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乳幼児への虐待・マルトリートメントの実像を探す

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乳幼児へのマルトリートメントの実像を探す

いったい人間の記憶というのは、何歳のときまで遡るのでしょうか? 
私は4歳のとき10歳年長の従兄弟が写真を撮るというので、家の前の菜の花畑にいたときの記憶があります。
写真がありそのときのことを思い出せるからです。
ネット上に鳥取県で3歳になる三つ子が誘拐され、24年後にあるきっかけで発見されたとき、三つ子は3人とも3歳までの生活記憶がなかったことが紹介されています。
この話の真偽性は確かめていませんが一応の参考にできるとします。
個人差はあるとして、3~4歳まで人は自分の乳幼児期の一部の記憶の断片に遡れるだけでしょう。
断片として私がきいたところでは、こういうのがあります。
《はらわれる(払われる)  いちばん古い記憶はたぶんおっぱいを飲むときに手で払われたことだと思います。
目の前に手が広がってきてやめさせられた像がぼんやりと浮かびます。乳児のときの母によるものでしょう。
乳幼児期からこの状況が続いてきたのではないでしょうか。
いまでも私が最後に頼るものが見つからない気持ちになるのは、このときのことが心にあるからだと思います。》
(松田武己『ひきこもり国語辞典』2021、時事通信社)
これは0歳から1歳のころの話でしょう。異例に早い時期と思いますが、これがどの程度例外的なのかはよくわかりません。
親にはそれがマルトリートメントに当たるとは思いもよらないことかもしれません。
私はひきこもりの中心は乳幼児期にマルトリートメント(多くのばあいは両親もしくは父母の一方が再婚している)にあった人になると推測します。
人によっては学齢期や思春期に、ときには20歳前後になっても続いていると思います。
十分な立証はできませんが1980年ごろにこの虐待と被虐待傾向は増大したものと思います。
不登校情報センターというひきこもり経験者が集まる場を運営し、彼ら彼女らから生活状態、家庭関係などを聞いてきました。
私と二人だけのときには、家族関係の話のなかでそれらしいことも聞きました。
紹介した「払われる」の話はその1つです。
しかし、家族内のマルトリートメントとはいえ多くは学齢期以降になります。
ときには4~5歳ごろの話も出ますが、詳しくはありません。
とくに親からの虐待に関する話はまず出なかったのです。
20歳をこえたひきこもり経験者たちも不十分な記憶であり、しかし親の悪口になるようなことは口にしたくはないからだと思います。
それに比べれば、友達からのいじめや教師からの不当な扱いは、より口にしやすいのだと思います。
こういう理由で、ひきこもり経験者たちが乳児期にうけた親から受けたマルトリートメントを具体的に書くことはできません。
これに代わる証拠となるものは、時おりニュースになる子ども(とくに乳幼児)への虐待事件(虐待死など)です。
児童精神科医の友田明美さんの、虐待を受けた幼児は脳を変形させてそれに対応した、その証拠は脳のMRI診断撮影です。
それでも友田さんの実証はマルトリートメントの行為の実像を表わすものではありません。
私は作業の一部として乳幼児期の虐待の実像を想像するしかないのです。

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