僕は今でもよくフラッシュバックする光景が幾つかあり、その中でも運命共同体のように、常に僕のそばから離れないシーンがあります。

それは、僕が小学校高学年の頃まで遡ります。僕の家は６歳年の離れた姉がいる４人家族で夫婦仲の悪い家庭でした。当時の父親は子供の僕から見ても変わった人で、外見は初老のような風貌なのに、子供っぽくて気に入らない事があるとすぐにかんしゃくを喚きちらしたり手を挙げたりしていた人で、僕はいつもビクビクしていました。

その反面、もの凄い小心者で人付き合いはあまり得意ではないようで、人によっては卑屈になったり横柄な態度をとったりと対等な付き合いがとれない人のようでした。

母親に対し束縛心がとても強く一緒にいないと不安らしく、ある時婦人服の店舗移動販売という自営業を一人でやっていた父親が母親に「一緒に手伝わないと俺は働かない」と言い出し、結局夫婦で外に働きに出るようになってしまい、僕は小学校途中から鍵っ子になって何とも言えない寂しさを憶えた記憶があります。

夕方になると仕事から車で夫婦揃って帰ってくるのですが、いつも険悪ムードが漂い僕はよく緊張しながら出迎えたものです。その緊張感漂うなか夕飯を食べ、その後になると父親のいないところで母親が父親の不満を子供にぶちまけると言うことが日常茶飯事になってました。父親対母親と子供２人という形で父親を悪役にし、不安定な家族バランスを築いていたのです。

僕はそんな父親を軽蔑し馬鹿にしていたのですが、どこか寂しい人だなという感じもしてました。

母親は犠牲者で父親は加害者のような夫婦関係だったので僕は母親を守ろうとゆう気持ちが強くあり、その頃は思いきり偏った正義感を振りかざしてたように思います。

そんなある日、いつものように夕食後母親の不満が爆発。こんなはずではなかった、あのお父さんとは一緒にいたくない等の不満を聞いているうちに、僕は意を決して母親に言いました。「もういいよ、お母さん、離婚しようよ、」と。

すると母親は「うんそうだね、でももし離婚することになったらあんたは置いていくよ」

「お姉ちゃんはもうすぐお金がかからなくなる年齢だから連れて行くけど、あんたはまだまだお金が掛かるから女の私じゃ養えないの、だからお父さんのところに置いていくよ」

「あんたがいるからこうして離婚しないで頑張ってるのよ、」と。

このことが、今でも僕のそばから離れないのです。

もちろん僕は、母親に一緒について行くつもりだったのです。

その時はのも凄い裏切られ感、見捨てられ感、孤独感、そして僕がいなかったらという自分への存在否定、今まで頑張ったのはいったい何だったんだろうという空虚感やしらけた感じがいっぺんに僕の心を埋め尽くして離人感覚になり、まるでその時は、映画でも見ているような感じがして、人ごとのようで怒りや悲しみが湧かず意外と冷静にその場をたち振る舞ったのを憶えています。ただその時は、もうこれからはピエロのように振る舞うしかないなという感覚が芽生えたのです。辛いときは明るくしてその場だけでも盛り上げよう、そして感情はそっちのけにして見捨てられないようにしようと。

その感覚が今も抜けないで僕の心のベースになっています。そしてすべての物事に対してその感覚が影響してどうにも息苦しくて仕方がないのです。

自分よりも周りの人の行動が気になり、その状況に自分を合わせてその場を何とか繕おうとしてしまい何時も気が気ではない精神状態なのです。

だから人と接するときは気づかれないように振る舞っていますが、いつも気を張っていて神経をすり減らしてへとへとになっています。大人という両親を好きになれずまた怖いために、他の大人にもその感覚がオーバーラップしてしまい大人という人種に恐怖心と嫌悪感を抱いてしまうのです。またお金のために捨てられそうになったり、精神的に振り回されたりという思いが強いのでお金に対しても嫌悪感を抱いています。

これが子供の頃からずっと続いて大人にはなりたくない、なれない、社会には出たくない、出られない、という感覚が支配していて大人になる前に死んでしまいたいという思いが強くのしかかっているのです。

それと、こういった事は良くある話でみんなそれぞれ克服しているものだ、でも僕は出来ない、なんて弱く駄目な人間なんだという思いも支配しているのです。

それでも大人といわれる年齢になり社会に出て、もがきながらも何とか生きていたのですが、３０歳を前に力尽きてしまい完全に引きこもり、社会から退却する生活を送っていました。

Vol.3に続く予定？(^_^;)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　土屋コナン

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