<<報告>>
〜ひきこもりへの就労支援の現状〜      ―2006.7.16―


ひきこもりへの就労支援の現状  2006.7.16
ひきこもりへの就労支援の現状  2006.7.16

(1)「引きこもり」から「社会参加」まで
*少し強引に図式化しました(個人差が大きいことに留意)
	引きこもり状態	脱引きこもり期社会へのアプローチ	社会参加(自立的生活)
家族	家族との接触・交流       家族の応援家族との断絶                 別居(心理的分断)
対人関係コミュニケーション社会性	  なし(又は特定個人)…周囲の人への配慮                      会話がふえる…………………引っ込み思案  対人恐怖/対人不安……安心できる人…………数人の話のできる人                                   マイペースの感覚がつく強い孤独感                  意識して笑う・楽しむ    自然な笑いができる    感情表現が少ない(哀)しい                  感情コントロールが楽になる 無表情              怒りが出やすい無感情無気力  意志表現がわかりづらい……感謝はできる……断る・拒否できる……自由な意志表示が            (忍耐)                    出やすい
感情(+感覚→本能)	
意志(理性)	
行動(生活)	在室・在宅…………………………フリースペース参加  テレビ  ミニ外出…………スポーツ・音楽・趣味  ゲーム   図書館                   恒常的な仕事  PC    コンビニ  読書                   一時的バイト
社会的身分・状態	       学生(休学・不登校)…………………………………学生(復学・再入学)       無業者・中退者    ………… 求職中       引きこもり(ニート)      芸術・創作者                          フリーター  アルバイト                                 登録・派遣社員                                 正規就業者
支援方法	       訪問・家族サポート  フリースペース             親の会  宿泊施設   就業相談                         職業・技術訓練  医  療          カ ウ ン セ リ ン グ

(2)支援団体の状況
@ハローワークの前進型(東京しごとセンター、かつしかユースジョブ・センター…ジョブカフェ)
職探しを入り口に、対人関係づくりや技術指導に向かう。
A学校型(多くの若者自立塾)、個人が授業料等を支払う   終了し、職探し・就業。
B社会保障型(作業所など)、個人の公的生活援助を基盤にして、作業所等での就労と低い収入。
C自活指向型(あゆみ仕事企画、フルキャストグローイングスクール)
  作業量に応じた収入を得られ、自活的生活条件をつくる。SOHO、バイトの恒常化。
<<松田武己氏による話のまとめ>>

引きこもりの人の「就労支援の現状」のお話しをします。

現在、ニートや引きこもりの人への支援の形は様々あります。 支援の形を大きく4つに分けてみました。

@ ハローワーク、ジョブカフェなどの仕事探しの場
A 学校型で個人が授業料を払い、期間を設けて社会性(対人関係など)を身につける若者自立塾などの場
B 社会的な保障(生活保護や障害者年金)を基盤にして、作業所などで1日1000円程度の低い収入を受け取る、社会保障型
C 自活して社会生活を目指す、あゆみ仕事企画やフルキャストグローイングスクール などがあります。

Cの自活指向型は多少の会費等の費用は掛かりますが、作業量に応じた収入を得ることができます。
フリースペース的居場所も確保されているので引きこもりの人達が自分のペースで対人関係や社会生活を学びながら働くことが出来ます。

引きこもりの人の状態は人それぞれです。
@の仕事センターで対応出来る人もいれば、そうでない状態の人もいます。

 では、仕事センターで対応出来ないようなケースであった場合どうやって自分なりに自立に向けての力を付けていったらいいか考えてみます。

 まずは安心できる場、人を見つけることです。
引きこもりの人には友人がいないということは少なくありません。
こういった場合、安心できる場所や人は家庭であり、親であっても良いと考ます。
 親は子どもの話しをくだらないと時に判断してしまうこともあるかもしれません。しかし子どもは自分の話しを否定されるとだんだん喋らなくなってしまうのです。
無意識のうちに話しても無駄だと判断してしまうためです。まずは子どもの話しを聞いて、子どもが安心して自分を出せる場所を作っていくことが大切だと思います。

 人が生きていく上で1番大切なのは「感情・本能」だと思います。
引きこもりの人は子どもの頃から感情を押さえ込んできた傾向があります。感情には「喜怒哀楽」がありますが、この中でも『怒り』の感情を抑える力が強いように思います。対人不安のおおもとは『怒り』の感情を抑圧してきたことによります。『怒り』の感情を抑えてしまうと次に感情を出すことが難しくなり行動を起こせなくなってしまうのです。

 理性で自分の感情を抑えようとせず、『怒り』であってもありのままの自分(感情・本能)を表現していくことが大切なのです。
参加者の感想



人の話を聞くのは、簡単そうで難しいと思った。ここに来る人たちは、悩んでいるのだけれでも、結局、何もできない自分の無力さを感じる。
 私は、体調が優れず、辞職スレスレの状態で、ここに来れば、少し楽になれるかなと思った。悩んだら、あせらず、自分にとって、良いと思ったことをしてみるが良いと思う。

松田さんのお話しは、大変参考になりましたし、その後のグループディスカッションも、議論が白熱して大変良かったです。

毎回いろいろな方がいらっしゃり、それぞれの悩みを話し合って、楽になったり、こんなにたくさんの人が苦しんでる状態ってなんなんだろうと不安になったり・・・。
 みんな早く抜け出せるといいです。

いろいろ聞けて参考になりました。

今の引きこもりの若い人が、どうなっているのかという事実を知れてよかったです。

「当事者の外から見えない部分(対人関係・感情)」に親や支援団体は目がいかない。
 不登校・引きこもりの子と親との関係に限らず、普通の親子関係・教師と生徒の関係・上司と部下の関係等にも言えることであると気付かされました。
 (「上の者」は、「下の者」を社会に適応し、能率や流れを支えるようにさせるという役目を負っている以上)、「上の者」はどうしても「下の者」のそういう部分には目がいかないし、目がいってもどうすることもできないのが現状(現実)です。
 しかも、本質的に「上の者」という立場と「カウンセラー」という立場とは、両立しないものです。
 「人を育てる」という営みを行う者は、理性や幻想(やればできる・通じる等の精神論)で動くのでなく、しっかり飲みこんだ上で取り組み、実践を重ねるという基本姿勢が必要なのだと感じました。
 これがないままの「人を育てる営みは必ず失敗するでしょう。