気になる40ー50代になる人の心身状態(松田武己)

不登校情報センターを設立して28年になります。80年代の半ばに、不登校という問題を知ってから40年近いです。実際に関わる人たちの中心は不登校というよりはひきこもり、または準ひきこもりという人たちであり、その人たちに囲まれた生活になってから20年以上になります。
多くのことを聞き、また見ることができました。各人個別の事情がありますが、その共通する背景に社会の動きがあります。社会の動きの一端がその人に力を及ぼし、その人の生活状況や気性・気質によっていろいろな姿形になって表われるのです。周囲の事情という外部条件と本人の体質・気質という主体条件の組み合わせからひきこもりが生じ、しかも多様な個別状況を表わすのです
20年前に関わったひきこもりの人たちも40代から50代になります。10年ぐらい前には、「人は30代の半ばをすぎると自動的に(あるいは強制的に)大人になる」ということをよく口にしていたものです。先日、親の“老い”が見えてくるのがこの年代という納得できる意見を聞く機会がありました。
その前には、ひきこもり経験者も「(心の内では)30歳までには何とかしようとして動き出す」ことが多いと話した時期もあります。
その前には……いやこのあたりでやめておきましょう。
要するに私は、関わった人たちの様子をみて、何かを感じとり、その時期のある傾向を言葉にしていたのです。それぞれの時期の言葉は、1つの傾向を示すものです。今でもある程度は通用すると思っていますが、もちろん全てを言いつくすわけでもありません。
さて、40代から50代にすすんできたひきこもりの経験者に対して—―もちろん全ての人に対してではなく、私が関わっているなかでの特徴的な人に向けて何を言えばいいのでしょうか? それを考え、参考意見を探しています。
いろいろなタイプ・状態がいるなかで、私がとくに気になるのは十人前後の人です。すっかり連絡がとれなくなっているのに、「その後の様子」が気になる人もいます。自ら命を断った数人もいます。彼らは私が気にしている人たちのさらに先の姿を予見していたのではないか、と思えるのです。

4月の初めにネット上のブログであるお願いをしました。それをもう少し詳しくしたのが今回です。
(1)20代後半で亡くなったある人は、幼児期に虐待を受けていました。ある父母の集会受付をしてもらったとき、「私はここに来ている親たちに“こんなことしたってダメなんだよー”って叫びたいくらい」と言っていました。そのときその人の心身の中に何があったのか。おそらく言葉にはしがたい体内の異変、取り戻すことのできない何かを感じていたと思えます。
私はそれをひき出せませんでした。ひき出すにはもっと深い信頼関係と多くの時間が必要でした。その関わりを含めて本人がそれを明確にし、言語化できる状態になることが必要でした。それを言葉にできるとき、共にそれを受けとめ、理解し、受け入れる人が必要だったと思えるのです。
(2)受けとめる、理解し、受け入れるというのはたやすくはできません。解離性同一性障害(俗にいう多重人格)の人は、とくに幼児期に自分では受けとめられない難題を受けたことが要因になっていると知りました。
私の関わった人にもこの状態の人がいました。一見元気ですが、何かの拍子に、落ち込み、寝込み、動けなくなります。ウツ症状で過眠という、聞く側の人にわかりやすい言葉で自分の状態を伝えます。聞く人は何となくわかった気になるでしょうが、本当のところは伝わっていないし、伝わらないと知っています。だから日常のわかりそうな言葉を使って周囲の人を安心させるのです。
この人の奥深くにある、本当の苦しみ、心身の問題は何なのでしょうか。この人とは時間をかけて聞く機会を持ちましたが、それに到達しないまま連絡がとぎれました。すごい悔しさと申し訳なさが今も私には続いています。
40代から50代になったひきこもり(ひきこもりという言葉さえ伝えやすい言葉になりました)の人たちの奥にある心身の問題とは何なのでしょうか。私の手元には上の2人から聞いた多数の記録、その1人と文通した人から贈られた厚みのある手紙類があります。それらを改めて読み返すことは大いに参考になると思います。しかし同時にそれでもなおとらえきれないものがあると予測できます。
私の周囲にいる気になる人たちは、このまだ私がつかみえない心身の奥にある問題を抱えたまま、ある人は一見元気そうに、ある人は普通に生活をつづけるためにその課題という困難を忘れたふりをし、おし隠していると思えます。
昨年11月手紙をよこしたSN君の手紙を会報とこの「ひきコミWEB版」に載せました。「いったい自分は何の障害なのか? ただのウツではない。ただの強迫性障害でもないと思う」と彼はいいましたが、その先を言葉にはできません。
それは多くの医学者、身体科学の研究者が取り組みながら、なお届かないテーマのようです。例えば、ウツ症状、愛着障害…などはそうです。体験した当事者の深い経験、その結果としての今の状況を深く知ること。加えて身体内部を多面的に観察できる装置が必要であると予測できます。私にはその条件がないので私の手元でこの全体を明瞭にすることはできません。
今できるのは私が関わり知りうる極限まで近づくことです。その先の深いところはまだ言葉にし難いので、比較的わかる範囲の言葉でよびかけます。この言葉の先の深い何かを明瞭な言葉にする協力をさせてください。
                                     
ひきこもり経験者で次の経験をした人からお話を聞きたいと思います。
*対象はひきこもりと近接の心身状態(睡眠障害・摂食障害・オーバードーズ・対人恐怖などの経験者)の人であり、15歳以上の人(年齢上限はなし)とします。
(1)ひきこもりを経験した人でいわゆる「底着き体験」「底打ち体験」をした人。ひきこもり状態が深刻になり、わずかに動くのも困難というほどの経験をした人です。その時期とその後の様子。
(2)薬依存/薬依存を恐れて「強制的な断薬」を実行した人。
医師などのいうことに反して実行した人を考えています。
*私(松田)はこのような方法を推奨しているのではありません。
(3)ウツ状態から「神秘体験」を経験した人。
非常に感動的な「宇宙と一体化した」「光に囲まれた」「神の世界を体験した」などの言葉で表現することが多いようです。それまでの過程や経験談です。
(4)上記以外の大変な心身状態を体験した人(適応能力をはるかに超えた苦痛を体験した結果の解離性同一性障害=俗にいう多重人格など)。
*体験は文章に書き送付していただく(FAXも可)、メールで送っていただく、電話で話を聞かせていただく(1回では済まないことがあり、基本は数回の電話)方法になります。電話は、予約にしますので一度事前に連絡ください。
これらのやり取りはいずれも基本的には公表する予定はありませんが、公表等が必要になれば公表部分を事前に合意してからにします。お名前・住所等の個人情報部分は公表しません。

      

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