昨年度の小学校・中学校・特別支援学校の不登校生徒数が29.9万人と発表されました。10年前の2倍で、この間には2016年の教育機会確保法の成立、2020-23年のコロナ禍という大きな要因があり、国民の意識に大きな変化が生まれてきたと想像されます。
不登校生の2倍化という事情をみて学校教育を担当する文科省が、学校教育の崩壊を予感するのでなければ、よほど感覚が乏しいといわなくてはなりません。
私の知る範囲で、文科省、教育委員会の対応では次の点を指摘できそうです。
(1)自治体教育委員会の動きは、全体として緩慢に思えます。学級定数を35人以下にすることと、特別支援学校を広げようと努めていますが、教員不足の現状もあり苦労しています。
(2)自治体は近辺のフリースクールに通う小中学生に学習支援費を支払うところが少しあります。まだフリースクールを設立しようとする教育団体に、無料塾などの設置を業務委託などの形で勧めたところがあります。この2つの方式が少数の自治体で生まれています。
(3)校内フリースクールを設けようとする自治体があります。
東京都教委は2023年4月から公立高校でこれを進めています。実施状況は内容も含めてまだよくわかりません。全国的には小中学校を含めて校内フリースクール設置の動きが進められています。これまでの適応指導教室が学校外に子どもを小中学校に在籍させたまま利用する方式とは違います。
校内フリースクールは学校内に設けるものです。その実際の運用は多様になるものと想像されます。肯定的なところも、否定的なところも生まれると推測できます。
私の知り得る範囲では、校内フリースクールは神奈川県と大阪府の公立高校で数年前に始まりました。これを文科省、教育委員会が目にして、不登校への対応策として導入を考えたものと推察します。生徒を同じ校内に置くことで、現行の学校制度を維持する試みになると考えたのでしょうか。肯定的な面は、これにより学校内の教育内容が変わるきっかけになるかもしれません。
しかし多くの教職員にとってこの変化は予想外と思われ、複雑な問題が発生すると予測できます。その解決方向によっては否定的な面が顕在化します。これはさけられないのですが、発生の規模(程度)や広がりによっては現行の学校制度が大きく崩れる可能性があります。
不登校生・中退生を長期にわたり受け入れてきた高校、不登校特例校、とくに寄宿寮制の高校は、この面で肯定的な見本になると思われます。先駆的な教育活動の内容を学ぶことにより、校内フリースクールを設ける学校がいくぶんは円滑に広がることを期待します。