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乳幼児が受けた虐待のしるしは体に残る

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==乳幼児に受けた虐待のしるしは体に残る==
 
==乳幼児に受けた虐待のしるしは体に残る==
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不適切な養育が長期にわたれば結果的に愛着障害に至ることもある<br>
 
不適切な養育が長期にわたれば結果的に愛着障害に至ることもある<br>
 
(『凍りついた瞳2020』p.90の説明)。<br>
 
(『凍りついた瞳2020』p.90の説明)。<br>
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2025年10月8日 (水) 07:09時点における最新版

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凍りついた瞳2020

乳幼児に受けた虐待のしるしは体に残る

読んでいる途中の『凍りついた瞳2020』(椎名篤子編・著、集英社,2019)所収のなかの記事から。
(1)生後10か月の男子が救急外来に運ばれてきます——子どもの心電図は動かず心臓マッサージをして蘇生を試みます。
そこに4年目の小児科医が専門医として加わりました。処置室の前で待つ母親に遅れて、勤務先から父も到着。
しかし蘇生の心臓マッサージを止めると心電図は動かなくなります。
ついに両親をよんで蘇生行為の終了を告げます。蘇生マッサージは実りませんでした。
父親が「わかりました。ありがとうございました」となり、死亡を認めます。
翌朝「10か月の男子殺害容疑で母親が逮捕された」とのニュースが流れます。
担当医は「子ども虐待による死である」に疑いをもち、警察に連絡するも「規則で教えることができません」の壁に阻まれます。
半年後、母親に懲役2年、執行猶予4年の判決が下りました(P46~63)。
(2)同じ医師の2年後、ふたごの兄がいる生後13か月の女子が父親に抱えられて救急外来に運ばれてきました。
耳にあざがあるのが気になり、CTスキャンによる脳検査を行います。画像内に急性硬膜下血腫があるので、年配の脳外科医に見てもらいます。
脳外科医は「(虐待の)確証もない…。子どもさんが重篤なのに、虐待と親御さんを疑って追い詰めるつもりですか」と疑問を呈します。
入院の10日後にある程度回復したところで、小児科医師は両親に伝えました。
「病院としては硬膜下血腫、耳のあざ、脳内出血、それに肋骨骨折などから総合的に考え、虐待の疑いがあり…児童相談所に通告しました」。
これを聞いた父親は表情を一変させ抗議を始めます。…黙っていた母親が言いました。
「あんな子要らない。かわいく思えない。…子どもは息子だけでいいんです」。
これを聞いて父親はイスに座り込み、押し黙ってしまいます(P64~70)。
上の2つの例は簡略しすぎる紹介なのでうまく伝えられない気もします。それでも背景は感じられるでしょう。
それでもなお乳幼児への虐待の実際はわかりません。
しかも子どもが成長したときにもその記憶を語られることはほぼありません。
ところが、この乳幼児期に(とくに継続的に)虐待を受けた経験は、記憶にはなくても体に残ります。
児童精神科医の友田明美さんはマルトリートメント(不適切な養育)を受けた子どもは脳を変形させているのを画像診断で表わし証明しました。
また子どもの胸腺の委縮も証拠とされています。私は居場所の来ている人にときどき胸に手を当てる人を見ました。
成人期に残る虐待の可能性を感じています。
『ひきこもり国語辞典』にこれを書きました。
《むねキュン(胸キュン)  よく胸のあたりが苦しいような感じがして手で押さえます。
胸といっても頸(くび)の下あたりで、呼吸が苦しいのとは違います。切なく苦しいというか、やりきれない、空しいような気持ちを落ち着かせる感じです。
世の中的には「胸キュン」というのがいい感じのときに使われていますが、それとは違います。》
『ひきこもり国語辞典』(松田武己 時事通信社,2021)
脳や胸腺の他にも虐待を受けた痕は体のあちこちに残り、成人後の「働くに働けない」状態もそれではないかと推察します。
「働くに働けない」のがすべて虐待によるとは言えないでしょうし、乳幼児期の虐待と成人期のこの状態の因果関係を、身体科学の面からはまだ証明されていないとしてもです。
なお私がこの本に引用されている2人の乳幼児の場合を含めて、虐待をしたという母親を一方的に責める気持ちにはなれません。
ワンオペ育児かそれに近い状態におかれた母親たちの追い込まれた状態を考えます。
最大の被害者はマルトリートメントを受けた子どもですが、母親は加害者であるとともに〈自身の成育歴や生活環境が大きく変わる社会の〉被害者かもしれないからです。
*不適切な養育(マルトリートメント):大人の子どもに対する不適切な養育やかかわり方をいい、虐待とネグレクトを包含する。
良かれと思って子育てに熱が入り、一生懸命になりすぎて度を越えた行為に至る場合も該当します。
不適切な養育が長期にわたれば結果的に愛着障害に至ることもある
(『凍りついた瞳2020』p.90の説明)。


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