●11号-文通希望せず  TVゲームと子ども

梶原圭介 [神奈川県相模原市 男 27歳]

 私もファミコン世代の真只中を生き、その影響も人並みに受けてきました。私にとってのTVゲームとは何かを考えてみました。

 TVゲームに心の慰めを見出すことは、大人と言われる人々が喫煙したり、飲酒したり、ドライブに行ったり、ギャンブルに埋没したりすることとほぼ同じ心理作用をもたらすものだと思います。即ち神経を緩和させ、非日常の世界に埋没することによって日常生活の中の辛い現実を、束の間、忘れさせてくれます。頭の中を空っぽにできる時間を提供してくれる精神的ストレスのガス抜き装置のような効用もあります。

 その反面、全ての嗜癖がそうであるように依存症と心身への悪影響が生じる場合もあります(特に視力の低下が眼に与える悪影響は未知数だと思います。)心に寂しさを抱えた人が麻薬に走る心理と本質的には似ていると思います。

 ただその程度が違うというだけであって、動機は好奇心から始まり、夢中にさせてくれて、その代償として精神的充足感が得られる。その代わりに思考する時間、孤独に向き合い自己を深める(読書など)内面作業をしなくてはいけない時に容易にそれらからの逃げ道となります。特にひきこもりや不登校の人たちによっては、現実を直視することが余りに辛いときの心のオアシスとなってくれる場合もあると思います。

 ただTVゲームのなかの世界とは、あくまで疑似体験であって、その中で得られる自分の欲望を満たす行為は、現実のなかで得られなかった欲求の代替でしかありません。本心からの満足は得られないと思います。

 仲間をつくる、恋愛を楽しむ、性欲を満たすなど、自分が現実の世界で達成することが困難な欲求の代替えを提供してくれます。擬似的にコンピュータのなかで自分の寂しさを埋めようとする場合もあると思います。何といってもその世界の中では何でも自分の思い通りになり、自己の万能感を満足させてくれるのですから(それが子どものエゴを増長させてしまうことにもつながると思います)。

 しかし私はやはりTVゲームが子どもたちから外で遊ぶ時間を奪い、孤独を奪い、現実の体験を少なくさせていることに、危機感を覚えます。そして大人たちの余りの無責任さに憤りを覚えます。

 子どもの好奇心を刺激し、子どもをターゲットにしたマーケティングを展開し、その責任については全く負おうとしない業界は余りに無反省過ぎます。みんなが楽しんで喜んでいるのだからイイじゃないかという理屈は、子どもに身体に害毒のある添加物を加えた甘いお菓子を与え続けていることと一緒です。

 TVゲームは、ほどほどにやる分には、リラックスをもたらし、仲間とのコミュニケーションを図れる手段にもなるし、現実からしばしの開放感を与えてくれます。

 しかしまだ自分をコントロールすることの難しい時期に子どもに安易に買い与えてしまうのはどうかと思います。

 ちなみにTVゲーム歴11年の私にもし子どもができたら、私は子どもが成人するまではTVゲームは買い与えません。たぶん、一緒に山に行ったりすると思います。

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