太田作品展その後
太田作品展その後TOP 太田勝己作品展によせて フォトギャラリー 2.25/26各種記録 太田作品展に取り組んで 太田勝己追悼文集作成へのよびかけ 不登校情報センター



太田ちゃんへ

約束していた個展の開催、ずいぶんと遅れてしまって本当にごめんね。
何とかみんなに手伝ってもらって、あったかみのある手作りの個展が開けました。太田ちゃんの難解な絵を組み合わせる作業、ああでもないこうでもないとみんなで一枚一枚探し当てるのは、まるで考古学者気分だったよ。
孤独が好きそうで、実は寂しがり屋な太田ちゃんが、みんなをもう一度集めてくれたんじゃないかって時々思う。今、天国でどんな気分ですか?

太田ちゃんに絵を初めて見せてもらったとき、正直言うと、自分の仕事がとっても忙しくなってきちゃってあんまり親身になってあげられなかったんだ。
 だけどあの時、「何だろこれ、ちょっと面白い絵だな」と思ったし、個展を開くことにとても興味はあったんだよ。それはうそじゃないよ。
「個展をやってみたいのはやまやまだけど、一体いつになったら私の体があくかなあ?」と考えていたのを敏感な太田ちゃんには見透かされていたのかな?私のいいかげんな態度に太田ちゃんは傷ついてしまったのか???と、自分を責めてばかりいる日がしばらく続きました。
 太田ちゃんが亡くなったという第一報を聞いたとき、ある人は「なんで!?ずるいよ!みずくさいよ!!」と怒り、ある人は「燃え尽きちゃったのかな?」と、同情した。私はそのどっちもだった。

 いろんな思いが交錯するけれど・・・太田ちゃんが青い色に固執していたのは事実。だって、二年ぐらい前に色を使った心理テストをやって、いくつものマルで円を描いている図があったんだけど、そのほとんどを青い色だけで塗りつくしたのは、太田ちゃん一人だけだった。 強烈な個性。
 清涼感があり、時に冷淡で、だけど不思議となつかしく、心が落ち着く色。 青。
太田ちゃんの心の中は、永遠に、永遠に、青そのものだったかもしれないね。
 太田ちゃんは単に先人の画家たちが自分の作品が世に知られる前に亡くなっているというのを理想としたかったんじゃないと、私は思う。
 「生きることは戦い」という人がいる。私も戦っているくらい生きてて辛いときもある。もう何もかも放棄したら楽なのかなあとも思うよ。だけど死ねないよ。どんなにブザマでも生きていく、それしかできない。
太田ちゃんの中に流れていた時間は、生きているとか、生きていないとかそういう次元じゃなかったのかもしれない。静かに自分なりの漂い方で、今ここにいたかったのじゃないかな?
 だから、時々ドツボにはまって落ち込んでいるブザマな私が目に付いたら、あの乾いた笑い声で笑い飛ばしてください。「『眠りイヌ』みたいに時々とまってみないと見えなくなっちゃうよ」ってね。


            

 平成18年2月23日   高山 嘉代子