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ゲーミフィケーション

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ゲーミフィケーション

「ゲーム=悪」と全否定する親に伝えたい視点
来年2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されます。
家庭学習の場面でもゲームの要素を用いた学習教材が浸透してくるなど、子どもたちの教育環境が激変しつつあります。
それらになじみのない親たちは戸惑いがちですが、いったいどう向き合っていったらいいのか。
『新時代の学び戦略 AI、スマホ、ゲーム世代の才能を育てる』を著したリクルート次世代教育研究院院長の小宮山利恵子さんと、東洋経済オンラインの連載でもおなじみの一般社団法人教育デザインラボ代表理事の石田勝紀さんが語り合います。
前編記事:「小学校プログラミング必修化の知られざる意義」
■ゲームをすべて排除していいのか
――小宮山さんはゲーム好きの子どもに「ゲーミフィケーション」を勧めていますね。
ゲーミフィケーションとは、遊びや競争など、人を楽しませて熱中させるゲームの考え方や仕組みを用いてやる気を引き出し、行動などを活発化させるもので、一般社会にも広がってきています。
何がゲームで何がゲーミフィケーションか、その切り分けは難しいですが、教育や子育ての場面となると、強い拒否反応を示す親も少なくなさそうです。
「ゲーム=悪」「ゲーム=敵」だと。
小宮山:そう思っている親御さんも多いかもしれませんね。ただ、それで片づけていいのかなという思いはあります。
私、子ども時代はゲーマーだったんです。
小学生の頃にファミコンが流行った世代で、ファミコンをやりすぎて故障して2台目を買ってもらうほどハマっていた時期がありました。
そういう経験をふまえて誤解を恐れずに思い切って言うと、子ども時代に何かに夢中になる経験はいつか役に立つときがくると思うんですね。
私の場合はその当時の経験からつながって、今、子どもたちがどうしたらそれぞれの「好き」を見つけて、それを探求するための学びに夢中になれるか、AIはどこまで活用できるのかという研究をしています。
石田:それはおっしゃるとおりで、子ども時代に何かにのめり込む経験は、何もないよりはあったほうがいいです。
集中力や自己肯定感も高まるので、子どもの才能を伸ばすうえでも大切な経験になります。
熱中する対象がスポーツやピアノなどの習い事であれば親としては気がラクかもしれませんが、子どもが興味を持つことがゲームということもあるわけです。
その場合に重要なのは、依存症にならないように親が管理すること。
それだけゲームには子どもを引き込むものがあるわけですから、その要素を学習に活用しない手はないと思います。
小宮山:この春、小学6年生になる息子がいるのですが、彼は今『フォートナイト』というゲームに夢中になっておりまして。
「なんでそんなにゲームが好きなの?」と聞いたら、「好きなように試行錯誤できるし、失敗しても誰にも何も言われないから」って言うんですね。
「自分だけ、ああ、やっちゃったって思って、また次に頑張ろうって思えるから」と。そこまで没頭させる効用はあると思います。
――よく言えば効用、悪く言えば中毒性、という親たちの声が聞こえてきそうですが(笑)。
石田:日頃多くの保護者の方から子育てや教育に関する相談を受けますが、確かに、ゲームの中毒性の問題を心配する方が非常に多いです。
とくに子どもは大人と比べて、自己コントロール能力が低いので、ほったらかしでやらせっぱなしにすれば、中毒になる可能性は高まります。
