Archive for the ‘詩’ Category

166 まぼろし家族

木曜日, 9月 1st, 2022

聞こえるはずの

ない声

感じるはずの

ない気配


帰るところのない独居は

どんな気がする


固定される空気

空間は閉ざされ

時間はとどこおる


真夜中のキッチンは

いつもそのまま

あるがまま


一人になる時間を

待っていた

人の気配の

消える真夜中を

待っていた


いつまでそれが

続くだろうか


いずれ

取り返しが つかなくなる日

ある意で

その支配から 解かれるとき


本当の自由と孤独が

交じり合って

頭をもたげる

165 たったひとつの強み

月曜日, 8月 1st, 2022

人の世界では

何者かであらねばならない


そして僕は

何者でもない


先生

僕は


患者ではない

信者ではない

生徒ではない

担当ではない

愚民ではない


先に生きる

あなた方の

導くところを期待しない


僕が潰れても

何も問題はなく

それが

たったひとつの強み


僕は

何者でもないのだから

164 それでも今は

土曜日, 7月 2nd, 2022

死の想起

誰の中でもそれは

不意に頭をもたげる


胸の奥から こみあげる

苦いかたまりが

のどをふさぎ

徐々に

体中を圧迫してゆく


苦しみというより

ただ苦味


得体のしれない

体内感覚


表現しがたい

身心体験


命のきわの

像を結んで

心に映して


それでも今は

生きている

163 かすかな流れ

木曜日, 6月 2nd, 2022

くだらぬ事に

心をくだく

苦肉の策は

くくる首


飢餓感きわまり

気分のきしみ

危機一髪で

奇跡が起きて


来ぬ日この時

幸福さがし

困難こえつつ

混沌の中


堅たる健全

蹴りとばし

喧嘩上等

けりをつけ


川は乾いて

からから鳴って

霞んだ世界が

幽かに流れる

162 あしたの地図

月曜日, 5月 2nd, 2022

横たわる

目を閉じる

頭の中が巡る


眠ってるというよりは

潜ってる感じ

夢を見るというよりは

見られてる感じ


潜っては浮かぶの

くり返し

深い呼吸の

くり返し


きのうは読むもの

あしたは書くもの

きのうは聴くもの

あしたは歌うもの


眠りと目覚めを

行き来する道

描いた地図

ポケットに入れたら

出かけよう

161 抒情の蒸発

土曜日, 4月 2nd, 2022

忘れかけてた

傷あとが

ここぞと目を覚ます


脳か心か身体か

どこともいえない

傷がうずく


心の鼓動

血の流動


狂い咲く花

狂い飛ぶ虫


生い茂る草

追掛ける風


傷はなめない

目は

濡らさない


湿った抒情を

排除して

風に吹かれて

脳裡がかわく


そして

真なるもののみ

結晶する

160 螺旋の日と夜

水曜日, 3月 2nd, 2022

自由の匂いがする

日暮れの風

孤独の味がする

街の夜気


ひとり日と夜

時が流れる


 

日に光るジンロックの

背徳性

灰色の地に落ちる

北向きの窓


かつての日と夜

同じ空気の肌ざわり


 

あの日と夜を

つなぐのは

眠りのような

意志なき意識


空白の日と夜が

再び色を

持ちますように


 

日と夜はくり返すも

同じ所を

まわるのではなく

螺旋状に移りゆく