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ストレングス協会

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一般社団法人 ストレングス協会

〒180-0003
東京都武蔵野市吉祥寺南町1-31-2 七井ビル210
MAIL:strength.association@gmail.com
ポジティブサイコロジーの活用で引きこもり支援~松隈信一郎・一般社団法人ストレングス協会代表理事に聞く
引きこもりで悩む人や家族は、途方に暮れていることが多い現状です。
引きこもりの若者を社団法人を通して、ポジティブサイコロジーを応用した新しい形で支援している慶応大学精神神経科の医学博士・松隈信一郎先生に取り組みについて聞きました。
(聞き手・文 海原純子)
◇もがく青年をサポートしたい
海原 松隈先生は、10代、20代の若い世代の引きこもりの人たちの支援をしていますが、どのようなきっかけでこうした活動を始めたのでしょうか。
松隈 18歳の時、浪人中に心因性視覚障害になってしまい、英語の先生や鍼(はり)の先生に励まされて、自分も人生をもがく青年のサポートをしたいと思ったのが、そもそものきっかけだったのかもしれません。
海原 心因性の視覚障害はどんな症状だったんですか。
松隈 眼鏡やコンタクトレンズを取った時に視界がぼやけるように、全てがZOOMの「ぼかし背景」のように見えて、なんだか変な光が見えてきたり、火花のような光が散ったり、地元の眼科に行っても目には異常がないと言われて。
浪人中で「大学に落ちたら、この先の人生は無い」と思い込んでしまっていたため、当時は途方に暮れていました。
今、思うとだいぶ焦っていたなと思うのですが。
不器用な青年を見ると、なんだかひとごとには思えないのです。
海原 それがきっかけになり、青年の支援をしたいと思うようになったのですね。
ポジティブサイコロジーの視点からやってみようと思われた理由は何ですか。
マニラ郊外のスラムで子どもたちの支援をする松隈さん
松隈 20代の時にフィリピンと縁があり、現地のNGOに所属して、ゴミ山での教育支援や台風災害の復興支援に取り組んでいたのですが、貧困や災害などの逆境の中でもたくましく生きる人たちの姿にとても胸を打たれたのです。
物質的に豊かな日本で自ら命を絶つ若者も多い中、「本当の豊かさや生きる喜びって何だろう」と、レイテ島の被災地で活動しながら、その矛盾をもんもんと考えていました。
そんな時、台風災害の医療支援で日本眼科医会が巡回診療を行うということで、現地駐在員をする機会があったのですが、そのプロジェクトの発起人であった坪田一男先生(慶応大学医学部教授/株式会社坪田ラボCEO)が現地に来られたのです。
坪田先生に自分が抱いていたその疑問をぶつけてみたんですが、突然、「君、ご機嫌に興味ない?」と言われました。
「えっ!?」と思ったのですが、ポジティブサイコロジーという、幸せや感謝などのポジティブな感情や強みなどの人間のプラス面を科学的に研究する学問があり、数年前に日本ポジティブサイコロジー医学会 を発足されたとのことでした。
「君も博士課程に進んで、一緒に研究しないか」と勧められたのです。
「何か答えが見つかるかも」と、そこから帰国後、受験勉強をして進学し、ポジティブサイコロジーの研究を始めることになったのですが、在学中に知人から不登校や引きこもりの相談を受けるようになり、試行錯誤しながら訪問支援をしていると、活力を取り戻して行動し始める子たちが増えてきたのです。
ポジティブサイコロジーのアプローチが、若者支援に相性が良いのではと思うようになり、研究と実践を本格的に始めるようになりました。
◇うまくいってるものから
海原 ポジティブサイコロジーのアプローチは一般的な支援と何が異なるのでしょうか。
松隈 海原先生も以前、「前を向けない気分のときは」 の記事で指摘されていたように、根本的な考え方として、ネガティブな部分を取り除くことに注力するよりも、ポジティブな側面を増やして、ネガティブな側面の割合を減少させていく点にあると思います。
よく親御さんの相談や支援をされる人の話を聞いていると、「なぜこうなってしまったのか」という原因追求や、「この子やこの子を取り巻く社会の何が欠陥で、それを直すためにどうすればいいのか」ということばかりが話題に挙がります。
もちろん、人それぞれ背景が異なりますので、そのような発想が悪いというわけではないのですが、ただでさえ周囲と比較され、減点主義の学校教育や社会環境の中で育ってきた青年たちは「自分は駄目で、もう手遅れだ」と思っていることが多く、「ここが悪い」から入っても、そこに向き合い、改善したいというエネルギーが湧いて来ないように感じます。
