入所型介護施設にて

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介護士さんに車イスを押されて、私のいる机にQおばあちゃん(92歳?)がやってきました。膝と腰がわるくて立ち歩きできないといいます。介護士さんが離れたあと少しして、あそこで横になりたいといいます。すぐ横の大型テレビの前にソファがあり、そこに行きたいのです。職員の介護士さんにお願いしても「逃げてしまうんです」とのこと。ソファには数人座れ、テレビの前なので一人がそこで横になるのは止められているのでしょう。
これは私の推測であり、他にも理由があるのかもしれません。だから私がQさんをソファに座らせるわけにはいかないのです。やむなくテレビの前の机までQさんの車イスを移動させました。わずか2メートルです。これじゃ形ばかりかなと内心思っていたのですが、「やさしいね~」とQさん。そして「職員はいつも逃げていくんです」とくり返します。
以前に介護施設の職員は「入所者の“わがまま”に振り回されるくらいの方がいい」というあるベテラン介護施設責任者の話をきいたことがあります。職員は大変でしょうが、入所者の細ごまとした要求を逃げていてはいい介護施設にはならないのでしょう。この話を思い出しながら、さてQさんにこれをどう説明すればよいのか? …名案はありません。
「自宅に戻りたいですか?」とQさんに問いました。答えにとまどった様子を見せます。「できればそうしたいですけど、そうすると私一人がいる時間が多くなって、何もできなくなるでしょう。——だからここに入れてもらったんです」と、ゆっくりと話してくれました。
自宅に介護職員に訪問してもらう——Qさんには直接聞いたわけではありませんが、私の自宅近くに訪問看護ステーションが2か所あります——訪問介護はいいことですが、基本的に全時間いてもらうことはできません。
通所型=介護施設に1日から数日入所する、1日のなかの短時間通う(迎えに来てもらう)——朝の8~10時ころ、この地域内で介護施設の車が停車しているのを見かけるのはこのタイプです。これも社会的介護の一部であり、家庭介護を補助する方法です。それでも満足できるほどにはいかないと予測できます。
結局は、自宅で全時間、介護できる人がいる状態が、いちばんいいのです。そのためには、自宅に介護を交代できる多くの手があることが求められます。その交代できる手の数が少なく、子ども(孫世代など)に長時間お願いしているのがヤングケアラーになると思います。
これは高齢の身体が動き難い人ばかりではなく、子どもや成人期の人であっても身体障害者などへの介護(ときには看護)においても当てはまります。
ひきこもり経験者の集まる居場所に来ていた人のなかには、この自宅介護・看護に携わっていた人がいたのは、このような社会的背景があるのです。介護施設でのQさんの例はそれを教えてくれました。
自宅において介護の手が増え、外からの専門的な介護・医療も手が差し伸べられるーこれが理想形に近いと思うのですが、さてそうなるための条件は?

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