Archive for the ‘詩’ Category

156 不思議な気分のつくり方

月曜日, 11月 1st, 2021

眠りたくない夜

目覚めたくない朝


クリアな沈黙

クールな発語


デジャヴはいつも

つかまえそこねる


一瞬の匂いのように

消え去ってゆく


名前のない感覚だけが

うっすらと残ったりする

155 彼らの彼方

土曜日, 10月 2nd, 2021

かくも生きづらかった

彼らの声を聞く


声さえ出せなかった

彼らの文字をたどる


文字さえ綴れなかった

彼らの沈黙を察する


自我はもはや

虫の息

消えてゆくのは

超えてゆくこと


人差し指を

天に向け

のぼり龍の鼻の先


腕を広げて

地に立って

降ってくるのはヤリの雨


地と天空の

はざまに生きて


無と存在の

彼方を目指す

154 動いてる

木曜日, 9月 2nd, 2021

一歩ずつでも

半歩ずつでも

一ミリずつでも

動いてる


進んでいるも

退いてるも

どちらにしても

動いてる


動いているのは

自分か時代か

世界か内界か


動かぬものは

きっと無い


波動を身に受け

血肉も動く


波動そのものになって

ここに在る

153 第三の道

月曜日, 8月 2nd, 2021

三人目の反存在


かろうじて

生かされて在る

名も無い生


先に立って

名を得た

二人の背を見て

一人こぼれる三人目


光を受けて

先行する者

闇を授かり

逆行する者


成長と再生

その

必然の世界を外れた

三人目の遠いまなざし


そしてこの

退行と消滅

陰なる世界の

絶え入るみちすじ


どのみち見えない

未知のゆきさき


命ののちの

おちる道

152 世界の本意

木曜日, 7月 1st, 2021

僕が

僕たる

僕の自我


なんて

要らない

知らない

くだらない


世界は仮りもの

あるいは

僕のつくった

僕だけのまぼろし


暗黙の気付きに

従って

ほんとうのことに

気付かないふり


ゆらぐ客観

ひそむ異界


ある道端では

暗示が落ちてる

行く先々では

合図と出会う


しかしながら

世界の本意は

くみとりがたく

畏怖を抱いて

途方にくれる

151  身体

水曜日, 6月 2nd, 2021

すべては

身体感覚による


憂鬱でさえ

殺意でさえ

身体感覚


自我さえ

発語さえ

身体感覚


それらを

司るかにみえる

脳神経こそも

身体だ


つねに

身体感覚にある

私たちに

その滅却は

生きたまま体験できるか


 

この身体感覚にある

死の不安


身体を

失いゆくとき

魂は発現するか


祈りにも似た

なにものかは

身体を超えて

ゆくのだろうか

150 詩人像

日曜日, 5月 2nd, 2021

うすい光の

澄んだ目をした

うたごえの人


 

つねに深みから

言葉を発する

ことだまの人


 

幻覚

幻聴は

病ではない


 

その体験は

病どころではない


 

疾走する文字

記号や点線


 

話す言葉や

仕草さえ

ことごとく詩である

奇跡の人


 

      (Y氏へのリスペクト)