Center:2000年7月ー高校進学後に再発した登校拒否
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2011年3月22日 (火) 23:45時点における版
高校進学後に再発した登校拒否
*「進路指導のはざまで」『中学教育』2000年8月号。
高校入学後、学校に行けなくなる例はいろいろある。中学3年の秋から本格的な不登校になった龍男君の場合を紹介しよう。 一般に中学時に不登校で、高校入試時にもその状態がある程度続いている場合は、高校入学後の登校は危ぶまれる。 お母さんが初めて相談に来られたのは11月ごろであった。高校受験を間近にひかえ、何とかこの時期を乗りこえたいそうすれば何とかなるのでは、という感じだった。 高校に入学すれば、生徒の周囲の雰囲気も変わるので、登校できる子もいる。しかし現実をしっかり踏みしめた対応とは言い難しい面もある。 龍男君にはすでに意中の志望校があり、事実上そこ一本に進学先をしぼっている。成績面はかなり上位に属す。 学校は休みながらも、家庭教師を頼んで受験勉強に取り組み始めた。そして2月上旬、その高校合格し、そこで家庭教師も中止した。 高校は、自宅から電車を乗り継いで約40分のところ。通学時間はラッシュアワーより少し早い時間帯だが、それでもかなり込みあう。高校は1学年10学級を超える大規模校。龍男君はその唯一の特選クラスに入った。 高校に入学してほぼ1か月、ゴールデンウィーク明けの5月中旬から、突然登校しなくなった。その間、1日も欠席がなく、その日を境に1日も登校していない。 特選クラスにもう1人、登校拒否傾向の子がいて、その子がゴールデンウィーク明けから姿を見せなくなったことが、一つ影響しているようにみえる。 お母さんの話をきいて、思った。龍男君は、この登校した1か月間、精神的にとてもつらいなかを、懸命にがんばってきたのではないか、と。 お母さんが改めて相談に来たのは龍男君が休み始めて2週間を経た5月末。中学時代からの登校拒否の推移をみて、ここで本気で中心問題をみなければならない。お母さんがそう考えるのに必要な時間だったように思う。 龍男君には、平均以上の学力はある。しかし、人間と関わる力が不十分なのだ。その基礎は、人間への不信感あるいは不安感。人間への安心感が持てる条件づくりが必要だ。 前の相談のとき、自宅を訪ね、龍男君に会ったことがある。お母さんが離れて2人だけになったわずかな時間に、彼が告げてきた。「なんでもかんでもうるさすぎるんですよ」。母親の干渉の強さをせめる口調だった。顔色はやや青白く、性格の優しさが表れている。 進学高校を一本に決めていたことは、親ではない、自分が決めるんだ、という決意を示していた。それまで親の期待を受け、そして期待に応えてきた自分を乗り越えたい、その葛藤が登校拒否であるとも思えた。 人間に関わる力の不足、親からの自立志向、さらに別の要素も重なって登校拒否。彼の提示するものは大きい。 周囲の大人に、それを受けとめられるだけのゆったりとした対応力が必要だと思う。