病院に連れて行くと、「生活習慣から整えましょう」「こだわりが強すぎるから、それを改善していく必要がありますね」という話を受け、その後、通わなくなったという話を親御さんからよく聞くのです。
一方、ポジティブサイコロジ-のアプローチは、引きこもりが良い悪いではなく、「何がうまくいっているのか」と既に「あるもの」から始めます。
クライアントが既に持っている強みを明確にしていき、本人が望む未来に向けて、解決を構築していくアプローチです。
海原 今の子どもたちは、比較されて疲れ切っていますよね。
みんなと同じようにできないということで、落ち込んでしまうことも多いと思います。
比較ではなく、本人に備わる強みを中心に見ていくという視点ですね。
松隈 はい。ポジティブサイコロジーのストレングス理論に「強みは環境の中に存在し、状況に応じてボリューム調整をする必要がある」という概念があります。
ある状況では「強み」になるものでも、別の状況では、それを使い過ぎてしまうとマイナスの力になるため、「強みは状況に応じて、最適に使えるよう育てる必要がある」という考えです。
この「強みのボリューム調整」という視点に立ち、「引きこもり」という現象を見ていくと、「自分の強みを使い過ぎている状態」または、「全然使えていない状態」と捉えることもできる可能性があります。
問題や症状を無視するのではなく、本人のプラス面からその状況をリフレ―ミングしていき、「その良い部分を最適に生かせるように育てていこう」と未来志向の会話で進めていきやすいのです。
◇強みを見つけることが第一歩
面談は青年の自室で実施する
海原 でも、引きこもっているお子さんをお持ちの親御さんは「うちの子に強みなんてあるのかしら」と思われる場合も多いのではないでしょうか。
引きこもりの人の強みを見つける上で、工夫されていることがありますか。
松隈 私たちは「強み」と聞くと、「サッカーが上手」「数学が得意」など知識やスキルのみを「強み」として捉えがちですが、ポジティブサイコロジーでいわれる強みとは、「自然と繰り返される思考・行動・感情のパターン」で、「自他にとってポジティブに働くプラスの特性」と定義されています。
つまり、プラスに働く「脳の癖」であり、脳があれば、誰しもが持っているものなんです。
「強み」を見いだしやすいのは、本人の成功体験やうまくいっていることだとよく言われますが、脳の癖である以上、リアルとバーチャルの区別がありません。
部屋の中にずっといようと、バーチャルの中でも脳は使っていますので、よくするゲームや趣味の話からでも強みは見いだせます。
例えば、FPSというシューティングゲームでの戦い方や、試合中のチームメンバーとの連携の仕方などを聞いていると、その青年ならではの勝ちパターンがあり、自然と行っている特性をリアルでどのように応用できるかをよく話し合います。
ある青年は趣味が漫画で、「何度も読み返して、セリフの伏線を探すのが好き」と言うのです。
この子には「自然と因果関係を見つけて喜びを見いだす」という特性があり、彼はその強みを活かせるようなプログラミングにも興味を示し始め、それを学べる学校に再入学していきました。
自動車が好きなある青年は一人、部屋の中で「次はどのメーカーがどの車種を販売・展開していくのかをネットでいろいろ見て、予想している」と言うのです。
過去にも次に出てくる車種を当てたことがあるといい、その「データに基づく推測力」は将来、マーケティングや事業構想にも役立つかもしれないと、ビジネスや経営学に興味を持ち始め、それらが学べる環境へと進み始めました。
もちろん、これだけで全てが解決するという話ではないのですが、過去の症例を振り返っても、前に進み始めたきっかけは、「欠点が直ったから」というよりも、「強みを見つけて、わずかでも自分の将来に可能性が見えたから」というケースが多いように感じます。
海原 ちょっとした興味や心が動くことを見るのが大事なのですね。引きこもりの訪問支援以外にどのような取り組みをされているのですか。
松隈 ポジティブサイコロジーを教育現場に浸透させようと、日本とフィリピンで教員研修をしています。
角川ドワンゴ学園N高校、N中等部の21世紀型スキル学習のカリキュラム作成の一環にも携わっています。
教科教育だけでなく、心やマインドの教育も一緒にされる試みにとても感銘しています。
◆ご案内
海原 今年の日本ポジティブサイコロジー医学会学術集会では松隈先生に講演をお願いし、引きこもりの人の支援についても取り上げます。
医師や医療関係者だけでなく、一般の人も参加できるオンライン学会です。
2021年10月30日(土)ZOOM開催
第10回日本ポジティブサイコロジー医学会学術集会の詳細は
http://jphp.jp/shukaisemi.html
松隈 信一郎 医学博士、公認心理師。慶応大学大学院医学研究科博士課程修了。