WHOも、ゲーム依存症を「ゲーム障害」という精神疾患として認定しましたからね。
小宮山:韓国では2011年から「ゲームシャットダウン制度」が施行されています。
2002年にネットカフェでオンラインゲームを86時間続けて行い急死した24歳の男性がいたりと、日本よりもネット、ゲーム中毒は深刻な状況にあったことから、16歳未満の青少年が午前0時から6時までインターネット上のオンラインゲームの利用を制限する法律ができたのです。
その効果については現在も議論がありますが、少なくとも「ゲーム中毒がある」ということは国民に周知された状況です。
日本ではそこまでの状況にはなっていませんが、日頃とても気をつけていて、息子にゲームをやらせっぱなしにはしないですね。
必ずリビングの親の目が届くところでやらせていますし、時間もある程度は制限しています。
■子どもが約束を守る「コツ」
石田:子どものゲーム問題についてかなり多くの相談を受ける中でわかったのは、ゲームに依存しないように管理できている家庭には共通点があるということです。
多くの家庭では、子どものゲーム、スマートフォン利用にあたってルールを決めています。
でも子どもがそれを守らない家庭は、ルールの決め方やその後の対応の仕方を間違っているんですね。
うまくいっている家庭は、ゲームやスマホをやらせる最初の段階で、ルール決めをしています。
そのルールは親子で相談するけれども、親が一方的に通告するのでなく、最後は子ども自身に決めさせている。
宿題や習い事などほかのやるべきこともあるので、ゲームの時間をどの程度に制限するべきかといったことを本人と話し合って、最終的に「じゃあ、こういうルールを決めて守ります」と本人に約束させるのです。
さらに、その内容を書いた誓約書を交わしている家庭もあります。
私は、そこまではちょっと固いと思うので、ルール決めの場面を動画に撮ることをお勧めしています。
言った言わないを避けるためでもありますが、自分で決めたという事実を作っておくと、子どもは約束を守る可能性が高まるからです。
ただの口約束であれば、そうそう守りませんよね。大人でも同じでしょう。
小宮山:よくわかります(笑)。
約束した内容を動画に記録するとなったら、子どもの意識も高まるでしょうし、ルールを破っても言い逃れできないので効果は高いでしょうね。
石田:そうそう。いざとなったら、こういう約束をしたよね、と動画を見せて確認させるんですよ。
そのとき、多くの家庭はペナルティを決めているんですが、これを実行しない家庭は失敗しています。
なぜなら子どもは、約束は破ってもいいということを学習して、どんどん守らなくなっていくからです。
例えば制限時間を超えたら3日間はゲームやスマホ没収、2度目にルールを破ったら1週間没収、3度目は1カ月没収と決めたとします。
決めたらなあなあにせず、すべて必ず実行して没収するくらいの覚悟が必要です。
親が本気を見せて、決めたことは守り抜く姿勢を示し、しっかりとけじめをつけることが大事なのです。
ただ1つ注意してほしいのは、制限時間を短くしすぎると、不満だけがたまることです。
ゲームにも区切りのいいところがあるはずで、1時間きっかりといったぴったりの時間でゲームをやめられるはずがありませんから。
1日ではなく1週間で何時間までにするとか、平日は禁止だけど土日は4~5時間やってもいいというふうに、初期設定に無理がないようにすることも大事です。
小宮山:学年や受験するかしないかの状況によってフェーズも変わっていくので、定期的に親子でルールを見直すことも大事ですよね。
――ゲームと学習が合体した「ゲーミフィケーション」について聞くことが年々増えてきました。
ゲーム好きな子にお薦めのものはありますか? 
