Archive for the ‘詩’ Category

169 闇と光のあいだ

木曜日, 12月 1st, 2022

反自然的な

うつろな眠り


夜明けのまどろみ

夢ははかなく


消え入る夕暮れ

たどる空


目が冴え始める

宵の覚醒


明から暗へ

かつ暗から明へ


その境目に

くいこむ痛み


時間はうつろい

次元をまたぐ


そして

死生もまた

168 ルーツ

火曜日, 11月 1st, 2022

ギブアップを

何度合図しても

伝わらない

むこうから来る

暗示も

途絶えがちで


僕はもはや

見捨てられた


たどり着いた所が

遠すぎた


はるかどこかに

存在するはずの

僕の親玉

離れすぎて

もうその姿も

忘れてしまった


託されていた

世界の謎は

わからないまま


見放された僕は

拠って立つものもなく

死ぬも

生きるも

ただそれだけ

命の

過程も果ても

ただそのまま


大きなものに

潰される

何ものかに

まきこまれていく


まぼろし彼方に

なんでもない朝が

絶望とあいまってゆく

167 メッセージ

土曜日, 10月 1st, 2022

「何もかも無くなれ」

「ただただ死にたい」


またもメッセージが

頭にとどく


どこの誰だか知らないけれど

僕らはそれらを

共有している


受けとるメッセージに

疲れた夜には

真水のような

一筋の音の流れを

追いかけて

頭の中をしずめよう


見えないつながり

自己と他者の曖昧さ


自身が

生き残っている限り

この世界は存続する


生き残ることで

並行して在る

あまたの世界のうち

少なくともこの世界は

存続している

166 まぼろし家族

木曜日, 9月 1st, 2022

聞こえるはずの

ない声

感じるはずの

ない気配


帰るところのない独居は

どんな気がする


固定される空気

空間は閉ざされ

時間はとどこおる


真夜中のキッチンは

いつもそのまま

あるがまま


一人になる時間を

待っていた

人の気配の

消える真夜中を

待っていた


いつまでそれが

続くだろうか


いずれ

取り返しが つかなくなる日

ある意で

その支配から 解かれるとき


本当の自由と孤独が

交じり合って

頭をもたげる

165 たったひとつの強み

月曜日, 8月 1st, 2022

人の世界では

何者かであらねばならない


そして僕は

何者でもない


先生

僕は


患者ではない

信者ではない

生徒ではない

担当ではない

愚民ではない


先に生きる

あなた方の

導くところを期待しない


僕が潰れても

何も問題はなく

それが

たったひとつの強み


僕は

何者でもないのだから

164 それでも今は

土曜日, 7月 2nd, 2022

死の想起

誰の中でもそれは

不意に頭をもたげる


胸の奥から こみあげる

苦いかたまりが

のどをふさぎ

徐々に

体中を圧迫してゆく


苦しみというより

ただ苦味


得体のしれない

体内感覚


表現しがたい

身心体験


命のきわの

像を結んで

心に映して


それでも今は

生きている

163 かすかな流れ

木曜日, 6月 2nd, 2022

くだらぬ事に

心をくだく

苦肉の策は

くくる首


飢餓感きわまり

気分のきしみ

危機一髪で

奇跡が起きて


来ぬ日この時

幸福さがし

困難こえつつ

混沌の中


堅たる健全

蹴りとばし

喧嘩上等

けりをつけ


川は乾いて

からから鳴って

霞んだ世界が

幽かに流れる