164 それでも今は
7月 2nd, 2022 / Author: 中崎シホ死の想起
誰の中でもそれは
不意に頭をもたげる
胸の奥から こみあげる
苦いかたまりが
のどをふさぎ
徐々に
体中を圧迫してゆく
苦しみというより
ただ苦味
得体のしれない
体内感覚
表現しがたい
身心体験
命のきわの
像を結んで
心に映して
それでも今は
生きている
164 それでも今は7月 2nd, 2022 / Author: 中崎シホ死の想起 誰の中でもそれは 不意に頭をもたげる 胸の奥から こみあげる 苦いかたまりが のどをふさぎ 徐々に 体中を圧迫してゆく 苦しみというより ただ苦味 得体のしれない 体内感覚 表現しがたい 身心体験 命のきわの 像を結んで 心に映して それでも今は 生きている
163 かすかな流れ6月 2nd, 2022 / Author: 中崎シホくだらぬ事に 心をくだく 苦肉の策は くくる首 飢餓感きわまり 気分のきしみ 危機一髪で 奇跡が起きて 来ぬ日この時 幸福さがし 困難こえつつ 混沌の中 堅たる健全 蹴りとばし 喧嘩上等 けりをつけ 川は乾いて からから鳴って 霞んだ世界が 幽かに流れる
162 あしたの地図5月 2nd, 2022 / Author: 中崎シホ横たわる 目を閉じる 頭の中が巡る 眠ってるというよりは 潜ってる感じ 夢を見るというよりは 見られてる感じ 潜っては浮かぶの くり返し 深い呼吸の くり返し きのうは読むもの あしたは書くもの きのうは聴くもの あしたは歌うもの 眠りと目覚めを 行き来する道 描いた地図 ポケットに入れたら 出かけよう
161 抒情の蒸発4月 2nd, 2022 / Author: 中崎シホ忘れかけてた 傷あとが ここぞと目を覚ます 脳か心か身体か どこともいえない 傷がうずく 心の鼓動 血の流動 狂い咲く花 狂い飛ぶ虫 生い茂る草 追掛ける風 傷はなめない 目は 濡らさない 湿った抒情を 排除して 風に吹かれて 脳裡がかわく
真なるもののみ 結晶する 160 螺旋の日と夜3月 2nd, 2022 / Author: 中崎シホ自由の匂いがする 日暮れの風 孤独の味がする 街の夜気 ひとり日と夜 時が流れる
日に光るジンロックの 背徳性 灰色の地に落ちる 北向きの窓 かつての日と夜 同じ空気の肌ざわり
あの日と夜を つなぐのは 眠りのような 意志なき意識 空白の日と夜が 再び色を 持ちますように
日と夜はくり返すも 同じ所を まわるのではなく 螺旋状に移りゆく 159 夜の裏2月 2nd, 2022 / Author: 中崎シホまぶたの裏の 黒いモクモク 幼少時代の 夜のモクモク 闇が闇でない 暗がりの中 朝は遠く 眠りは祈り 黙々と進む イニシエーション 夢中へ入る 最後の一歩 闇にうごめく 見えない雲 目を閉じたら 迫りくる 不安な夜の まぶたの裏 158 無の教室1月 3rd, 2022 / Author: 中崎シホ生きてる夢から 目覚めてみれば そこには誰も いないだろう くたびれた教室のような 薄暗い空間 寄り合う面々 それぞれの夢 彼らは目覚めて 立ち去った 夢が死ぬとき 僕らは目覚める 目覚めた僕らは 夢を知る 眠りすぎて 生きすぎて デジャヴだらけの 世界のほころび 夢からの 微妙な合図を 受けとって 読み取れないまま 現実という曖昧さ そして あの教室で 誰も僕を待っていない |