本当はこんなんだったんだよー近況報告を兼ねて 2022年12月 S.N(匿名)
マツダさんへ いつも忘れたころに通信をおくってくれてありがとう。
今(ずっと?)キツい状況にあるのと、マツダさん直筆のメッセージに心動かされ、何か書いた方がいいんじゃないか、と思いペンをとりました。いつも文章を書く時はスマホなりで構成を考えた後、書きはじめるのだが、そんな事してる気力が無いので思いつくままダラダラ書く事も許してほしい。漢字も少ないし字もきたない。よろしくたのむ。(注:ひらがなのいくつかを漢字にしました)
不登校情報センターは、そもそも当時、サロンとよばれる場所にSMさんと会って一人で行く勇気が無いからいっしょに行こう、と誘われたのがきっかけ。その後SMさんとは長い付き合いになるんだけど、今は連絡とっていない。あのころとにかく人がこいしかった。人脈が無かった。どこでも顔を出そうと思っていた。ひきこもりとは無縁だった。むしろ強迫的に毎日外へ出た。通信で「インラインスケート」にふれているが、ぼくがみんなを誘った気がする。センターにはヒマさえあれば通い、SMさんと音楽の話をしたりTA君と、また彼ともけっこう付き合うのだが、しばらく前に決裂している。TA君ともたわいもない話をした。
当時、最近までだが、虚勢をはって、とにかくいきがっていた。何も見えていなかった。見た目と共に性格も強がって無理をしていた。多分無理をしていた事にすら気付いてなかった。そのくらいクスリと強迫観念にあおられていた。完全に強迫性障害だった。何かにがんばる事か、死ぬ事か両極端に大きくゆさぶられていた。センターはちょっと自分には物足りなく感じていた。
そのころTKさんと出会い、そのままWKさんのフリースペースに入りびたる事になりセンターとは疎遠になった。同じころ渋谷で花を植える活動をしているボランティア団体にも顔を出すようになる。その関係は今もつづいている。お世話になっている。
その間、何度も大量の薬づけ治療から抜け出そうと、薬を絶ってはまたもどすということをくり返している。最近、よき治療者と出会い、計画的に薬をぬいていったところ、想像以上に精神的にまいってしまって、ここ数か月、さんざんな日々をすごした。
結果、薬ぬきではやっていけない事を自覚し、薬をぬくことは二度としないと思う。前よりは少ないが、少しのんでいる。
いったい自分は何の障害なのか? ただのウツではない。ただの強迫性障害でもないと思う。
ずーっと東洋武術をやってきた。今もやってる。支えだったが、苦しみの原因でもあった。とにかく練習しないと一日が始まらなかったし、おえる事もできない。小さいころから不安が強く、その不安を、他人を「腕力」で黙らせる力をもつ事でごまかした。最初、筋肉を鍛えてのりきった。小学校卒業のころには疲れきっていて、そのまま中学二年の夏休みで不登校になった。身体の成長が遅かったため、弱さを感じ、バランスを崩した。もともと無かった自信が地に落ちた。
そこからはい上がるのに3、4年かかった。ひきこもりと言えるのはこのあたりだろう。心底自信を失っていて、「不潔恐怖」になったうえ、食べるのは悪だと思いこみ、食事を削った。
あのころ身長は今と同じくらいあって175㎝で体重は40.5㎏まで削った。もう死に手がとどく数字だった。食べられないし、物をさわれない、さわってほしくないという状態で、奇跡的に知り合いのつてで武術を個人的に習った。17、8歳の時だと思う。
その後、薬物治療を望んで始め、19のころ世の中デビューした。
本来、コミュニケーションでなんとかするべきところを、物理的な「何か」で解決してしまおうとしてしまったのが間違いだった。その思考は9、10歳のころから変わらず、今も身にしみこんでいる。
でも本来攻撃的な人間ではなく、臆病なので、多分に負荷をかけつづけている。なかなかその思考パターンというか、モデルからぬけられず、今も苦しんでいる。失うばっかりの年齢になり、キツい。成り立たなくなっていく。
仕事はとにかくしたかった。25、6の時にうまい具合にヤマトの倉庫で働けた。一年ちょっと。何でやめたのかは覚えていない。34歳ころ、ちょっと離れた同じヤマトの倉庫で働き始めたが、4日でやめる。通い続ける事に精神的に、ものすごい苦痛を感じた。以来、働こうとはしていない。どっかの童貞男が、セックスすれば全てうまくいくと思っているように、自分も「働いてさえいれば」と強く思う。とにかく仕事について、人並みになりたい。強く思う。そうすれば全てうまくいく、と。でもなかなか踏み出せないし、現実的でない。
マツダさんにいいアイデアがあれば、おねがいしたい。
44歳現在、無職で障害年金をもらって20年くらいになる。
人間関係について。彼女とよべるものは二人いた。一人目は20代中盤にフリースペースで知り合った女で、当時大量の薬のせいか、セックスが全く楽しくなく一年くらいで終わった。
