Archive for the ‘詩’ Category

183 消えるうた  

金曜日, 5月 3rd, 2024

リズムをとる歯

おどる舌

口びる震えて

言葉は無くて

 

リズムのうちに

はさむ休止符

打って休んで

消えゆくうた

  

眠らぬ夜は

すでに過ぎ

覚醒のまま

深みに落ちてく

 

絶望的に

切望するのは

いま在ることの

真実味

 

ゆめのような

まことのかずかず

つぎはぎだらけの

文字の列


 



182  泥

月曜日, 4月 1st, 2024

漆黒だ

純白だ


闇夜はつねに

うごめいている


光の朝は

来る度ちがう


 

闇も光も

一色ではない


 

泥のように

涙を重ね


 

頭の中の泡が

パチパチ弾け


 

いつものように寝て覚めて

泥の中から目醒めを手繰る



181 交差する点

土曜日, 3月 2nd, 2024

眠りたくない夜毎

闘うように飲み続け

目覚めたくない朝

眠らない夢を見続けて

 

亡くていい

記憶も思考も

なくなればいい

 

幻か現実か

そんなことは問題ではない

あるのは

脳内をめぐる電位の

確かな存在

 

息もままならぬ

希薄な空気のなか

世界と交差する

その地点へ

ふと踏み込んだり

遠く見失ったり

180  音もたてずに

日曜日, 2月 4th, 2024

目覚める人は

音をたてない

声をださない

 

沈黙の

奥深くへ

思考の

流れ遠くへ

 

伝えない

ということが伝わる

繋げない

ということに繋がる

 

共感という対他性

感覚は

分かちあえるか

内観という対自性

観ること

ただそれだけいやそれさえ

179 五感の深部

土曜日, 1月 6th, 2024

真っ暗なのは

見えないのではない

闇を見ている

 

無音なのは

聞こえないのではない

沈黙を聞いている

 

不毛なのは

生きていないのではない

死を生きている


 

広い視野と

澄ます耳

舌は渇えて

身をさらし

懐かしい匂いに

包まれる

178 紙封筒

土曜日, 9月 2nd, 2023

紙封筒に

足を

すべり込ませる

 

乾いたシーツのように

こもる体温

あるいは

薄っぺらな閉塞

 

体を覆う

紙一枚

 

意識なきまま

文字もなく

どこへともなく

なにかを送る

 

どこへゆくにも

身のひとつ

 

閉ざされたまま

開かれることは

あるのだろうか

177 四苦八苦

火曜日, 8月 1st, 2023

生まれ落ちて

老いてゆきつつ

病んで臥せて

死に臨む

 

愛から離され

怨みと会わされ

求めを得られず

五感の盛り

 

苦はなにか

世の中の苦を

文字の列にして

あらわす意味

 

意味の無意味さ

すべては

わからなくていい

感じて摑みたい