私は長くひきこもり経験者の集まる居場所を開いてきました。そうして多くの人の様子を知るうちに、彼ら彼女らのなかに、エッセイや体験を文章化する人がいることを知りました。またマンガやイラストを描き続ける人も少なからずいるとわかりました。
1つのきっかけがあり、それらを“作品集”として小さな本にする方法を思いつきました。私自身が地図好きでいろいろなデータなどを小さな冊子にまとめていたことを応用したものです。最初はカット集・イラスト集です。やがてそれに見て自分で文章入りの作品集をつくる人も表われました。
私は以前に出版社で本・雑誌の編集をしていたこともあり、これらはなじみのものでした。それを重ねるうちに、手作り本として製作・発行する形ができました。
「文学フリマ」企画という展示即売会があり、これにブース出展することにしました。以前作っていた作品を再点検し、作り直し、また新作を加えました。合計13点に達しました。
これを改めてふり返ると日本人のなかに特長的に伝わる、日記、戯画(漫画)、手芸、工芸の流れに続く動きと考えるようになりました。民俗学者の宮本常一さんは、「日本の民衆の家庭は軟質文化の工場でもあり、家庭はそういうものを制作することによって成り立っていたともいえる」といっています。
私の家ではパソコンとコピー機があってこれらを作成していますが中心は手作業です。町中のコンビニには精度の高いコピー機があり、これらを利用すれば、家庭で新しくできる軟質文化、手工芸作業、クラフトとして普及できると思っています。