181 交差する点

3月 2nd, 2024  / Author: 中崎シホ

眠りたくない夜毎

闘うように飲み続け

目覚めたくない朝

眠らない夢を見続けて

 

亡くていい

記憶も思考も

なくなればいい

 

幻か現実か

そんなことは問題ではない

あるのは

脳内をめぐる電位の

確かな存在

 

息もままならぬ

希薄な空気のなか

世界と交差する

その地点へ

ふと踏み込んだり

遠く見失ったり

180  音もたてずに

2月 4th, 2024  / Author: 中崎シホ

目覚める人は

音をたてない

声をださない

 

沈黙の

奥深くへ

思考の

流れ遠くへ

 

伝えない

ということが伝わる

繋げない

ということに繋がる

 

共感という対他性

感覚は

分かちあえるか

内観という対自性

観ること

ただそれだけいやそれさえ

179 五感の深部

1月 6th, 2024  / Author: 中崎シホ

真っ暗なのは

見えないのではない

闇を見ている

 

無音なのは

聞こえないのではない

沈黙を聞いている

 

不毛なのは

生きていないのではない

死を生きている


 

広い視野と

澄ます耳

舌は渇えて

身をさらし

懐かしい匂いに

包まれる

178 紙封筒

9月 2nd, 2023  / Author: 中崎シホ

紙封筒に

足を

すべり込ませる

 

乾いたシーツのように

こもる体温

あるいは

薄っぺらな閉塞

 

体を覆う

紙一枚

 

意識なきまま

文字もなく

どこへともなく

なにかを送る

 

どこへゆくにも

身のひとつ

 

閉ざされたまま

開かれることは

あるのだろうか

177 四苦八苦

8月 1st, 2023  / Author: 中崎シホ

生まれ落ちて

老いてゆきつつ

病んで臥せて

死に臨む

 

愛から離され

怨みと会わされ

求めを得られず

五感の盛り

 

苦はなにか

世の中の苦を

文字の列にして

あらわす意味

 

意味の無意味さ

すべては

わからなくていい

感じて摑みたい

176 最後の仔

7月 1st, 2023  / Author: 中崎シホ

ハンドサインで

助けを求めた

サインの意味も

知らないまま

 

宇宙内外の

はるかどこかに居るはずの

僕の親玉に

サインを送る

 

見放された仔の

無力と絶望

 

彼方からくる

暗示ももはや

途絶えがちで

 

混沌のうちから

この生を受けるも

生まれ落ちた衝撃で

使命も指令も

そんなものがあったのかさえ

忘れてしまった

 

そうして僕は

つぶされる

全身全霊

つぶさに滅びる

 

あなたの

最後の仔になる

覚悟はすでに

できていたのに

175 孤独のうた

6月 1st, 2023  / Author: 中崎シホ

孤独

個の毒

ことごとく

 

苦悩

愚の脳

このうえなく

 

恨み

うらやみ

暗闇のなか

 

夢想

無の相

嘘うたう

 

存在

その際

空ぞらしく

 

そののち

祈る価値