Archive for the ‘詩’ Category

51. 春

土曜日, 4月 6th, 2013

うららかな春の日は
たおやかに花も咲く

吹く風に窓辺はふくらみ
まどろみをさます冷ややかさ

夢見るような空気の揺らぎ
闇をもはらむ光にあふれる

沈黙が
しなやかに這うようで

遠くひびきゆく
雑踏のさざめき

くり返される自然の呼吸は
たとえば
今日という春の日のなつかしさ

くり返さない宇宙の波は
今日という日の
あまりの小ささにうねりを増す

見えない闇
聞こえない沈黙
触れることのない不在

なお香る
はかない春の花々の
甘くすっぱく澄みわたる匂い

50. 心の目

金曜日, 3月 8th, 2013

目を見て
と言われる

視覚優位の
人体の脳

脳の統制は
ある種の幻想

見るためには
もはや目を開かない

涙のためにだけ
目を開閉する

耳で聞いて
嗅ぐ鼻孔

舌の上の快感
身体中の触覚

すべてを開いて
すべてにつながる

目を見て
と言われるとき

わたしは目を閉じ
心を目にする

49. 三月

金曜日, 3月 8th, 2013

三月
去りゆく
悲喜こもごも
ひとりひとりの現実

惨状
寂しく
魅かれあっても
日に日に積もる孤独

さんざめく
とある喧騒
はかなく割れてゆく片々

さらばさる人
と挨拶もせず
離れ別れゆく面々

48. 西日

金曜日, 2月 22nd, 2013

西日に向かって
歩いてく

まぶしい光に
眼を伏せる

道の上に
日の残像

進むゆくさき
人しれず

明日が背後から
やってくる

肩をたたかれ
振り返る

前はどっちだ
空はひとつだ

日は暮れゆきやがて
夜更けと夜明け

47. うしみつどき

金曜日, 2月 22nd, 2013

健康的な朝を
求めてある
夜ではない

闇を味方にして
明けない夜のあげる
かちどき

夜風が吹いて
飛び散る星の
窓の外

日の出る朝を
待ち望んである
夜ではない

冷たい布団に
もぐりこむ
うしみつどき

闇夜のうなる
空と風の
仔である自己

46. 夜に住む人

金曜日, 1月 25th, 2013

光がないから
影もない
のっぺらぼうの空気の
暗闇
 

夜の住人の
かわいた息
脳天のおくを這う
黒い質感
 

夜のからだを
闇にあずけて
優しさと厳しさが
混交する
 

僕の住み処へ
いらっしゃい
夜はいつも誰にも
親しげだから

45. 言葉の墓標

金曜日, 1月 25th, 2013

音もない暗がりは
言葉のない世界だ

言葉のない世界とは
そう簡単なものではない

 

あらゆる感覚器の受容体の
スイッチをオフにして
体験する世界
とらえようのない間
対する客体のない主体

 

かつて詩人が
硬質な言葉によって
言葉のない世界を
反転表示のようにあらわした
それは今なお標しである

 

言葉によって
純粋精神はあらわし得るか

 

言葉によって
あらわすものは空虚でもある

 

言葉による構築
構築による言葉
自己解体に至る道

 

愚弄な言葉を
吐いては吸って
掃いては捨てて
言葉の墓標を立てつづける