Archive for the ‘詩’ Category

58. 夏の夜

金曜日, 8月 23rd, 2013

僕らは暑い夏の夜
安い酒をあおっては
語らいつづけたものだった

僕はといえば
汗をかき
粘液質の肉体感覚に
いらだったりもしたものだ

君はといえば
汗もかかず
すっきり笑って
余計に僕をいらだたせた

しかしこんな暑い夏の夜
僕にはやはり君しかいなくて
君に語りかける幻想を
はっきり目覚めていながら
この肉体に体験していた

しかしながら
君には
言葉がなく名まえもなく
存在そのものさえ
とらえどころなく

肉体感覚にさいなまれながらも
言葉にしか生きられない僕は
君のことを
孤独とか虚無と
名付けざるを得なかったんだ

57. 遠い坂道

金曜日, 8月 23rd, 2013

遠い坂道
えっちらおっちら
道に迷って
あっちだこっちだ

先は行止まり
がっかりがっくり
重い足どり
ゆっくりじっくり

電車の足音
がったんごっとん
時計のささやき
ちっくんたっくん

解きたい問題
やっぱりさっぱり
時の輪郭
くっきりきっかり

陽と土草の匂い
ふっくらたっぷり
日暮れの空は
ひっそりとっぷり

56. 旅

金曜日, 7月 5th, 2013

「旅人よ
うしろには
できたばかりの
道がある」

道はあるけれど
道は何も語らない
歩いてきた道を
ふり返って見つめたりはしない
つぎの一歩をふみだすたびに
その前の一歩は
荒野のなかにうずもれていく

旅人よ
うしろには
なんの思想ももたない
地平線が一本

旅人には
ちょっとした過去があり
困難をはらんだ未来があり
そして
そんな過去も未来も吹きとばす
強烈な
現在の一秒一秒が
重く落下し
軽やかに流れ
意味ありげにせん光を放つ

55. 埋もれ木

金曜日, 7月 5th, 2013

世界の片隅に
埋もれて
つらつら物思い

世間しがらみ
離れて
ふらふら風来坊

生きているうち
埋没しそうな
絶望的切望

生かされてるうち
観じるような
実在的不在

求める
ひと言
クールでクリア

埋もれる
言の葉
シュールでドライ

54. 風景

金曜日, 5月 24th, 2013

遠くの山が
見える日は

空気も澄んで
はりつめる

景色を切り取る
窓の枠

部屋の暗がり
差す光

窓の向こうへ
踏み出せば

額縁のない
風景画

溶け込みたくて
自我を消す

我執を消すこと
ままならず

足の向く先
空の中

風が吹いては
飛ぶ心

53. 感覚質

金曜日, 5月 24th, 2013

過剰な感覚
直観の感受
表出する感情

抒情を排し
かわいた言葉に
質感そそぐ

覚醒のとまどい
覚知を求める
覚悟の日々

身をけずり
心めぐらせ
目覚めよ叡知

硬質の言葉
良質の音楽
粘着質の情感

さまざまな性質
言語化できない
感覚質をとらえよう

52. ひと泡

土曜日, 4月 6th, 2013

自由という
苦境
自我という
魔物

奔走する
道程
翻弄される
生命

この身は
いったい
なにものか

なにものでもない
混沌のうちの
ひと泡