平井駅北側にタワーマンションが建設中です。完成すれば29階100m以上とのことで、外見ではほぼ頂上近くまでの骨組みはできています。近くに定食屋「松のや」があります。先日昼どきに入ると、建設作業中らしい人がいるので、「あのビルを建設中ですか?」と聞くと「そうです」と答えてくれました。ベテランの建設作業員で、施工主のゼネコンの下に参加したひとり親方です。
仮設のエレベータで上昇すると屋上は風が強く陽差しがきついと言いながら、様子を話してくれました。作業現場には外国人が多く入っています。それでも「仕事は途切れないが、日本人の建設従業員が少ないのが心配」といいます。そして「角さんがいてくれたら…」と一言。角さんとはかつて日本列島改造と称して建設を進めた総理大臣、田中角栄政権であり、日中国交も回復した人です。
自民党政権は当時、土木建設を全国展開することで、日本の経済成長を図った、それを思い起こす言葉でした。金権政治で倒れた自民党角栄政権ですが、経済成長は図っていたのです。それが90年代に入って衰退しました。それに代わる経済成長の柱を見出し得なかった。むしろアメリカの言いつけに従い国内資産をアメリカに開放し、国内産業を制限、それが今日の「30年に及ぶ社会の停滞につながった」と改めて思いました。建設作業現場に外国人が多く、日本人が減った一因はこのためです。
土木建設業に関しては、施工主は「大型マンションばっかり作っている」とのことです。道路網、ガス・水道などインフラの整備とメンテナンスによる建設産業の継続し技術者を養成する。このベテラン作業員の言い分です。一理あると思いました。
成長の中心には社会福祉事業になる——これはこの作業員の言葉ではなく、話しを聞きながら、私が考えていたことです。「コンクリートから人へ」というのは2009年成立の民主党政権が言ったことですが、土木建設業を後回しにして国内の技術者・労働者が大幅に減るという問題を起こしました。介護、子育て、保育、医療、福祉関係…などのサービス産業を経済成長の中心に移行するにしてもバランスと内容の適格性は必要です。