Archive for the ‘詩’ Category

76. 疲弊する夢

金曜日, 2月 6th, 2015

何もしないのに
疲れきって
眠る夜

見る夢にさえ
疲れをおぼえる

激しく湧出した
夢見はもはや
余韻のような
残滓のみ

やせた土
うすい大気
すけて見える
時間の壁

疲れた金属のような
硬くももろい
心象の
崩れゆきそうな世界

心身の
最期が兆すと
明晰な
夢が
疲弊していく

75. いのち

木曜日, 1月 8th, 2015

視界も
音もなく
匂いも
味もなく

固い枕と
軽い布団の
身に触れることだけに
意が集中する

意するところ
過去未来はなく
今現在の
一瞬一瞬

間隙なき
感覚
機械的な
器官

眼耳鼻舌身意
生きる実相
六根
六つ目の

意とは何か
脳か
胃の血か
心臓か

その自らの身を
裡返し
広げて晒して
血を乾かす

74. 失われた人

金曜日, 12月 5th, 2014

世の人びとが
忘れ去る
ひとつの生を
受けている

何者でもない
宿命しょって
止むに止まれず
生きづらさ

すれ違う
路傍の人びと
石ころどうし
外す目線

見失うこと
もとより無の如
失われること
消える自己

関係性の
無きままに
かすかな引っ掛かりに
心を砕く

僕はいったい
どこへゆくのか
生きる世の人
失われた人

73. 十一月

火曜日, 11月 11th, 2014

天気は病みあがり
光が降って
かろうじて息を
吹きかえす

空気は冬じたく
影が伸びて
ひそやかに息を
吐いて吸う

世界の境が裂けるとき
時は遠く
ときはなたれて

抜き差しならぬ
世界はそうして
ぬりかえられて

72. 窓を開く

金曜日, 10月 10th, 2014

窓をあけるように
テレビをつける

人に会うように
ネットをつなげる

手紙をかくように
独りをつづる

扉をあけるように
脳ミソひらく

いくら開いても
広がらない心

あけっぱなしなのは
ただ明るく冷たい画面のみ

窓は閉ざされ
部屋は暗く

窓を開くことは本当は
本当に困難なことだった

71. 言葉に力を

金曜日, 9月 5th, 2014

言葉は
意味より
力技

繊細
かつ
大胆に

文字の羅列に
力を吹き込み
放つこと

行間に
力を含ませ
表すこと

はりぼての
修飾を剥ぎ
骨を出す

言葉の骨を
咀嚼できる
強い力を

70. あの夏の日々

金曜日, 8月 8th, 2014

緑波立つ
一面田の面
太陽真上に
正午の沈黙

見どき葉の月
一よう多様
大気の底で
焦土の地が沸く

あの夏の日々
われを失う
瀕死の乱心

あの夏の日々
割れる脳内
非自己の氾濫