Archive for the ‘詩’ Category

69. 殴打

金曜日, 7月 11th, 2014

メロディはなくとも
リズムがある

声はなくとも
ペンがある

時系列に沿わなくとも
字列の同時性がある

ストーリーはなくとも
フィーリングがある

意味はなくとも
行間に潜むものがある

方向性はなくとも
ダイナミズムがある

美文も良質の音楽も
躓くことなく流れ去る

駄文とされるあるものに
引っ掛かって深く殴打される

68. 心の声

金曜日, 6月 20th, 2014

ココロのコエは
悪夢のような
繰り返し
始まりは遠く
際限はなく

ココロのコエは
真っ白く
しろくしろく
燃えつきたけど
なおしずかにひびく

ココロのコエは
今ここに無く
かつ常に聞こえる
つねにつねに
そこに在る

ココロのコエの
のる息は
のろりくさり
生きては死んで
息するかぎり続きつつ

67. とむらいの逸話

金曜日, 5月 9th, 2014

式もひととおり終わり
厳粛な空気も抜けて
片付け始められた斎場の一隅では
親戚連中がくつろいでおしゃべりしているところで
ちょうど叔母さんが  
「うちのおじいさんがガンで死んだ時は・・・」
というような話をしている

ところが
すでに荼毘に付されたはずが
何かの手違いがあったらしく
まだ残っていた死体が
背中を痒がって
半ばもがくようにしながら
半ばは面白そうにして
ごろごろこちらへ転がってくるのだが
皆知らんぷりして話を続けていて

死体は   
「誰がガンで死んだって?」
と興味深げに聞いたが
皆話を続けていて誰も答えないので
仕方なく私が
この人のおじいさんだと教えてやった

死体は背中を痒がって
手を伸ばしても届かないので   
「掻いてくれ、掻いてくれ」
と身をよじっていたが
皆は聞こえているはずなのに
それでも知らんぷりで話しているところは
少し滑稽な感じがするもので
それでもまだ死体は   
「掻いてくれ」
と言ったが
皆がなお無視しているのが私には
いたたまれない気持ちがして

私に向かって言ってるのでもないので
掻いてやらずに
話の輪からすっと抜けて
その場をはなれたわけなので
そのあとのことは知らない

66. 風来坊

金曜日, 4月 4th, 2014

ウツウツしつつ
鬱憤はらし
クヨクヨしながら
苦を昇華する

ビクビクしては
吃驚ぎょうてん
クルクルまわる
狂った脳天

タンタンとして
耽溺する水
モヤモヤしても
燃やす生

ソウソウと吹く
草原の風
フラフラとゆく
風来坊

65. 六根

金曜日, 3月 7th, 2014

目蓋は開かず
絶たれる
眼光

静寂の重さに
つぶされる

過剰な匂い
混乱する
鼻孔

とろける毒が
浸潤する

痛み痒み
おおわれる
触感

世界の歪みに
怯える
精神

生きてしかも
健やかなることは
奇跡

損じてはじめて
心身のありようを
意識する

そして
その意識さえ
心身に由来して

ままならない
存在そのもの
生き受ける

64. 無名の人

金曜日, 2月 7th, 2014

困難のトンネルを這い
産まれて
同時に
死がひとつ立ちあがる

混沌のうちから
産まれて
言葉にまみれ
詩がひとつ立ちあがる

墓場さえない
うたは埋もれて
読み人知らず

僕は危うげな
僕たる根源に
死も詩もあずける

63. 真なる夜

金曜日, 1月 17th, 2014

頭フリフリ
雨降り
ふらり

ウンウン頷き
運なく
うなる

星がキラキラ
気楽に
くらり

トントン拍子に
飛んでは
止まる

心コロコロ
転んで
懲りて

カラカラ風が
吹くから
絡む

クルクルまわり
狂って
流転

シンシンとした
真なる
深夜