Archive for the ‘詩’ Category

13. 目覚めの鮮度

月曜日, 9月 26th, 2011

薄紫の
花を
目が食べ
目覚めたとき

その直後も
草を食むように
咀嚼しつづける
夢見の歯車

ふと遠い日のすももの果実
熟れて柔らかに割れ
したたって染みる
濃い赤紫の汁を見る此の時

いつも鮮度よし
頭蓋の割れ目のギザギザが
咀嚼して
したたる汁の鮮やかさ

12. 八月

金曜日, 9月 2nd, 2011

緑波立つ
一面田の面
太陽真上に
正午の沈黙

見時葉の月
一よう多様
大気の底で
焦土の地が沸く

あの夏の日々
われを失う
瀕死の乱心

あの夏の日々
割れる脳内
非自己の氾濫

11. 夜明け

金曜日, 9月 2nd, 2011

暗くてもいいのだ
でも弱々しくてはいけない
偽善でもいいのだ
でも善の無力さはいけない
冷たくてもいいのだ
でもぬるま湯じゃいけない
信じてみてもいいのだ
でも批評眼をなくしてはいけない

私たちは
一度だって去勢などされなかった
あなたがたの
口をふさぎ
目をつぶし
したたる血に
かちどきをあげることだってできるのだ

澄みきった闇に
細い月がつきささっている
重い重い足どり
毒のぬけないからだ
月を見上げると恐ろしくなる
いつ
銀色の牙で
けい動脈をかみ切られるのだろう
ドクドクとふきだす赤が
夜明けの空へかえっていく

10. 恥の芯

金曜日, 8月 5th, 2011

生きているのが恥ずかしい
死ねないことが恥ずかしい
しょせん価値など求めてないが
恥ばかりの道のりで
消えてしまいたくもなる

過去は去るまま
未来は白紙
今は一瞬一瞬移りゆく
確かなことこそ不確かで
その最たるは自己意識

我執にとらわれて
人間不信
信仰不信
神の国も涅槃の郷も
自我の過剰で遠くなる

一本
たった一本
芯がほしい
その一本のしなやかさで
恥ずかしさのまま立っていたい

9. 大きな手

金曜日, 8月 5th, 2011

はたらく人の手
大きな手
油まみれの
重みのある手

その大きな
たなごころで
わたしは撫でられ
育まれ

はたらく人の手
素敵な手
物をうみだす
魔法の手

岩のような手は
恥ずかしげだったけれど
わたしは子供ながらに
うやまった

すべてのたましい
融け入るところ
大なる源へ
その手は還った

大きなその手を
忘れない
わたしのペンだこなんて
小さすぎます、おじいちゃん

8. 母なるものの前に

金曜日, 7月 8th, 2011

荒れ狂う海の面前
母なる海よ
母なる大地
そのふところに
僕は立つ
母なる空の夜の星
漆黒の空を僕は見上げる

僕はどこへ行くのだろう
ふるさとよ
無よ
僕はどこへ
帰ってゆくのだろう
おかあさん
あなたは一個の人間として
僕がどこへ行くと思うでしょうか

疾風怒涛
海岸線はうねっている
空は鳴いて
山が揺れる
母なる海よ
母なる自然
僕をはらんだ一個のおんなを
母と呼ぶという
が帰るところはそこではない
僕はそこへは帰らない
そして僕はいったい
どこへ行くというのだろう

疾風怒涛
母なる海に
面と向かって立っている
今ただここに立っている

7. 感覚世界

金曜日, 7月 8th, 2011

視ること超えて
見える闇
聴くこと超えて
聞こえる沈黙
言うこと超えて
云われる言葉

もはや
見も聞きもしない
言葉が造る
虚構の世界を

観念のお化けに
呪われて
今日も脳みそだけが
起きている

体中の
感覚器官からの入力が
頭蓋のうちに
虚構を造る

目が霞んでくる
耳が遠くなってくる
感覚器の身体性
神経の末端の有り様で
世界はどう有り得るか