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学校でのICT活用

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学校でのICT活用

事なかれ主義を変え、学校や教師を支える保護者の声と理解
学校は身体的・精神的に深い傷を負うことなく安全に失敗できる場であるべき
これまでの学びの価値観が揺らいでいる今、学校が果たす役割は何か、学びをどのように変えていくべきか。
本連載『The Teachers' Voice』では、学びのアップデートをめざす先⽣⾃⾝の⾔葉をお伝えしていく。
学校が取り組むICT教育に対して、保護者はどのようなカタチで関わることができるだろうか。
東京学芸大学附属小金井小学校の鈴木秀樹教諭に、ICT活用を進めるために必要な保護者の理解について語ってもらった。
■学校現場のICT活用に対して、想いを語る保護者たち
保護者の方から見て、学校が取り組んでいるICT教育は、どのように映っているでしょうか。
先日、私は「世田谷区教育推進会議」という集まりに参加させていただいたのですが、そこで、ICT教育に関する保護者の方の声を知る機会がありました。
今回は、その出来事からお話していきましょう。
世田谷区教育推進会議は、同区の教育委員会が主催しているもので、子どもを取り巻く教育課題について、学校・家庭・地域・教育委員会など、さまざまな立場の関係者が集まり、議論をする場になります。
その日のテーマは「これまでの学び、これからの学び~保護者や教員・子どもから捉えたICTによる新しい学び~」というものでした。
会議は最初に、小学校や中学校の保護者の方や、地域で活動されている方がICTの取り組みについて、それぞれ思っていることを発表されました。
その後、世田谷区の小中学校におけるICT活用の実践が紹介され、全員の発表を受けて推進会議委員がコメント。
最後に私が畏れ多くも「学識経験者」として講評を話すという流れです
(その時の様子がYouTubeで公開されていますので、興味のある方はご覧ください)
最初に登壇された小学校の保護者の方のお話から、かなり刺激的でした。
その方は、外資系IT企業にお勤めとのことでしたが、GIGAスクール構想によって1人1台タブレットPC環境が実現したら「既存のルールに縛られてはいけない」と訴えられていました。
ICTを使うことが当たり前になった今、新しいことを許容していく必要があり、「使う側の気持ちが大切です」という指摘は、会議に参加していた教育関係者の胸に刺さったと思います。
私がその方の発表で一番、印象に残ったのは「カルチャーを変えていくこと、エラーを受け入れる風土を作っていくことが大切だと考えます」という言葉でした。
これは驚きました。
私が講評に用意していたスライド、ハッキングしましたか?と思ったくらい。
私が用意していた話はこうです。
「学校は、失敗しないように手順や道筋が明確に示されている場ではありません。
そうではなくて、学校は身体的・精神的に深い傷を負うことなく安全に失敗できる場であるべきです。
1人1台タブレット環境においてもそれは同じです。
トラブルがおきないように利用を制限するのでは意味がありません。
トラブルが起こったら子どもと一緒に解決していくというマインドが必要です」
このシンクロ具合には痺れましたね。
次に登壇された中学校の保護者の方のお話もすごく良かったのです。
この方は休校中のお子さんの様子を話してくださったのですが、入学早々、休校になったお子さんが、担任の先生とオンラインで自己紹介し合ったのだそうです。
そうしたら意気投合するものがあって「私、担任の先生ととっても気が合いそう!」とお母さんに報告してくれたのだとか。
そうしたエピソードを引きながら、この方は「ICTは個々の子どもに寄り添うためのものだと思うんです」と仰いました。
それは私が最近、あちこちで語り倒している「Face to Faceの教育から、学びのSide by Sideへ」という発想のベースにある想いそのものです。
世田谷教育推進会議、恐るべし。
しかし、話はこれに留まりません。
その後に登壇されたのは、地域で街の活性化に取り組んでいる方だったのですが、ご自身のお子さんが不登校傾向にあったことを引き合いに出しながら、「ICTを利用して教室や授業を『苦しい→苦しくない→楽しい』と変えていけるといいと思います」と話されました。
これは、私がここ数年取り組んできているICT×インクルーシブ教育を進める上で、もっとも大切に考えていることです。
