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家事労働を金額評価する基準作成の動き

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家事労働を評価する国際基準と日本での実施

私は家事労働に目を向けました。その労働が数値表示されないために軽視される位置におかれているからです。
(1)それは、人類の発生以来(発生以前から)行なわれていた生存のための活動、生理的活動の継続を示しているとの認識に至りました。
(2)家事労働に限らず、このように数値表示されない活動は他にもいくつかあります。現代における代表的なものは、ボランティア活動です。
(3)同時に、有償・無償の境界ははっきりしませんが、入会権など共有所有地における労働や、細かくいえば家事と分離されない家業(商店・町工場など)の家族労働までが入ります。
こうした家事労働に似た傾向にある数値表示されない、非評価労働をどう評価するのかを考えました。
暫定的な結論は2つの方向です。
1つは、家事労働のそれぞれに匹敵する市場換算に表出された労働(これは職種に当たる)に比定して、その対応する家事労働の労働評価です。
もう1つは、家事労働の労働時間を、金額換算しないで労働時間(望ましいのは社会的平均的な労働時間)を評価数値として表示することです。
このうち家事労働に対応する職種の賃金水準をもって家事労働を評価する試みはすでに始まっていることを知りました。
それを紹介する論文「SNA論文における無償労働の貨幣評価と家計勘定」(佐藤勢津子/専修大学大学院,作間逸雄/専修大学経済学部)を参照に説明します。SNAはSystem of National Accountsという国連の機関です。
そのサテライト作業の1つに無償労働の貨幣評価は取り組まれました。
「1995年、北京女性会議は、その行動綱領のなかに、無償労働を貨幣評価し、中枢国民勘定ではなく、サテライト勘定にそれを反映させる方法を研究すべき」としています。
日本では1996年旧経済企画庁経済研究所は無償労働の貨幣評価を研究し、その推計結果を1997年に公表しました。
*経済企画庁は日本の国内総生産(GNP)をまとめる政府担当機関であり、これは省庁改編後には内閣府がひきついでいます。
上にいう中枢国民勘定とはGDPを指しています。SNAは、世界各国のGDP算出の基準を決めている国連の機関です。その北京女性会議は第4回世界女性会議です。
日本の家事労働評価は、1997年からこの論文発表の2013年までに4回行なわれ、その都度いくつか改訂され、担当部署も代わっています。
評価には3つの方式があります。算出に用いる基礎データは、時間使用調査による行動カテゴリー別時間データと男女別、年齢別、職種別賃金データを使い、それには総務省統計局「社会生活基本調査、厚生労働省賃金構造基本調査(賃金センサス)」が主に用いられています。
方式が3つに分かれるのは、行動カテゴリーを予め定められている(プリコード方式)、記入者が自分で何をしていたかを自由に記入できる(アフターコード方式)、そして第三者基準(委任可能性基準)です。
いずれも行動種類の中で無償労働に対応するカテゴリーを取り上げてその行動時間を賃金データで評価するものです。
代替費用法を2009年公表対応職でみると次の対応になります。
炊事→調理師、調理師見習
掃除→ビル清掃員
洗濯→洗濯工
縫物・編物→ミシン縫製工、洋裁工、洋服工
家事雑事→用務員
買物→用務員
育児→保育士
介護・看護→看護補助者、ホームヘルパー 「家庭内サービスを代替するサービスを生産する産業の現業職種は一般に低賃金である」(p9)とされています。
これらを「家事的労働」と呼ぶ人もいるようです。 1997年の経済企画庁の推計結果を論文筆者は次のように紹介しています。
「基礎統計である時間使用の制約は厳しく、各国の先行事例と比べて過小評価にならざるをえなかった…先進諸国の無償労働者の貨幣評価額は、GDPのおよそ6割であり、わが国の無償労働の貨幣評価額(20%台)との差を統計上の問題として説明することは不可能と思われる」(p5)。
遠慮がちに言っていますが、日本の家事労働評価は先進諸国と比べても半分以下にしか評価していないとあきれているのです。 その後の年度の家事労働の評価方式がどのように変化したのかはよくわかりません。
いずれにしても不十分であり、大いに改善の余地はあると思います。
そう判断しますが一つの土台ができていたことは大きな発見です。このうち育児と介護・看護が「家族内ケア労働」です。
それにしても、この質量の評価レベルをそのまま家族の世代継承機能を有償換算された表現とみるには、あまりにも軽率であり、事の重要性と結びついていない感じをもってしまいます。機会を見てこの評価内容に言及する機会があるでしょう。

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