区26名、江東区53名、墨田区38名、市川市49名、浦安市16名、習志野市16名、船橋市57名、松戸市60名…などです。総計は都内約1500名、千葉県は800名ほどです。(以前は新小岩、いまは平井に在住であり、関係者は最盛期の半数程度で家族等もカウントされています)。 この数値が示すことは(交通事情が関わりますが)江戸川区でひきこもり対応策が功を奏すれば、首都圏に広がる要素があると思えることです。

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