72. 窓を開く

10月 10th, 2014  / Author: 中崎シホ

窓をあけるように
テレビをつける

人に会うように
ネットをつなげる

手紙をかくように
独りをつづる

扉をあけるように
脳ミソひらく

いくら開いても
広がらない心

あけっぱなしなのは
ただ明るく冷たい画面のみ

窓は閉ざされ
部屋は暗く

窓を開くことは本当は
本当に困難なことだった

71. 言葉に力を

9月 5th, 2014  / Author: 中崎シホ

言葉は
意味より
力技

繊細
かつ
大胆に

文字の羅列に
力を吹き込み
放つこと

行間に
力を含ませ
表すこと

はりぼての
修飾を剥ぎ
骨を出す

言葉の骨を
咀嚼できる
強い力を

70. あの夏の日々

8月 8th, 2014  / Author: 中崎シホ

緑波立つ
一面田の面
太陽真上に
正午の沈黙

見どき葉の月
一よう多様
大気の底で
焦土の地が沸く

あの夏の日々
われを失う
瀕死の乱心

あの夏の日々
割れる脳内
非自己の氾濫

69. 殴打

7月 11th, 2014  / Author: 中崎シホ

メロディはなくとも
リズムがある

声はなくとも
ペンがある

時系列に沿わなくとも
字列の同時性がある

ストーリーはなくとも
フィーリングがある

意味はなくとも
行間に潜むものがある

方向性はなくとも
ダイナミズムがある

美文も良質の音楽も
躓くことなく流れ去る

駄文とされるあるものに
引っ掛かって深く殴打される

68. 心の声

6月 20th, 2014  / Author: 中崎シホ

ココロのコエは
悪夢のような
繰り返し
始まりは遠く
際限はなく

ココロのコエは
真っ白く
しろくしろく
燃えつきたけど
なおしずかにひびく

ココロのコエは
今ここに無く
かつ常に聞こえる
つねにつねに
そこに在る

ココロのコエの
のる息は
のろりくさり
生きては死んで
息するかぎり続きつつ

67. とむらいの逸話

5月 9th, 2014  / Author: 中崎シホ

式もひととおり終わり
厳粛な空気も抜けて
片付け始められた斎場の一隅では
親戚連中がくつろいでおしゃべりしているところで
ちょうど叔母さんが  
「うちのおじいさんがガンで死んだ時は・・・」
というような話をしている

ところが
すでに荼毘に付されたはずが
何かの手違いがあったらしく
まだ残っていた死体が
背中を痒がって
半ばもがくようにしながら
半ばは面白そうにして
ごろごろこちらへ転がってくるのだが
皆知らんぷりして話を続けていて

死体は   
「誰がガンで死んだって?」
と興味深げに聞いたが
皆話を続けていて誰も答えないので
仕方なく私が
この人のおじいさんだと教えてやった

死体は背中を痒がって
手を伸ばしても届かないので   
「掻いてくれ、掻いてくれ」
と身をよじっていたが
皆は聞こえているはずなのに
それでも知らんぷりで話しているところは
少し滑稽な感じがするもので
それでもまだ死体は   
「掻いてくれ」
と言ったが
皆がなお無視しているのが私には
いたたまれない気持ちがして

私に向かって言ってるのでもないので
掻いてやらずに
話の輪からすっと抜けて
その場をはなれたわけなので
そのあとのことは知らない

66. 風来坊

4月 4th, 2014  / Author: 中崎シホ

ウツウツしつつ
鬱憤はらし
クヨクヨしながら
苦を昇華する

ビクビクしては
吃驚ぎょうてん
クルクルまわる
狂った脳天

タンタンとして
耽溺する水
モヤモヤしても
燃やす生

ソウソウと吹く
草原の風
フラフラとゆく
風来坊