小宮山:オンライン学習やタブレット学習では今、ゲーミフィケーションの機能は当たり前になっています。
例えばリクルートが開発した動画授業見放題のオンライン学習サービス「スタディサプリ」は、学べば学ぶほどポイントがもらえて、それを使って自分が選んだ「サプモン」というモンスターに餌を与えて育てられるゲーム的要素を活用しています。子どもたちには人気ですね。
ほかのオンライン学習サービスでもゲーミフィケーションの要素を取り入れているものは多いですね。
「子どもの意欲をいかに喚起し継続させるか」は、教育関係者の間では長らく課題となっており、今もまだ模索中です。
そのような中で、ゲームが持つ要素というのは学びに応用できる可能性を大いに秘めています。
■「学びとは楽しいもの」 ――ジャストシステムの「スマイルゼミ」や進研ゼミの「チャレンジタッチ」など、工夫がこらされたゲーミフィケーションが広がっていますね。
このように日本国内でも大分普及してきましたが、海外での状況はいかがでしょうか。
小宮山:フィンランドでは、国がゲームの教育利用を推進しています。
「学びとは楽しいもの」という考え方がベースにあるので、ゲームは学びを楽しくする最強のツールだという認識なんですね。
一昨年、フィンランドの教育大臣とお会いしてお話しする機会があったのですが、彼女の口から開口いちばんに出てきた言葉が「ゲームをどんどん学びの場で活用していく」だったので驚きました。
実際に、現地の小学校も訪問したのですが、プログラミングを学ぶ授業では、同じ教室の中でボードゲームで学んでいる子どももいれば、ハチの形をしたおもちゃで学んでいる子どももいました。
ですから日本と正反対で、ゲームという言葉自体がとてもポジティブな意味で使われているんですね。
また、北京大学では、ゲームについて学べる選択授業がスタートしました。
それほどゲームというのは、これからの時代を生きる子どもたちとは切っても切り離せなくなっています。
石田:ゲームそのものに学習効果が期待できるものもたくさんありますよね。
小宮山:私の息子も好きでやっている「マインクラフト」は、世界でシリーズ総販売数1億5000万本を突破した人気のゲームです。
デバイスの画面上で、立方体のブロックを使って何でも自由に作れる、ものづくり系冒険ゲームですね。
石田:通称「マイクラ」ですよね。想像力も創造力も高まる良質なゲームとしてとても人気です。
小宮山:ゲームの可能性に驚いたのは、2018年4月に世界で発売された「ニンテンドーラボ」です。
ピアノや乗り物など段ボール製のキットを組み立てて、ゲームと連動させて遊ぶ仕組みになっていて、小さな成功体験を積み重ねることもできる、とても教育効果の高いゲームですね。
――教育的要素を取り入れたゲームも、日々進化しているということですね。
石田:ゲームやユーチューブが、発達障害の子や不登校の子の集中力を引き出して、それが学ぶ意欲につながることがあります。
例えば以前、発達障害と軽度知的障害がある小学2年生の息子さんが不登校になったというママさんから相談がきた際に、そのお子さんにゲームやユーチューブをやらせてみてください、とアドバイスしたことがありました。
■ゲームや動画を通して、学びに触れる
私は、発達障害児や不登校の子が学んでいる広域通信制学校の理事長もしているのですが、そこで出会う子どもたちを見ていると、活字よりビジュアルのほうが理解しやすいケースが多いんですね。
そこで、そのお子さんにも、タブレットで文字や数字の世界に触れさせてみてはどうかと思ったのです。
するとその後で、ゲームでキャラクターの名前を覚えたりユーチューブでコメントを書いたりして、ひらがなを覚えましたというお礼のメールをいただいたんですね。
算数が苦手だったのに、ゲームの点数で数字の意味も理解しはじめましたと。
そういう経験で自己肯定感も強くなったのだと思いますが、学校にも少しずつ通いはじめたということでした。
小宮山:確かに、以前、発達障害のある児童の授業を見学したことがありますが、「マインクラフト」に集中して取り組んでいた様子が印象的でした。
石田:もちろん、ゲームやユーチューブをやらせるうえでルールを守らせることは不可欠です。
ただ、今の教育環境は私たちの時代と違って大きく変化しているのは事実です。
大人社会にテクノロジーがこれだけ浸透している今、それを子どもだけブロックするのはどう考えても非現実的ですよね。
丁寧に付き合い方を考えていく必要があるのではないかと思います。
小宮山:テクノロジーによって新たな学びの機会が増えることは間違いないと思います。
ゲームなのか、ゲーミフィケーションなのか、プログラミングなのか、場合によっては親の忍耐も必要になると思いますが、その子どもの適性に合ったツールを活用して見守る姿勢が、これからの子育てではますます重要になっていくと思います。
〔2019年3/14(木) 樺山 美夏 ライター・エディター 東洋経済オンライン〕

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