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千葉大学子どものこころの発達教育研究センター

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千葉大学子どものこころの発達教育研究センター

所在地 千葉県千葉市
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受験勉強・人間関係…子どものストレスを軽減するためのコミュニケーション法
子どもの健康
学校生活に塾、習い事……。毎日を忙しく過ごす現代の小学生は、さまざまな経験を積むことができる一方で、多くのストレスにさらされています。
特に受験期は、「受験うつ」や「教育虐待」の問題に発展することも。
子どもを過度なストレスから守る方法について、千葉大学 子どものこころの発達教育研究センターの浦尾悠子さんに聞きました。
話を伺った人 浦尾悠子さん 千葉大学 子どものこころの発達教育研究センター 特任助教
(うらお・ゆうこ)看護師、公認心理師。
認知行動療法の観点から、子どものメンタルヘルスの問題を研究。
独自に開発した、子どものこころの病気を予防するためのプログラム「勇者の旅」は、千葉県を中心に全国の小中学校で実践されている。
千葉大学医学部附属病院では、子どもの不安症やうつ病などの認知行動療法を担当している。
受験や人間関係が要因に。過剰なストレスを感じる子どもが増えている
――学校、塾、習い事と、多くのタスクをこなしながら毎日を過ごす小学生は少なくありません。
彼らは日々、どんなストレスを抱えているのでしょうか。
一般的に、勉強や進路など「学習面」の課題、家族や友だち、先生などとの「人間関係」、日々の「多忙さ」などが、忙しい小学生にとっての主なストレス源になると考えられます。
ただし、“ストレス”とは個人差が大きいもの。
本人を取りまく環境によって受けるストレスは質も量も異なりますし、何をどの程度ストレスと感じるかも個々で違う。
また、自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害を持つ子どもたちは、その特性ゆえに、些細な刺激が強いストレスになることがあります。
――同じ刺激でも、それを心地よく感じる子もいれば、強いストレスに感じる子もいるわけですね。
そうですね。問題なのは、その子どもにとって、ストレスが過剰になっているときです。
日本では、少子化の一途をたどるなか、不登校、児童虐待、自殺などの問題が増えています。
児童期、思春期にうつ病や不安障害などの精神疾患にかかる子どもは、大人と同じように多いのです。
しかし、医療機関にかかっていない割合は7割を超えるとされています。
情報化社会、格差社会のような社会の変化にともなって、大人だけでなく、過剰なストレスを感じている子どもは増えており、そのような子どもの窮地を見逃してはいけないと思います。
原因のひとつに、少子化によって、一人の子どもにかかる親の期待(プレッシャー)が強くなっていることが考えられます。
例えば中学受験は、親の「受験に失敗しないでほしい」という強い期待と、成績による序列化のプレッシャーが数年にわたって続くので、強いストレスになっているように思います。
また最近は、親も子もインターネットからの多様な情報を個別に受け取れる時代になり、世間話をする人間関係をストレスに感じる子どもも増えているようです。
友だちに「自分のことをどう思われるか」を気にするあまり、人と関わるのがつらくなって不登校になるパターンも多い。
社交不安症という病気にかかっている場合も少なくありません。
ストレスの自覚、言語化が難しい子どものストレスサイン ――ストレスが過剰になると、子どもにはどんな変化が表れるのでしょうか。
子どもは、大人に比べてストレスを自覚したり言語化したりするのが困難。
そのため、言葉でストレスを訴えてくることはまれだと思ってください。
思春期ごろになり、ストレスを自覚できるようになっても、「心配や迷惑をかけたくない」「恥ずかしい」「嫌われたくない」などの理由から、周りの大人に相談できず、一人で抱え込んでしまうケースもあります。
とはいえ、本人が言わないからと放っておいてしまうと、対応が遅れ、結果的にうつ病や不安障害といった精神疾患につながることも。
常日頃から、保護者はストレスのサインが出ていないか子どもを観察してください。
――ストレスはどういったサインとなって表れますか?
大人でも、ストレス過多になるとさまざまな不調を感じますよね。
子どもも同様に、体の状態や日々の行動、考え方に変化が表れます。
■子どものストレス反応の例
●体の不調
頭痛や腹痛のほか、疲れ、だるさを感じるなど。
寝付けなかったり、眠りが浅くなって夜中に悪夢を見たりと睡眠に出るケース、食欲がなくなったり、過食気味になったりするケースもある。
●日々の行動
イライラして攻撃的になったり、キレやすくなったりしてしまう子がいる。
反対に、外に出たくなくなって家に引きこもり、不登校になることも。
そのほか、爪をかむ、髪の毛やまつげを抜くクセが出たりもする。
●考え方
後ろ向きになり、「どうせ自分なんて」「できっこない」と悪い予測を立てやすくなる。
特に子どもが体調不良を訴えた場合、大人もそのまま「体の具合が悪いのね」と捉えてしまいがち。
その症状について、小児科などで診察を受けることはもちろん大切です。
しかし、身体的に問題ないと言われた場合は、過度なストレスによるものではないかという視点も持っておいた方がいいでしょう。
浦尾悠子さん
子どものありのままを受け止め、安心して失敗できる環境作りを
――どうしたら、保護者は子どものストレスを軽減できますか?
