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長崎県あしなが育英会

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「憲法のどこに問題があるのかを国民に具体的に示してほしい。その中で、子どもの教育や生きる権利を見つめ直す議論が深まればいい」。<br>
 
「憲法のどこに問題があるのかを国民に具体的に示してほしい。その中で、子どもの教育や生きる権利を見つめ直す議論が深まればいい」。<br>
 
最初の一票には、そんな願いを込めたい。<br>
 
最初の一票には、そんな願いを込めたい。<br>
〔◆平成28(2016)年5月3日 長崎新聞 本紙〕 <br>
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2016年11月20日 (日) 15:13時点における版

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長崎県あしなが育英会

所在地 長崎県
TEL
FAX

県内の「あしなが奨学生」 貧しさの壁 しぼんだ夢 憲法26条 「ひとしく教育を受ける権利」
家庭崩壊、成績にも影響
憲法26条は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めている。
しかし、経済格差の拡大とともに、学ぶ機会を奪われている子どもたちの存在が社会問題になっている。
3日は憲法記念日。県内の1人の大学生の視点を通じて「ひとしく教育を受ける権利」を考えた。
温度差
4月30日。人々が行き交う長崎市の中心街で、大学2年の江藤加奈さん=仮名=(19)は「あしなが育英会」と書かれた箱を持ち、声を張り上げた。
「温かいご支援をお願いします」
「あしなが育英会」は親を亡くした遺児や、親が重度後遺障害で働けない子どもの就学を支援する民間団体。
加奈さんも育英会から奨学金を受けている。街頭で集めた募金は同じ境遇の子どもたちを支える大切なお金だ。
30日は熊本地震の震災遺児らへの支援を訴えた。
多くの通行人が近寄って募金をしてくれたが、加奈さんら奨学生の存在さえ目に入らないかのように通り過ぎる人も少なくない。
「温度差は大きいな」
加奈さんは佐世保市で育った。家計は苦しく、小学校の給食費の支払日にずる休みをしたこともあった。
5年の時、父は体調を崩して職を失い、母は重度の精神障害で入院し、生活保護の受給家庭となった。
高校は地元の進学校に進んだが、卒業後は就職するつもりだった。
だが勉強するほど成績は上がり、模試では難関国立大の合格判定が出た。
「頑張れば、いい大学に入れるかもしれない」
淡い期待は高校2年の秋にしぼんだ。父が暴力を振るうようになり、母と弟と家を出て、保護シェルターに身を隠した。
通学は片道1時間半。母の代わりに家事をこなす日々。
勉強時間を確保できず、成績は落ちた。両親は離婚。母は介護施設に入り、弟と一緒に里親の元に引っ越した。
不公平
運良く育英会の存在を知り奨学金で大学に進学、今は1人暮らしをしている。
だが学費や生活費は足りず、多いときで週5回、深夜にコンビニのアルバイトをしている。
「お金がなければ社会から振り落とされる」。
時々そんな不安を覚えてしまう。貧しい家庭に生まれ、努力だけでは進学を望めない状況にあったが、不公平と感じたことはなかった。
どちらかというと、自分の境遇を諦めていたように思う。
だが育英会の活動に参加し、家庭の経済格差が子どもの教育格差につながっている事実を知った。
そんな家庭の子どもたちに対し、ネット上では「義務教育で十分じゃないの」「親がだらしない」と心ない言葉が目につく。
憲法が保障する「ひとしく教育を受ける権利」。権利はあっても主張するのを許さないような空気が漂い、息苦しさを感じている。

「家庭環境で大学進学が決まる日本の社会は世界と比べても不平等」。
子どもの貧困に詳しい長崎大教育学部の小西祐馬准教授は指摘する。
経済協力開発機構(OECD)の2012年の統計によると、日本の大学進学率は51%で、世界の平均を11ポイントも下回る。
さらに文部科学省は、収入が多い家庭ほど4年制大学への進学率は高いと分析。
小西准教授は「小中学校だけの義務教育は最低限の保障。憲法の精神をくめば、幼児教育を含め、大学まで平等に学べる環境があるべきだ」と疑問を投げかける。
政府も世論に押される形で大学進学者らを対象に給付型の奨学金を検討しているが、財源が壁となっている。

今夏の参院選。投票権が18歳以上に引き下げられ、加奈さんも初めて投票する。
憲法改正も争点とされているが、改憲か護憲かの二者択一を迫るような政治の風潮には違和感がある。
「憲法のどこに問題があるのかを国民に具体的に示してほしい。その中で、子どもの教育や生きる権利を見つめ直す議論が深まればいい」。
最初の一票には、そんな願いを込めたい。
〔◆平成28(2016)年5月3日 長崎新聞 本紙〕 

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