(2)就労以前に生活リズムづくりが必要(素案テキスト2)

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内閣府調査は長期の引きこもりの深刻な状態への対応が重要だといいます。「大人の引きこもりを考える教室」でこれまで話してきたことの多くはこの問題です。
親の会の運営に関して先日、母親Oさんが書いてきました。「30代後半のひきこもりの娘と息子の母親です。希望テーマは①生活リズムの作り方、②ネット依存をどうしたら、③親亡きあとの生活…など。とりわけ③について日々悩んでいます」。
これは「長期の引きこもりの深刻な状態」の典型だと思います。そこには就労が前面の目標ではありません。まず目標になるのは「生活リズム」の確立です。
親がこのような目標を持つに至るのはそれまでの家族内でのいろいろな出来事の結果でしょう。子どもの状態と必要なこと、当面の目標をどこに置くのか、現実をよく見てきたことがうかがえます。
引きこもり経験者のSくんは当事者の側からこれを見ました。「『ひきこもり理解と支援の促進』学習会における当事者の報告」(2015年1月)での発表です。報告は仕事、社会復帰、支援者、高年齢当事者が困っていることが含まれます。
初めに「仕事、社会復帰」をあげています。「一人で黙々と作業ができ、人間関係の薄い、あまり監視や干渉のない現場が向いている」。これはSくん自身の体験と情報センターなどで実際に接触した元引きこもりの経験を織り込んだ要約です。親なきあとの問題では住宅問題が重要テーマになります。
これとOさんの提示とを合わせてみると、長期化し深刻化している引きこもりの対応のポイントが見えてきます。いきなり就労を迫るのは引きこもりをよく知らない人です。彼ら彼女らは社会の異様さ感知し、無意識のうちに社会のゆがみに巻き込まれるのを回避してきたのです。社会的な引きこもりとはその結果です。
現在の労働状態を見ると、一方ではブラックと呼ばれる長時間労働が蔓延し、他方ではそれを回避した結果の「働くに働けない」人が広がり、両極に社会の難問が置かれています。いずれの側にも個人的な性格や機会の巡りあわせや運不運が関係しますが、大きな社会的な背景があることを考えないわけにはいません。
長期化し深刻化している人はどうするのか、対応策とか支援策はどんなものか、それはきわめて個別的になります。そのなかで母親Oさんが提示している生活リズムづくりは多数の人に有効な提案です。家族以外の人と関わるために定期的に会う機会、定期的に外出する機会が生活リズムづくりのテコになります。訪問活動や居場所が設けられるのはその具体策です。
そしてある状態に到達すれば当事者はその人なりのスタイルでこの生活リズムの主体に移行します。支援を受ける側から同伴者や企画者になるのはその方法です。興味・関心(ネットや介護などの福祉、創作系が多い)を生かす人も少なからずいます。
引きこもりに関しても社会全体から見ると、いろいろな社会問題が同時に深刻さを増しているなかの事態です。周辺の社会問題、社会運動と並行しながら協力して取り組む時期に入りました。新しく法律や制度ができても自動的に有効になるのではありません。まずは法律や制度として確立する、社会的に合意していたことを当事者・弱者の視点から変更を求める、それらを当事者側が望む方向で運用するように働きかけるのです。社会の異様さやゆがみはそれに気づいた人が取り上げていくしかないのです。
生活保護に加えて生活困窮者自立支援法が成立しました(2015年)。ほかにもいろいろな制度ができ動きがでています。それらの法律も運用や条件の適用などをこちらから働きかけない限り、それを扱う行政者からは活用できる道は示されません。ある人の動きを考えたとき、実際にそうでもしなければ前進しない壁を経験しています。
不登校情報センターの親の会の運営を改善・向上させたいと思うのはこの点に関係します。引きこもり個別の問題を探りながら、周辺の社会問題と関連づけながら前進を図ることです。
不登校情報センターの親の会は、グループ相談的な面を継続しながらこれらの視点が必要になります。それは高齢化している親では難しい面もあります。家族の参加、当事者の参加が必要とされます。KHJが親の会から家族会に変わったのは賢明な選択だと思います。
なお子ども期の不登校に関しては、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案」が浮上しています。子どもの貧困問題として子ども食堂や学習支援が社会的な運動として広がっています。この時代の流れですが詳しいことは省略します。

〔『ひきこもり理解と支援の促進』学習会における当事者の報告〕
http://www.futoko.info/…/%E3%80%8C%E3%81%B2%E3%81%8D%E3%81%…

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