Archive for the ‘詩’ Category

153 第三の道

月曜日, 8月 2nd, 2021

三人目の反存在


かろうじて

生かされて在る

名も無い生


先に立って

名を得た

二人の背を見て

一人こぼれる三人目


光を受けて

先行する者

闇を授かり

逆行する者


成長と再生

その

必然の世界を外れた

三人目の遠いまなざし


そしてこの

退行と消滅

陰なる世界の

絶え入るみちすじ


どのみち見えない

未知のゆきさき


命ののちの

おちる道

152 世界の本意

木曜日, 7月 1st, 2021

僕が

僕たる

僕の自我


なんて

要らない

知らない

くだらない


世界は仮りもの

あるいは

僕のつくった

僕だけのまぼろし


暗黙の気付きに

従って

ほんとうのことに

気付かないふり


ゆらぐ客観

ひそむ異界


ある道端では

暗示が落ちてる

行く先々では

合図と出会う


しかしながら

世界の本意は

くみとりがたく

畏怖を抱いて

途方にくれる

151  身体

水曜日, 6月 2nd, 2021

すべては

身体感覚による


憂鬱でさえ

殺意でさえ

身体感覚


自我さえ

発語さえ

身体感覚


それらを

司るかにみえる

脳神経こそも

身体だ


つねに

身体感覚にある

私たちに

その滅却は

生きたまま体験できるか


 

この身体感覚にある

死の不安


身体を

失いゆくとき

魂は発現するか


祈りにも似た

なにものかは

身体を超えて

ゆくのだろうか

150 詩人像

日曜日, 5月 2nd, 2021

うすい光の

澄んだ目をした

うたごえの人


 

つねに深みから

言葉を発する

ことだまの人


 

幻覚

幻聴は

病ではない


 

その体験は

病どころではない


 

疾走する文字

記号や点線


 

話す言葉や

仕草さえ

ことごとく詩である

奇跡の人


 

      (Y氏へのリスペクト)

149 言葉取り

土曜日, 4月 3rd, 2021

捕らえた命も

束の間の

蝶ちょ捕りでは

ないのだから


 

手にしたとたん

枯れはじめる

お花摘みでは

ないのだから


 

世界をきれいに

切り取るだけの

標本づくりは

もうたくさん


 

たとえば蝶の

たとえば花の

その姿の奥

存在らしきが開かれる


 

世を世たらしめる

ほんとのことが

混沌のうち

体現される


 

むなしい装い

空虚な響き

飾る言葉は

もういらない


 

差し迫ってくる

ひと言ずつ

抜き差しならない

いち語ずつ

148 見えない波の中

水曜日, 3月 3rd, 2021

体の周りにまとわりつく

とどこおった時間を

動かしたくて

ラジオをつける


 

閉じられた部屋に

外気を入れたくて

窓を開けるように

テレビをつける


 

飛び交う不思議な

電波に乗って

来る世界


 

姿かたちの無い

見えない電波に冒され

知らぬまま

147  禁句

火曜日, 2月 2nd, 2021

無とか

宇宙とか


 

安易な発語は

やめておこう


 

理とか

存在とか


 

わかっているつもりでも

それらは不可説

それらは手に余る


 

漠然として

都合のよい言葉だからこそ

それらは危うい

それらは禁句


 

測れない

深さを含んで

 

見えない

闇を宿して


 

 

そのようなものを

言葉としてあらわすのは

おこがましい


 

わたくし共は

謙虚に

そして真摯に

 そのようなものと向き合おう


 

 そのうえで

沈黙せざるを

得ないとしても