私の講評は最後だったので、「皆さんのお話を伺いながらプレゼンを仕上げよう」と考えつつも、骨子となるものは作っておきました。
そうしたら、私が作っておいたプレゼンにドンピシャの発言が、保護者の方から次々に飛び出すではないですか。これには本当にびっくりしました。
■保護者の理解が、教師や子どもの挑戦を後押しする
世田谷区のICT活用が今後、どうなっていくかはわかりません。
人口も学校数も多い自治体ですから、ICTに限らず、何かを動かしていくには大きなエネルギーを必要とするはずです。
一気には変わっていけないかもしれません。
でも、私はこの教育推進会議を経て、これからとても大きな期待を寄せられるな、と感じました。
なぜか。保護者の方々に非常に大きなエネルギーを感じたからです。
学校を動かしていくのは誰か。もちろん直接的には、学校にいる子どもたちや先生方です。
しかし、子どもたちや先生方が動くためには、周りのサポートが絶対に必要です。
「孤軍奮闘」という言葉がありますが、学校での「孤軍奮闘」には限界があります。
周囲のサポートがあり、学校全体が動いて、はじめて個の頑張りも生きてくる。良かれあしかれ、それが学校です。
では、どんなサポートが必要か。色々とありますが、大切なのは子どもたちや先生方が「そんなことやって何か起こったらどうするんだ!」と言われない事ではないか、と私は感じています。
「ICTを活用して子どもたちの学びを地域に広げたいんです。
そのために子どもたちの作った動画をYouTubeにアップしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「YouTube? そんなことやって何か起こったらどうするんだ!」
その一言で先生方は委縮します。子どもたちのやる気はしぼみます。
「うちの自治体のICT活用、なんでこんなに進まないのかしら」と思っている方の学校では、もしかしたら「そんなことやって何か起こったらどうするんだ!」という声が飛んでいるのかもしれません。
では、その声を止められるのは誰か。保護者の皆さんです。
「そんなことやって何か起こったらどうするんだ!」という人に対して「何か起こったら学校と家庭が協力して対処すればいいだけの話でしょ?」と喝破できるのは保護者の皆さんです。
それが学校への追い風になります。
もちろん、先進的な考えをお持ちの保護者の方ほど、言いたいことは山ほどあるのではないかと思います。
「どうしてうちの学校ではICT活用が進まないのですか?」
「〇〇くらいのことならうちの学校の設備でもできるはずです。なぜ、やらないのですか?」
「うちの学校のICT環境は、なぜこんなに低レベルなのですか?」
「どうして予算をつけないのですか?」
意見を言う先は様々でしょう。校長かもしれないし、教育委員会かもしれません。
教育長に直接メッセージを送るべきかもしれないし、首長に声が届くようにすべきかもしれません。
いずれにしても、「先生方が様々なことに挑戦すれば何か起こるでしょう。
その何か起こった時こそ保護者の出番です!」と伝えてくださることは、きっと学校や先生の力になります。
話を世田谷区教育推進会議に戻しましょう。会議の場で、小学校・中学校の実践を紹介するムービーが流れたのですが、その中で小学生が言っていました。
「メッセージを先生にしか送れないんですよね。友達にも送りたいです」
これ、子どもの願いとしてはとてもよくわかりますよね。
しかし、先生としては心配が先に立ってしまうところでもあるのです。
その一歩を踏み出せるかどうかは、保護者の皆さんの「何か起こった時は保護者が支えます!」という一言かもしれませんよ?
次回はいよいよ最終回。私が力を入れて取り組んでいるインクルーシブ教育について書いてみたいと思います。
東京学芸大学附属小金井小学校(東京都小金井市)
国立大学法人東京学芸大学の4校ある附属小学校のひとつ。
大学と同じ小金井キャンパスの一角に位置している。
伝統的に教科教育研究が盛んで、全教科で授業を公開する3年に一度の研究発表会には、全国から1,000人を超える教員が集まり、熱い議論を繰り広げる。
近年はICT×インクルーシブ教育の研究・実践を盛んに進めており、コロナ禍でもオンラインセミナーやYouTubeチャンネルを通じて積極的に情報発信を行なっている。
Watch Headline,鈴木秀樹(東京学芸大学附属小金井小学校教諭)
〔2020年12/2(水) Impress Watch〕 

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