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− | ==引きこもり者が友だちを求める場==
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− | 雑談から対人コミュニケーションの力をつける<br>
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− | 『生活教育』2001年8月号に掲載。<br>
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− | 私のいる不登校情報センターには、友だち探しのために引きこもり経験者の集まる場があります。<br>
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− | 水曜日定例の「人生模索の会」を中心に、いくつかのサブグループに引きこもり状態の人が入れ替わり参加しています。<br>
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− | 内容はいつも雑談です。<br>
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− | 近況報告、自己紹介、趣味、アルバイト、家族、学校時代などの話が多いようです。<br>
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− | 宗教と哲学、病気と薬の話題、カラオケやウォーキングなどの話も出ます。<br>
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− | 多いときでも30人、少ないときは数人の参加です。<br>
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− | 彼ら、彼女らは、どのような経緯でここに集まってきたのでしょうか。<br>
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− | ====自分で広報を見て====
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− | 広報活動をしています。<br>
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− | 『ひきコミ』という個人情報誌の編集グループも、サブグループの一つです。<br>
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− | この月刊誌を見て参加する人がいます。<br>
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− | 不登校や引きこもりに関係する相談会も頻繁に開いています。<br>
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− | 市販の情報本やホームページも開設しています。<br>
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− | それらを見て問い合わせが入ります。<br>
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− | 「人生模索の会って何をしていますか」「私も参加できますか」と。<br>
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− | 多くは引きこもり当人からのもので、前向きの姿勢と人のなかに入る不安とが混在した気持ちが聞き取れます。<br>
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− | 「友だちに出会う雑談の場です。時間があれば参加してください。<br>
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− | 遅刻、早退は自由です。料金はいりません」と答えます。<br>
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− | こうして参加した人が多くを占めています。 <br>
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− | ====まず母親が参加====
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− | この会には、ときどき母親も見学に来ます。<br>
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− | 牧君(男性34歳)の母親は、初めは一人でしたが、二回目には牧君と一緒に参加しました。<br>
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− | 今、彼は毎回一人で参加し、静かに座っています。<br>
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− | ある日、中宮君(男性30歳)の母親が相談会に来ました。<br>
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− | それから二週間後、中宮君が母親と一緒に人生模索の会に来ました。<br>
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− | 彼に声をかけてみました。<br>
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− | 「親が来るように言ったので来てみたんですが・・・・・・」と、どういう気持ちで座っていればいいのかつかみかねている様子です。<br>
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− | 隣に座った人に声をかけられ、しばらく話をしていましたが、二時間ほどして退室しました。<br>
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− | 初めに親と参加するのもいいと思います。<br>
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− | うまくいくかどうかは、当人に何かをつかめる感じがあるかどうかでしょう。<br>
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− | ====開放的な居場所づくりに一役====
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− | 片間君(男性25歳)がどんなきっかけで参加し始めたのかはわかりません。<br>
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− | やがて知り合いの東知さん(女性30歳)が一緒に顔を見せました。<br>
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− | さらに野木さん(女性30歳)、江春さん(女性29歳)と片間君の知人の参加が続きます。
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− | 片間君は、いろんな居場所を渡り歩き、そこで知り合った人を誘って別の居場所に行き、友だちを広げようとしているのです。<br>
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− | ある団体のカウンセラーから、「居場所づくりの応援をしてほしい」という要請がありました。<br>
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− | 予定では、30歳の男性と21歳の寡黙な女性の二人だけの参加なので、「一人でも二人でも応援に来てほしい」とのことです。<br>
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− | 駒田君(男性30歳)と三保さん(女性29歳)に声をかけておきました。<br>
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− | 結局、人生模索の会からは六人が参加しました。<br>
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− | 世話好きの伊丹さん(女性29歳)は、この寡黙な女性と筆談をしてきました。<br>
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− | 片間君はこういうときに率先して参加します。<br>
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− | 協会独自の取り組みもあって、その後だんだんそれらしくなっているようです。<br>
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− | 駒田君はこの会の重鎮で、人生模索の会が「第二の引きこもりの場」になるのを心配しています。<br>
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− | 居場所を閉鎖的な場にしないためには、片間君のような動きは大切な気がします。<br>
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− | ====訪問して出会って====
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− | 田鍋さん(女性27歳)の母親が相談に来て、「誰かに訪問してもらえれば」と言われました。<br>
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− | 人生模索の会に参加する壬生さん(女性29歳)が比較的近くに住んでいます。<br>
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− | 訪問役を壬生さんに頼もうと考えました。<br>
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− | 数日後、サブグループ「社会参加を目指すひきこもり女性の会」があり、ここで田鍋さんの母親と壬生さんが初めて会いました。<br>
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− | かなり話し込んでいます。<br>
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− | 翌週の人生模索の会は雨でした。遅刻者が続出しています。<br>
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− | 二時間ぐらいして、一人の女性が「初めてです」と入ってきました。<br>
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− | しばらくして見ると、壬生さんと先ほど「初めてです」と言って入ってきた女性が並んで話しています。<br>
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− | この女性が田鍋さんでした。<br>
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− | 壬生さんは、「私が訪問しなくても、田鍋さんは一人で来られます」と後で話してくれました。<br>
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− | 田鍋さんはその後、ちょくちょく参加してきます。<br>
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− | 引きこもりの人に、訪問活動から始めて、次の目標として近くの居場所に一緒に参加しようという試みは、まだ始めたばかりです。<br>
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− | 田鍋さんと壬生さんのケースはそのかたちにはなりませんでしたが、そのつもりで始めたものです。<br>
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− | ====自分を受け止めてくれる居場所====
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− | 引きこもり状態の人の多くは、そこから抜け出したいと、こころの奥では感じています。<br>
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− | しかし、自分にはそのエネルギーが出ないので、「抜け出したい」とは口にしづらくなっています。<br>
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− | 人への緊張感や恐怖心が強いと、自分でも外に出たい気持ちがあるのかわからないくらいです。<br>
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− | 精神的、生活的にやや安定したら、なるべく人と会える機会をもつように促しています。<br>
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− | 人と会わないことが、また引きこもる要因になるからです。<br>
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− | 外出したとき、その自分を受け止めてくれる居場所があることは、その意味で大切です。<br>
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− | そこでは外出するエネルギーももらえます。<br>
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− | いつか本音を語れる友だちができそうな場だと、続けて参加できると感じられるからです。<br>
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− | 人生模索の会とそのサブグループには、100人余りの人が出入りするようになりました。<br>
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− | 人間を求め、友だちを求めてです。<br>
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− | (お断り:文中人物は、すべて仮名です)<br>
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− | [[Category:不登校情報センター・五十田猛・論文とエッセイ|2001年08月]]
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− | [[Category:タグ・居場所]][[Category:タグ・引きこもり]]
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