インド経済の「非公式部門」から考える

気になる記事がありました。インドで国政総選挙が実施中で、それに関連するものです。
インド経済は「非公式部門」(インフォーマルセクター)と称する部門があり、インド労働者の9割近くがここに分類されています。それは「靴磨きを含む露天商や建設現場の日雇い仕事、家事労働など、行政の指導を受けない小規模な経済活動」とされます。
ILO(国際労働機関)はインド労働者のうち、非公式部門に従事する人……は、「法律に守られず、低賃金や健康問題に苦しむ人も多い」といいます。紹介された靴磨きの人(24歳、首都ニューデリーの商業地区)は月15000ルピー(約28000円)で「生きるだけで精いっぱい」で、税金は納めず、社会保険にも加入していません。
気になるのは非公式部門にある「家事労働など」です。これは私が述べてきた無償の家事労働とは同じではないと推察されます。
途上国においては、市場経済の広がりが限定的で、自給自足的な生産(農産物、衣類などの生産)が広範にあり、廃品回収と再生、物々交換も多いと思われます。これらも「家事労働など」に含まれるのでしょう。
IMF(国際通貨基金)では、GDP(国内総生産)にこの非市場経済部分の活動をカウントしていると思われますが、その算出基準はどのようなものか。それは「家事労働など」を考える時の参考になるかもしれません。

記事ではまた次の点が紹介されています。
『時事通信の取材に応じた経済学者のアルン・クマール氏によれば、国内生産への非公式部門の寄与度は約45%。非公式部門のデータを迅速に把握することは困難なため、公表されるGDPには実態が適切に反映されていないといいます。
同氏は、「非公式部門」の効率は大企業を含む「公式部門」と比べて低いにもかかわらず、公式部門と同等と想定して推計データが算出されていると指摘。インドの経済成長率には「上方バイアス(偏向)がかかっている」と説明しました』

このような「非公式部門」は、いわゆる闇経済との境界が不明のところもあると思われます。闇経済につながる部分は途上国に固有ではなく、日本での「サービス残業」や汚職・ワイロ、さらには政界の裏金と似ているところもあり、他国の事情とは言い切れません。これらは市場経済の発展とともに解消のベースが広がるわけですが、自動的ではなく民主化の動きや情報公開の制度にも左右されるはずです。
紹介した記事で非公式部門はGDPの約45%を占めると指摘されています。「家事労働など」は私が問題にしている「無償の家事労働」(家庭内家事労働)と地続きでもあります。これは(IMFの)統計上どのように区切られているのか、あるいは区切られていないのか分かりません。日本の「家事労働」を考える参考になるのか、参考にならないのか…この点も注視点です。
インドのGDPは、数年内に日本をおい越し、アメリカ、中国、ドイツに次ぐ第4位になると推測されています。国民の豊かさの表わす基準で、たしかに1つの目印ではありますが、実態を見ると心もとないとも見えます。GDPを超える国民生活のゆたかさを計るより確度の高い基準は必要なのです。
この記事は、時事通信(ニューデリー発)のもので「しんぶん赤旗」(2024年5月30日)掲載によります。