Archive for the ‘詩’ Category

55. 埋もれ木

金曜日, 7月 5th, 2013

世界の片隅に
埋もれて
つらつら物思い

世間しがらみ
離れて
ふらふら風来坊

生きているうち
埋没しそうな
絶望的切望

生かされてるうち
観じるような
実在的不在

求める
ひと言
クールでクリア

埋もれる
言の葉
シュールでドライ

54. 風景

金曜日, 5月 24th, 2013

遠くの山が
見える日は

空気も澄んで
はりつめる

景色を切り取る
窓の枠

部屋の暗がり
差す光

窓の向こうへ
踏み出せば

額縁のない
風景画

溶け込みたくて
自我を消す

我執を消すこと
ままならず

足の向く先
空の中

風が吹いては
飛ぶ心

53. 感覚質

金曜日, 5月 24th, 2013

過剰な感覚
直観の感受
表出する感情

抒情を排し
かわいた言葉に
質感そそぐ

覚醒のとまどい
覚知を求める
覚悟の日々

身をけずり
心めぐらせ
目覚めよ叡知

硬質の言葉
良質の音楽
粘着質の情感

さまざまな性質
言語化できない
感覚質をとらえよう

52. ひと泡

土曜日, 4月 6th, 2013

自由という
苦境
自我という
魔物

奔走する
道程
翻弄される
生命

この身は
いったい
なにものか

なにものでもない
混沌のうちの
ひと泡

51. 春

土曜日, 4月 6th, 2013

うららかな春の日は
たおやかに花も咲く

吹く風に窓辺はふくらみ
まどろみをさます冷ややかさ

夢見るような空気の揺らぎ
闇をもはらむ光にあふれる

沈黙が
しなやかに這うようで

遠くひびきゆく
雑踏のさざめき

くり返される自然の呼吸は
たとえば
今日という春の日のなつかしさ

くり返さない宇宙の波は
今日という日の
あまりの小ささにうねりを増す

見えない闇
聞こえない沈黙
触れることのない不在

なお香る
はかない春の花々の
甘くすっぱく澄みわたる匂い

50. 心の目

金曜日, 3月 8th, 2013

目を見て
と言われる

視覚優位の
人体の脳

脳の統制は
ある種の幻想

見るためには
もはや目を開かない

涙のためにだけ
目を開閉する

耳で聞いて
嗅ぐ鼻孔

舌の上の快感
身体中の触覚

すべてを開いて
すべてにつながる

目を見て
と言われるとき

わたしは目を閉じ
心を目にする

49. 三月

金曜日, 3月 8th, 2013

三月
去りゆく
悲喜こもごも
ひとりひとりの現実

惨状
寂しく
魅かれあっても
日に日に積もる孤独

さんざめく
とある喧騒
はかなく割れてゆく片々

さらばさる人
と挨拶もせず
離れ別れゆく面々