Archive for the ‘詩’ Category

34. 今

土曜日, 7月 7th, 2012

今をひとつ
今をひとつと
拾っていく

両手に抱えても
指のあいだから
こぼれ落ちていくもの

拾った今は
手に取る途端に
今ではなくなる

過去は
記憶として変質し
未来は
夢と挫折を先走る

過去と未来は
空虚にふくらみ
現在はおしつぶされそうだ

それでもなお
この一瞬間にあふれる
今という世界の権現

眼こ見開き
掌ひろげて
待ちつづけている
永遠の今

33. 覚醒する幾千の日と夜

土曜日, 7月 7th, 2012

静寂の中
聞こえぬ音が
漂っている
リアルな凹凸
まだ見ぬ実体

見はなされ
おびやかされ
晒された者の
裏返る脳裡
粘液質のものが痛々しく
外気に触れられてゆく

これが静寂
聞こえぬ音に遊ばれて
異形の世界へおりてゆく
これが静寂
見えぬ物に誘われて
異形の世界へおりてゆく

覚醒は
約束されたか
未知なるものの
うごめく波は
交信可能か不可能か

今はただもう
バラバラになった内容物を
かき集め縫い合わす
血のつまった布袋のように

32. 意味深深

金曜日, 6月 8th, 2012

心きゅうきゅう
キュウキュウ鳴いて
きゅうきゅう詰め

頭くるくる
クルクルめぐり
来る狂う気配

体きりきり
ギリギリいっぱい
きりきり舞い

魂しんしん
心身の
深深なる意味

31. 問い

金曜日, 6月 8th, 2012

扉をたたいて
問いつづけよう

自己意識が
身体を所有するのか
身体によって
脳の働きが派生するのか

魂の世界が
形而上の何かが
あるのか
物は物たりて
物質世界がすべてなのか

二元論も一元化も
信仰も無神論も

問いも答えも不完全

生のどまん中での煩悶は
死による恩恵を受けるだろうか

生死を揺さぶる重い問い
今ここ自己の重い問い

考えなくてもよいのだと
大なるものにゆだねよと
さとされても自ずから
考えざるを得ない日々

30. 待つ人

金曜日, 5月 11th, 2012

ぼくは待つ人
何を待っているかも
わからないけど
ぼく待っている

待つもの来ずとも
待つ心のありかたで
有為も無為も
意味をなし得る

意味といえども
無意味な本質
本質といえども
待つべきものか

時間的流れ
空間的広がり
身をまかせること
あらがうこと

待つ時間空間
つぶれる期待も
つのる不安も
ぼくの心の真相

ふたつの眼
ふたつの腕
いくつかの心
広げてぼくは待っている

29. 白紙をステージに

金曜日, 5月 11th, 2012

ヒマラヤほどの消しゴムひとつ
ミサイルほどのペンを片手に
と歌う

キーボードで打つ
明朝体より
紙の上で躍る文字

走り書きの痕跡を
つまづきながら
歩いて見る

言葉は
書いた途端
死ぬか生きるか

小さな声をつむぎ
ペンと消しゴムで
拡声する

紙の上をステージに
消えゆくさだめとして
文字の羅列

28. みち

金曜日, 4月 13th, 2012

かわにそうみち
さんぽみち

もんしろちょうが
とんでいる

しだが
はをきしらせる

たけはすっくと
たっている

やぶのなかは
しんとくらやみ

いくみちのさき
ひとしれず

せっせせっせと
あるいてく

くうきはさらり
ふくかぜからり

まひるのてんとう
あおいそら

みえるこうけい
みえないかげ

かんじるままに
かんじられ

みちはみちなりに
じねんなり