中野信子『サイコパス』(文春新書、2016年)を読みました。
感想としては思ったほどの刺激的な内容ではありませんでした。
<松田武己の“サイコパス度”はどれくらいなのか>を見ようとしたところもあったのですが、低い自己評価になりました。
著者によるとそういう自己評価は当てにならないそうですが…。
サイコパスが犯罪と結びついて理解されてきた経過があるけれども、実はもっと幅のあるもののようです。
ざっと100人に1人ぐらいは該当する程度の理解が必要らしいです。
しかし。『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM5)にはサイコパスの記述はありません。
統一診断基準がないなかでの各種の研究の紹介です。
中野さんは科学者らしく慎重であり、研究された論文を紹介する形をとり、自分の確信したことを基礎に展開していません。そこは私的には評価できるのですが、逆に刺激が少ないのはそのためかもしれません。
たとえばマザー・テレサ。ある人の書かれたものを紹介する形でこう言っています。
「博愛主義者とは、特定少数の人間に対して深い愛情を築けないサイコパスなのかもしれません」(114ページ)
マザー・テレサがサイコパスと言うのではありません。
またこれでマザー・テレサの全体を語ったとは言えないのですが、納得できるところはありますね。
この本に書いてあることではないのですが、殺人を犯してバレなかった人がとても人情溢れる人助けをつづけた、という話を読んだことがあります。
罪滅ぼし、というところでしょうか。
懐疑的すぎて博愛精神に富む人全体を”怪しむ”ようにはなりたくはないですが、人間の奥行きは深いことを教えてくれます。