こころと体はつながっています。子どもが心身ともに健康的な生活を送るために、栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠、適度な運動など、生活面での配慮は大前提。
そのうえで、保護者の前で子どもが一息つける環境作りに気を配ってください。
――具体的に、どのように環境作りをすればよいのでしょうか。
まず、子どもに過剰な期待をしたり、理想像を押しつけたりしないこと。
子どもにとって、親は影響力の強い存在。過度な期待やプレッシャーは、大きなストレス要因になります。
例えば、中学受験を控えた子どもを持つ保護者は、「テストのできが良いこと」「少しでも偏差値の高い学校に入ること」を期待しやすい。
すると子どもはそれを察知し、期待に応えたいという気持ちから、限界まで無理をし続けてしまうかもしれません。
子どもは、保護者とまったく別の人格、能力、特性を持った一人の人間です。
特に10歳ごろからは、子どもが自立、自律を始める時期。
保護者は、サポート側に回りはじめるタイミングと心得て、その子のありのままを受け止めてほしいというのが1点目です。
――保護者の前でも無理をし続けることになる。では2点目は?
「失敗してはいけない」というメッセージを送らないことです。
失敗を責めないというだけでなく、安心して失敗できる環境作りを心がけてください。
昨今、子どもが失敗しないようにと叱咤激励したり、先回りしてお膳立てをしたりする保護者の方が増えています。
しかし、子どもは失敗や挫折を乗り越えることで成長していくもの。
保護者の役割は、失敗や挫折を経験したとき、その子どもの支えとなることです。
日々の学校生活から、部活や習い事の試合、発表会、中学受験まで、子どもの生活にはさまざまな失敗がつきまとうもの。
勉強や習い事でスランプに陥る時期もあるかもしれません。
そういったときに、「失敗しても大丈夫。あなたの人生が終わるわけではない」「今はつらいけれど、失敗経験はきっと人生の糧になる」というメッセージを伝えてほしい。
保護者自身の失敗、挫折の経験を交えて話すのもいいと思います。
学校にしろ塾にしろ、日本の社会は「失敗は許されない」というメッセージにあふれています。子どもたちには、せめて自宅ぐらいは肩の力を抜いてほしい。
失敗しても、保護者だけは否定しない、ありのままの自分を認めてくれると思えれば、子どもも家庭でストレスを和らげることができるでしょう。
1日に数分でも子どもの話に耳を傾ける習慣を作って
――保護者が子どものストレス発散を手伝う手段はありますか?
1日に数分でも、子どもと対話する時間を意識的に作ることです。
また、日頃から「困っていることがあったら相談にのるよ」と伝え、相談しやすい環境作りも忘れずに。
子どもによっては、面と向かって本音が言いづらいことも。
メールやLINE、手紙、交換日記なども含めて、どんな方法なら話しやすいか、子どもと話し合ってみてください。
日々のストレスは、人に話して聴いてもらうだけでもずいぶんと楽になるものです。
保護者は、その子が世の中をどう見て、何を感じているのかに思いをはせながら、子どもの話をじっくりと聴きましょう。
何に思い悩み、どんなふうに葛藤しているのか、保護者自身が腑に落ちるまで、なるべく口を挟まずに話を聴く。
それが、その子への理解につながります。
――日常的に話をしていれば、子どもの変化にも気づけそうですね。
そうですね。何か変だなと思ったら、「疲れているみたいだけど大丈夫?」「困ったことがあったら話を聞くよ」などの声かけを。
そしてじっくりと話に耳を傾ける時間を作ってください。
解決策が必要な場合は、まず子ども自身に考えさせて。10歳ぐらいになれば、本人なりに考えを持っていることも多い。
それが大人から見て現実的でなければ、その意見を尊重しつつ、「あなたはそう思うんだね。
私は自分の人生経験から、こうアレンジしたらいいと思うんだけどどうかな?」などと提案してみてください。
もしもストレスが大きすぎて家庭での解決が困難であれば、早めに専門家に相談することをおすすめします。
困ったときは自分だけで解決しようとするのではなく、人に相談して一緒に解決策を考えてもらっていいのだと、子どもに教えるいい機会にもなります。
1日に1回の「オフの時間」で、好きなことにどっぷり漬かる
――最後に、子ども自身ができるストレスマネジメントについて教えてください。
1日に1回、短時間でもいいので、好きなことにどっぷり漬かれる「オフの時間」を確保することです。
オフの時間は体とこころをリセットしてくれるため、有効なストレス対策となります。
ただし、生活の中にうまくオフの時間を組み込むのは、子ども一人ではまだまだ難しい。
保護者は、どんなことでリセットできるのか、どれぐらいの時間が必要なのか、何を平日に、何を休日にするのか、どんな時間帯にするのかなど、子どもの意見をヒアリングしつつ、オフの時間作りをサポートしてあげてください。
保護者は「好きなことをさせると、いつまでもやめないのでは?」と不安に思うかもしれません。
しかし、一緒に「何分間する」と考えて、事前に約束をしておけば、子どもの自主性が働きやすい。そうすると、お互いにストレスをためずにすむと思います。
思春期以降、保護者はその子のよき伴走者であるべき。
子どもを一人の人間として尊重し、自分とは異なる人生をどう楽しみ、どう乗り越えていくのか、見守ってあげてくださいね。
(撮影:辰根 東醐 編集:阿部 綾奈/ノオト)
〔2020年1/22(水) 朝日新聞EduA 有馬ゆえ ライター、編集者〕

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