定食酒場食堂
定食酒場食堂
| 所在地 | 東京都新宿区 |
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物価も家賃も高い新宿で昼288円の激安食堂が成り立つワケ
天野雅博さん(C)日刊ゲンダイ
料理を2品以上頼めば、何杯飲んでも焼酎は無料――こんな「居酒屋革命」をプロデュースして注目されたのが天野雅博さん(51)だ。
現在は東京・新宿で激安食堂を経営し、またまた話題になっている。
■他店が高すぎるだけ。ウチが適正価格です
とにかく値段がすごい! ご飯、味噌汁おかわり自由の日替わり定食が288円! なぜ、こんな価格が可能なのか?
天野さんは、2014年から東京・新宿で飲食店を自ら経営。
昼に弁当を作って販売すると、これがバカ売れし、それを機に店名などを変え、現在は昼夜営業+弁当屋の「定食酒場食堂」に落ち着いている。
ランチが288円、夜はおまかせ料理と飲み放題で3000円といった激安価格が客を呼んでいる。
「50歳が近づいて、人生も終盤。
人生70歳までだとしたら、これから20年続けられる仕事は何かな、と考えてできたのがこの店でした」
天野さんの思いが詰まった店だが、まずは激安価格のヒミツを知りたい。
たとえばランチは毎日メニューが変わるが、この日は全6種類で日替わり定食のマーボー春雨288円、卵焼き定食380円、豚焼き肉定食500円などバラエティーも豊富。
しかも、ご飯と味噌汁がおかわり自由だし、おかずのボリュームも満点だ。
「豚焼き肉定食は肉150グラム使って、ほかの500円定食だって肉は100グラム使っています。
ほかの店が高すぎるんです。ここは他店ほど利益をとらず、適正なものを適正価格で出しているだけです」
その“適正価格”を実現する秘訣は、まず仕入れにあるという。
「僕は食品ロスゼロを訴えているんで。たとえば、店頭に並べられない行き場のない野菜がありますよね。
形が悪いとか、一部だけ良くないところがあるとか。
それらを農家と直接交渉したりして仕入れ、悪いところは切って使うとか工夫しているんです」
しかし、“安かろう、マズかろう”ではない。
「基本、化学調味料は使っていません。味噌は手作り、醤油だって寿司屋でも使ってないような高級な醤油を使ってますよ。
米はコシヒカリとかあきたこまちとか。でも、米の味は銘柄より洗い方や炊き方次第だと思いますね。
うちはガスで炊いています。よそで食べると舌がしびれる、というお客さんも、うちのメシではしびれない、って言われますね」
元客たちがボランティアに
コストカットの工夫はほかにもある。固定費として大きいのが家賃だが、築74年の古家を借りてリフォームした。
「もともとこのへんに30年住んでいたので、取り壊す予定の寂しそうにしているこの家をたまたま見つけ、『フリーレント2年つけてくれたら借ります』と交渉しました。
そしたら大家さんは『2年は無理だけど、23カ月でどうだ』と(笑い)」
人件費は天野さん自身がフライパンを握ることで節約。
おかげで腕の腱鞘炎に悩まされているが、痛みに耐えながら1階20席、2階32席の客をさばく。
そんな天野さんの考えに賛同する元客たちが、ボランティアで店を手伝ってくれている。
「そもそも完全セルフだから、お客さんが皿を下げたり、自分から動いてくれるんです。
ほかにも、80万円のエアコンを付けてくれたり、20万円を封筒に入れて渡してくれたお客さんもいる。
こういう、みんなが助け合うような“場”をつくりたかったんです」
窓には「セルフサービスです 感謝」の貼り紙が(C)日刊ゲンダイ
腹いっぱい食わせてやりたいだけ
多くの人の協力で成り立っているこの店では、昨年から、孤食の子どもたちに無料で食事を提供する“子ども食堂”も兼ねる。
実は天野さん自身、両親に認知されず、児童養護施設で育った。
腹をすかせるつらさはよくわかるのだろう。遠くからわざわざ食べに来て、身の上話をして帰る子どももいるという。
「この間は、将来ヤクザ確定だな、っていうような入れ墨をした高校1年生4人が来ましたね。
ほかにも、不登校の女の子が来たり。僕は腹いっぱい食わせてやりたいだけ。
腹いっぱいにならないと悪いことするなら、腹いっぱいになって帰ればいい」
「定食酒場食堂」は札幌、東京・下丸子にものれん分けしている。
児童養護施設の元先生たちが運営しているそうだ。
▽天野雅博(あまの・まさひろ)1967年10月8日、北海道雨竜郡沼田町生まれ。
静内町(現・新ひだか町)などの養護施設で育ち、少年院に3度、18歳の時には傷害事件で松本刑務所に。
出所後はリサイクル事業や酸素事業、居酒屋チェーン店「居酒屋革命」のプロデュースなどを手がけ、4年半前から東京・新宿で「定食酒場食堂」経営。
〔2019年8/4(日) 日刊ゲンダイDIGITAL〕