専門はポジティブサイコロジーと解決志向アプローチ。一般社団法人ストレングス協会(http://milestone.life )代表理事。
10代・20代の引きこもりの訪問支援や教員、保護者を対象としたポジティブサイコロジーの心理教育に従事。
慶応大学医学部精神神経科学教室特任助教、日本ポジティブサイコロジー医学会事務局(株式会社メディプロデュース内)、立教大学グローバル教育センター兼任講師、米国Gallup社シニアコンサルタント兼任。
第6回ポジティブサイコロジー国際学会臨床部門症例大会ファイナリスト。
著書に「ポジティブサイコロジー 不登校・ひきこもり支援の新しいカタチ」(金剛出版)など。
〔2021年3/25(木) 時事通信〕 

増える自信のない子どもたち 取り戻すきっかけになる「強み」を知る方法
10代・20代の不登校・ひきこもりの支援に取り組む松隈信一郎氏。
自信のない子どもたちが増えている。その原因はどこにあるのか。
本人の思い込みも大きいが、そうした思い込みを生み出してしまう、親や教師など周囲の大人たちの考え方にも問題がありそうだ。
短所や欠点は矯正したところで自己肯定感は高まらない。かえって自信を失ってしまうこともある。
そんなとき手がかりになるのが、ロングセラーの『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』(日本経済新聞出版)が紹介する「資質」や「才能」「強み」だ。
その基盤となるポジティブ心理学の研究を専門とする傍ら、10代や20代の不登校やひきこもりの子どもたちを支援し、少しずつ自信を取り戻していく姿を見てきた松隈信一郎氏に、子どもたちとどのような会話をしているのか、何がきっかけとなって子どもたちが自信を取り戻していったのかを教えてもらった。
◇          ◇   ◇   ◇
「自分はダメな人間なんです」。
ひとり、部屋のなかで悩んできた不登校やひきこもりの子たちと話をしていると、このような言葉によく出くわします。
これは何も不登校やひきこもりに限った話ではありません。いま学校に通っている子どもたちのなかにも、「自分には価値がない」と思っている子どもが少なくないのです。
県内有数の進学校に通っていても、まわりが自分よりもできるために挫折する子。中学受験に合格しても、その後の人間関係でつまずき、悩んでいる子。
「勉強も部活も得意ではない自分に一体何ができるのだろう」と不安を抱えている子。
人間とは複雑な生き物であるはずなのに、「勉強」や「部活」といったモノサシだけで他人と比べられ、自信を失ってしまう子どもたちが多く存在します。
2015年に実施された国立青少年教育振興機構の調査でも「自分はダメな人間だと思う」と回答した高校生が全体の72.5%もいたそうです。
「弱み」を矯正しても、自己肯定感は高まらない
元来、人間の脳は、生存本能によって、いち早く危険なものやネガティブなものを察知できるようにつくられています。
この機能(ネガティビティ・バイアスと呼びます)は、危険から身を守るために重要な役割を果たしていますが、こと「自分」という人間を理解しようとする際には、ネガティブな面ばかりに目が奪われてしまう要因にもなります。
本来、誰もが長所や強みを持っているはずなのに、欠点や弱みばかりに目がいき、「自分はダメな人間なんだ」と結論づけてしまう子どもが多いのも、このためなのかもしれません。
そして、子どもも、大人たちも、「この欠陥を修理しないと」と一生懸命、欠点を見つけては矯正しようとします。
しかし、いくら弱みを矯正したところで、「自分は価値のある人間だ」と思えるようにはなりません。
「雑草」を抜いても、「花」は咲いてこないのです。
誰にでも「強み」はある
「自分はダメな人間だ」と思っている子どもたちにも必ず、強みはあります。
自分にとって「自然とできること」であるため、気づきにくいだけなのです。
たとえば、「自分はダメな人間だ」と思い、不登校になってしまった男の子。
彼はオンラインゲームをしている最中に、チーム内の調和を保とうと無意識のうちにお互いの共通点や妥協点を見いだしていました。
この子には「共通点を見つけられる」という資質があり、無意識のうちにそれを生かしてチームを統率していたのです。
彼は、学校に復学した後も、この「共通点を見つけられる」という特性を生かして友達をつくっていきました。
また、ある男の子はゲームの最中、「敵がいないか」とまずはリスクを査定し、そのリスクを回避、予防することで前進していました。
「リスクを見つけて、それを回避することができる」。これが彼の資質だったのです。
通信制高校に入学後、彼はプログラミングのバグ探しで、その強みをいかんなく発揮しはじめました。
バーチャルでもリアルでも、たとえ本人に自覚がなくても、うまくいっているときには必ず、強みの原石となる資質を生かしているのです。
