51. 春

うららかな春の日は
たおやかに花も咲く

吹く風に窓辺はふくらみ
まどろみをさます冷ややかさ

夢見るような空気の揺らぎ
闇をもはらむ光にあふれる

沈黙が
しなやかに這うようで

遠くひびきゆく
雑踏のさざめき

くり返される自然の呼吸は
たとえば
今日という春の日のなつかしさ

くり返さない宇宙の波は
今日という日の
あまりの小ささにうねりを増す

見えない闇
聞こえない沈黙
触れることのない不在

なお香る
はかない春の花々の
甘くすっぱく澄みわたる匂い

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