二人目は今もお付き合いしている。年上でアタマがよく、とても愛してくれる。でも、薬でさんざんアタマをゆさぶられたせいか、単純に愛せない。自然の感情が欠如しているようだ。これは友人関係にも言えることで、他人をおもいやる事が今いちできない。先ず自分、と考える。他人のため、というのが全く理解できない。だからマツダさんのような仕事もわからない。恩もすぐ忘れる。やってもらった事には、すなおにありがとうと言えず、通りこして「申しわけない」と感じてしまう。これは自己肯定感を際限なく下げる。
THさんの事にもふれておこう。THさんには、ただ上へ上へと努力することしか考えていなかったころ、その場で楽しければいい、というようなメッセージを感じた。みんなでインラインスケートをしていたころ、うまくなる事しか考えてなかったが、割り込んできたTHさんがちょっとやっただけで「いいや、おれは」と楽しそうにしていた。「こういう楽しみ方があるんだ」と思ったものだ。亡くなったのを知ったのはずっと後だった。いいオトコだった。彼女もすてきだった。残念なことをした。
なんかキタネー字で本当にダラダラ書いてしまった。マツダさんは少しはオレの事を覚えているだろうか? 本当はこんなだったんだよ。知ってたよな、多分。まずSMさんに感謝。いなければセンターも知らなかった。たくさんの人と会えた。TA君にはひどいことを言ってしまった。なんもわかってなかった。無神経な言葉をかけてしまった。機会があれば謝りたい。申しわけなかった。
センターを作ってくれたマツダさんにも感謝している。直接なんかしてもらったおぼえは全くないが。むしろ妙にしめつけられて、あおられて、いきがっていた自分は、当時、たくさんの人を傷つけたのではないかとさえ思う。それも申しわけなかった。場をあらしてしまったのではないか、と。
ふり返れば、申しわけないでいっぱいの人生。今もキツい。本当にキツい。でも人生は簡単に降りられない。死にたい。死ねばそれに越したことはない。みんなそう思っているのではないか? 人間は生きるようにはできてない。最後までまとまりがない。これはマツダさんだけにとどめといてくれ。
ホント、ダラダラすみません。何か「たし」になれば。もう一度、お会いしたい。
まっちゃん、元気で。
追伸 S.N
返信ありがとう。ただダラダタ書いて終わらせるつもりだったが、やはり何かを期待していた。うれしかった。とても。ありがとう。本当にありがとう。
キレイな紙にキレイな字で打ち込んである自分の生々しい文章にショックをうけた。
何度も読み返し「こんなんなのかオレは? こんなんなのかオレは??」と涙が出そうになった。なかなかの名文じゃないか。キタナイ文字を起こしてくれてありがとう。たった数週間前に書いた自分の言葉がこんなにもささるとは。理路整然とならんだ文字ならなおさらで。お手数おかけしました。
会報への掲載の件ですが、OKです。が、疑問と、いくつかの要望があります。当事者(このよび方には昔から違和感がある)がこれを読んで、はたして勇気づけられるか?という問いです。「どーしようもない自分だけど、先には光がある…」と思っている人たちに、どーしようもない自分には、どーしようもないが延長された未来しかない、と思いこまさせるようでピンときません。自分の人生のように。マァ松田さんの判断にお任せしますが。
近況報告として、最近、医者から「自己愛がたりないんじゃないか?」とのご指摘をいただいた。自分としては真逆だと思っていたので意外だった。今さら何をしたら「自己愛」が高まるのか知りたいものです。何かいい考えはありますかね?
S.Nくんの近況報告について 松田武己
私信として松田に伝えてきた近況報告に感動して、他の人にも読んでほしいと考え、S.Nくんに会報にも載せたいという連絡をしました。会報への掲載にはOKをもらいました。S.Nくんからは、近況報告に出てくる個有名詞の扱いとともに、いくつかの要望がありました。
1つは、これを読んではたして勇気づけられるのか、「どうしようもない延長された未来しかないと思いこませるのではないか」という心配。
もう1つは、S.Nくんが担当医から「自己愛がたりないんじゃないか?」と指摘され、今さら何をしたら自己愛がたりないのかという質問です。
S.Nくんの近況報告に感動したのに続いて、この「会報掲載OK」の返事にも私は感動しました。何度も読み返し「こんなんなのかオレは?」と自分を認め、ショックを受け、涙していること——そこにS.Nくんの真実をみた思いです。
自分を認めるとか自己愛を高めるには、自分の真実に向きあうことが出発になると思うのです。ときにそれはカッコわるいものだったり、恥ずかしいものだったりもします。形が立派で言葉が飾られたばかりではこうはなりません。S.Nくんはその実例を示してくれました。読む人にはきっと勇気を与えるものと思います。
S.Nくんへの返事などがあれば松田宛に送ってください。転送します。