私は、バーチャルやリアルを問わず、うまくいった話を子どもたちにたずねながら、彼らの強みを特定して、それを生かせるように働きかけています。
自分の強みを見つけ、それを育てていく過程を通して、「自分には何もない」「自分はダメな人間だ」と思い込んでいた子たちが少しずつ自信を取り戻していく姿をこれまで見てきました。
強みのボリュームを調整し、自分自身をとらえ直す
強みを軸に自らをとらえ直すことで、「自分はダメな人間だ」と思い込んでいた子どもたちが自分を再発見することもあります。
ポジティブ心理学のストレングス理論に「強みは状況に応じて、ボリューム調整をする必要がある」という概念があるのですが、それは、「ある状況では強みとなるものでも、ある状況では使い過ぎてしまい、マイナスの力になる」という考えです。
たとえば、「粘り強さ」は、ある状況では強みとなりますが、使い過ぎると「しつこさ」になってしまいます。
このように強みは、状況に応じてどこまで使うかを調整する必要があるのです。
この「強みのボリューム調整」という概念を理解していると、それまで欠点だと思っていたことも、「強みの使い過ぎ」としてとらえ直すことができます。
たとえば、よくある欠点のひとつに「完璧主義」というものがあります。子どもが「ぼくは完璧主義なんで、ダメなんです」と言えば、親御さんも「うちの子は完璧主義だから……。それさえ治ればもっと生きやすいんですけど」とおっしゃられる。
これは、「自分のなかに悪いものがあり、それを取り除かないかぎり、自分はダメな人間なんだ」というパラダイムで人をとらえています。
このパラダイムでは、ダメな自分を変えようと一生懸命、「完璧主義でない自分」を装ってみますが、うまくいきません。
かえって自信を失い、自己嫌悪に陥ることもよくあります。
しかし、この状況を「強みのボリューム調整」というレンズで見てみれば、「卓越したものを目指そう」とする資質を使い過ぎている状況なのかもしれません。
子どもが「自分は完璧主義だからダメなんだ」と思い込んでいたなら、「完璧を目指そう、卓越したものを目指そうとしたことで良かったこともあったんじゃないの? たとえば、よりよくしようとする、
その力があったからこそ、ゲームのランキングにつながったと思うよ」と、その特性が持つプラス面に目を向けさせるきっかけをつくることができます。
「完璧主義という弱点を取り除く」というパラダイムから抜け出し、「卓越したものを目指そうとする資質が強みになるように、さらに育てていこうよ」というパラダイムにシフトできるのです。
まずは「強み」に気づくことから始める
さらに、際立った特徴をどう使えばいいのか、普段から強みの資質というレンズで子どもの言動を観察していると、親子の関係性も良好になります。
たとえ、彼らが問題行動をしたとしても、「その状況では、どの強みが出過ぎたんだろう」と、あくまでも本人の強みを認めながら話を展開でき、子どもとの関係性を良好に保ちながら、一緒に考えていくことができるようになるのです。
関係性が良好であるため、進級や進路等の大事な話題についても、子どもとしっかり対話できる好循環が生まれてきます。
強みの使い方を練習し、「自分には価値がある」と子どもたちが思えるようにするためには、まず、自分の強みがいつ、どんなかたちで出てくるのかに、子どももまわりの大人も気づくことが重要です。
そのために、ぜひ子どもたちの言動、特に(リアルでもバーチャルでも)うまくいっていることを観察して、彼らがいつも自然にやっていることや際立っている特徴が出ている瞬間をキャッチし、できたらそれを本人に伝えてみてください。
その際には、『さあ、才能に目覚めよう』や〈クリフトン・ストレングス〉で紹介される資質を知っておくとよいでしょう。
いずれも強みの原石となるものです。強みが現れる瞬間を発見しやすくなります。
学校に行っていようといまいと、誰しもが強みを持っています。「自分には価値がある」と思えることは、ひとりの人間が成長していくうえできわめて重要な礎です。
その礎の上に、子どもたち一人ひとりが豊かな人生を築けるように、ともに強みを育てましょう。
松隈信一郎 医学博士、公認心理師
慶応義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。専門はポジティブ心理学とストレングス研究。
一般社団法人ストレングス協会を設立し、10代・20代の不登校・ひきこもりの支援や、教員・保護者向けの心理教育、各教育機関向けの心理教育プログラムの開発・監修を行う。
著書に『ポジティブサイコロジー 不登校・ひきこもり支援の新しいカタチ』(金剛出版)など。
〔2021年3/2(火) NIKKEI STYLE〕 

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