Archive for the ‘詩’ Category

160 螺旋の日と夜

水曜日, 3月 2nd, 2022

自由の匂いがする

日暮れの風

孤独の味がする

街の夜気


ひとり日と夜

時が流れる


 

日に光るジンロックの

背徳性

灰色の地に落ちる

北向きの窓


かつての日と夜

同じ空気の肌ざわり


 

あの日と夜を

つなぐのは

眠りのような

意志なき意識


空白の日と夜が

再び色を

持ちますように


 

日と夜はくり返すも

同じ所を

まわるのではなく

螺旋状に移りゆく

159 夜の裏

水曜日, 2月 2nd, 2022

まぶたの裏の

黒いモクモク


幼少時代の

夜のモクモク


闇が闇でない

暗がりの中


朝は遠く

眠りは祈り


黙々と進む

イニシエーション


夢中へ入る

最後の一歩


闇にうごめく

見えない雲


目を閉じたら

迫りくる


不安な夜の

まぶたの裏

158 無の教室

月曜日, 1月 3rd, 2022

生きてる夢から

目覚めてみれば

そこには誰も

いないだろう


くたびれた教室のような

薄暗い空間


寄り合う面々

それぞれの夢

彼らは目覚めて

立ち去った


夢が死ぬとき

僕らは目覚める

目覚めた僕らは

夢を知る


眠りすぎて

生きすぎて

デジャヴだらけの

世界のほころび


夢からの

微妙な合図を

受けとって

読み取れないまま

現実という曖昧さ


そして

あの教室で

誰も僕を待っていない

157 不条理のひとすじ

水曜日, 12月 1st, 2021

つなぐことが

できない者の

孤独と生滅


たくすバトンを

持たずして


つながることを

恐れる者の

羞恥と隠遁


網の目の中

失われ


つながれている

罪ある者の

祈りと覚醒


善悪もはや

混然として


つなぎ目ひとつ

おぼつかなくて

自己と世界の

理不尽さ


意図ある

糸の断絶

一条の光に

絡め取られる

156 不思議な気分のつくり方

月曜日, 11月 1st, 2021

眠りたくない夜

目覚めたくない朝


クリアな沈黙

クールな発語


デジャヴはいつも

つかまえそこねる


一瞬の匂いのように

消え去ってゆく


名前のない感覚だけが

うっすらと残ったりする

155 彼らの彼方

土曜日, 10月 2nd, 2021

かくも生きづらかった

彼らの声を聞く


声さえ出せなかった

彼らの文字をたどる


文字さえ綴れなかった

彼らの沈黙を察する


自我はもはや

虫の息

消えてゆくのは

超えてゆくこと


人差し指を

天に向け

のぼり龍の鼻の先


腕を広げて

地に立って

降ってくるのはヤリの雨


地と天空の

はざまに生きて


無と存在の

彼方を目指す

154 動いてる

木曜日, 9月 2nd, 2021

一歩ずつでも

半歩ずつでも

一ミリずつでも

動いてる


進んでいるも

退いてるも

どちらにしても

動いてる


動いているのは

自分か時代か

世界か内界か


動かぬものは

きっと無い


波動を身に受け

血肉も動く


波動そのものになって

ここに在る